『アサシン クリード ヴァルハラ』永続XPブースト販売開始。国内版では流血表現の問題修正も

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Ubisoftは12月15日、『アサシン クリード ヴァルハラ』の最新バージョン1.1.0を配信した。今後開催が予定されているユール祭イベントや、定住地の拡張に備えるアップデートだ。バランス調整や数々の不具合修正も適用されている。国内版では流血表現をオンにできない問題も解消された。またゲーム内ストアでは、永続XPブーストと永続銀ブーストの販売が開始された。前者は獲得できるXPが、後者は獲得できる銀が50%増える商品であり、すべてのセーブデータで永続的に有効となる。いずれも有償ゲーム内通貨であるヘリックス・クレジット(以下、H)によって購入可能となっている。単品の場合は1000H(約1300円)、両者がセットになった永続ブーストパックは1500Hだ。

本作の発売当時、時間短縮系の課金要素としては、素材パック・銀パック・アビリティ入手先を示す地図・ユニーク装具宝箱の地図などが販売されていた。だが時短系アイテムの代表格であり、前作『アサシン クリード オデッセイ』で議論を呼んだXPブーストは、今まで販売されていなかった。なぜこのタイミングで販売に踏み切ったのか。Ubisoftは海外メディアGame Informerに対し、回答を寄せている。

Ubisoftは、ローンチ後の追加コンテンツが増えていくことを受け、プレイヤーがゲーム進行を速めるためのオプションを提示していきたいのだと説明。時短系の商品は、『アサシン クリード ヴァルハラ』の世界を探索し尽くす時間がないプレイヤーでも、ゲームの進行速度を速め、最高級のギアやアイテムを揃えられるようにするために販売していると伝えた。なおXPブーストを買ってもらうために、わざとレベル上げにかかる時間を長くするといった変更は加えていないとのことだ。


とはいえストーリーDLCの配信は来年であり、このタイミングでXPブーストの販売を開始した理由としては不明瞭である。ただ、納得のいくタイミングではある。前作にてピンポイントで批判された課金要素を、ローンチ時期に実装するのはリスクにつながる。メディアやインフルエンサーから、「前作に続きXPブーストを販売している」との批判が集まり得るからだ。業界的な関心が他のゲームに移ってから実装すれば、波風を立てずに済む。現に今回のXPブースト販売は、前作のときほど大きく取り上げられていない。

このように議論の的となりうる課金要素の実装を、リリースから時間が経過するまで控えるケースはほかのタイトルでも散見される。『Call of Duty』シリーズはその代表格であり、『Call of Duty: Black Ops 4』のときには、発売から数か月経ってから続々と少額課金要素を増やしていったことから、少額課金に関するシリーズ恒例の販売戦略を危惧視する声が出ていた(Forbes)。こうして後から課金要素を足していくことでネガティブに取り上げられる場合もあるが、発売後も継続的に遊ばれるオンラインマルチプレイ作品と違い、『アサシン クリード』シリーズのようなシングルプレイ作品は、発売後に追加される課金要素について人々の関心を呼びにくい。批判を浴びるリスクの回避という点で、発売1か月後の実装というのは納得がいく。


そもそも、なぜ前作『アサシン クリード オデッセイ』にてXPブーストが議論の的になっていたのか。発売当時、XPブーストなしで遊ぶとレベル上げにやたら時間がかかってしまうという意見が多く、XPブーストを売るために通常のXP獲得量を渋くしているのではないかと、メディアが疑念を抱いたのが主な理由だ(関連記事)。開発元が否定しても、XPブーストが販売されている以上、課金を促すための調整が入っているかいないか、本当のところはわからない。なお『アサシン クリード オデッセイ』では、アップデートにより通常XP獲得量が緩和された。

そうした疑念を払拭するという意味でも、『アサシン クリード ヴァルハラ』にて発売時点でXPブーストを実装しなかったことは、プラスに働いただろう。本作は推奨レベル(推奨戦闘力)に到達していなくてもミッションに挑める。推奨戦闘力未満であっても、ミッションを攻略することは十分に可能なバランスになっている。このあたりはプレイヤー個々の感覚によって違ってくる部分ではあるものの、「メインストーリーを進めるためにレベル上げをしている」とは感じにくくなっているというのが、筆者が受けた印象である。前作で指摘されていた「XPブーストを売るために通常のXP獲得量を渋くしているのでは」という懸念は、今作からは感じない。それをわかってもらうために、XPブースト実装を遅らせたとも考え得る。


時間がないプレイヤー向けのオプションとして時短アイテムを提供しているという説明は、Ubisoftが公に情報発信する際の共通見解・テンプレートのように使われている。『アサシン クリード オデッセイ』のときも、時短アイテムは、広大なオープンワールドを探索しきる時間がないプレイヤーでも本作を楽しめるようなオプションとして販売していると説明(先述の関連記事参照)。『ゴーストリコン ブレイクポイント』においても、時短アイテムについて類似した見解を述べていた(関連記事)。

ただ『ゴーストリコン ブレイクポイント』では、「リリースから月日が経ち、後から遊び始めたプレイヤーが、既存プレイヤーに速く追いつき、一緒にエンドゲームコンテンツを遊べるようにするためのもの」と、リリースから時間が経ってから導入する課金要素というニュアンスを強めている。『アサシン クリード ヴァルハラ』も、先述したように「ローンチ後の追加コンテンツが増えていくことを受け」との説明があった。広い意味での「遊ぶ時間が限られているプレイヤー」向けの商品から、「後から遊び始めたプレイヤーが最新コンテンツに追いつくため」の商品へと見せ方がシフトしてきているのだ。その真意は分からずとも、今回のXPブースト実装は、Ubisoftの現在の方向性を確かめる機会になった。


なお日本版『アサシン クリード ヴァルハラ』の最新アップデートでは、一悶着あった「流血表現をオンにできないという問題」が修正されている(関連記事)。ゲーム内オプションの流血表現の項目をオンにすることで、攻撃を受けた際や、敵に攻撃を与えた際に血しぶきが飛ぶようになった。国内プレイヤーが本作を遊び始めるタイミングとしては悪くないだろう。

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