ハードコアFPSにプレイアブルな女性キャラは必要か不要か。『Escape from Tarkov』開発元の“3年前のインタビュー”が議論を巻き起こす

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ハードコアなFPSとして、根強い人気を誇る『Escape from Tarkov』にて、女性兵士をプレイアブルキャラ化させることに関し議論が起こっているようだ。きっかけとなったのは“3年前のインタビュー”。2016年9月にWccftechのインタビューにこたえた、開発元Battlestate GamesのクライアントプログラマーPavel Dyatlov氏のコメントが発端である。

Wccftechに女性をプレイアブルキャラ化しないのかと問われた氏は、「検討したが、女性は戦場にいることが許されないという結論を出した」とコメント。最近では女性も軍隊にいると返され、以下のように答えている。

「同意します。ただ、我々も長きにわたって議論し続けたのですよ。そして最終的に、女性は(戦場の)ストレスを抱えきれないという結論に達しました。戦場は、強靭な男たちのみがいる場所なんです」

PolygonやIGNに寄稿する元米海軍のジャーナリストJohn Phipps氏は、今年1月6日になり同インタビューを抜粋した画像を、「fuck Escape from Tarkov」の文言と共にTwitterに投稿。実際に世界では女性兵士が活躍を見せているほか、昨今では『Battlefield V』や『Call of Duty: WWII』で女性兵士が登場するなど、ゲームに導入する動きも出てきている。John Phipps氏も、元海軍としての自身の経験を踏まえて、異議を唱える意図でインタビューを引用したのかもしれない。すぐにこのインタビューはTwitterやRedditなどに拡散され、問題視された。

この投稿については、Battlestate Gamesの共同設立者であるNik Buyanov氏がすぐさまRedditにて反応。「そんな内容を言ったことはない!女性をとてもリスペクトしてる。女性が戦場にいることは許されないなんて馬鹿げたことは言うわけがない。女性がストレスを抱えきれない?なんだそりゃ、インタビューでそんな回答をしたことないよ」

Battlestate Gamesの公式Twitterも、この件について声明を出している。インタビューは主要なメンバーではない、一従業員によって答えられたとコメント。その発言がおそらく誤って解釈された結果、戦時中の女性と女性兵士を常にリスペクトするという会社としての正式なスタンスが反映されなかったと語る。当該の従業員は適切に指導されたとのこと。

また『Escape from Tarkov』に女性兵士が登場しない理由についても語られている。同作の世界にはトレーダーやストーリークエスト上のメインキャラとして女性が登場すると前置きし、プレイアブル女性キャラがいない理由について説明。ふたつの理由をあげ、ひとつめはゲームの世界観/背景の問題(game lore)であるとコメント。もうひとつは、女性兵士をプレイアブルで作る上でアニメーションやギア調整など、多大な労力が必要であるという点。そもそもゲームの世界の事情で女性兵士を登場させることに問題があり、かつEAやActivisionのように大きな会社ではないBattlestate Gamesには、実装に取り組む余裕がないと言っているのだろう。

インタビューでの発言については、Battlestate Gamesの素早い反応と弁明については評価する声も集まっていたが、一転として女性兵士の扱いについて意見を出し、その理由を「世界観/背景」「開発負担」としたことにより批判が集まっている。世界や背景を作り出しているのは開発者。そこに女性兵士を登場させないというのは、開発者らが女性兵士を締め出していると考えているわけだ。2020年だからそんな言い訳は通用しないという批判から、セクシズムであるという声、リップグロスや胸揺れはいらないから男性のアニメーションとヒットボックスで見た目だけ変えて登場させればいいという声も。直前の声明で誠意ある謝罪をし、リスペクトを払うとコメントしているからこそ、落胆しているのかもしれない。

一方では、開発元の姿勢を支持する声も大きい。Twitchストリームを運営するシューター好きの女性インフルエンサーShannon Plante氏は「すべてのことをこんな夜中にはっきりさせてくれてありがとうございます」とした上で「すべてのゲームがすべての性別に対応したプレイアブルキャラクターを用意する必要はないと思います」とコメント。また個人的には開発における負荷も理解しているとし、「自身のアートに忠実であることに感謝します」と語っている。穿った見方で考えると、ポジショントークであることは否めないが、「すべてのゲームがすべての性別のプレイアブルキャラクターに対応させる必要はない」というのは、ほかの多くのTwitterユーザーも声をあげている点だ。

『Escape from Tarkov』をもっぱらよく遊ぶ女性ストリーマーのENGAGE氏は同じく女性として、ゲームを愛しているとコメント。自身にリスペクトを示してくれるコミュニティは素晴らしく、ゲームにのめりこむようになったと語る。直接問題についてコメントしているわけではないが、今のままでも女性として受け入れられると暗に語っているのかもしれない。

そのほかハードコアFPSである『Escape from Tarkov』が『Call of Duty』や『Battlefield』にならいカジュアル化する必要はないという意見もみられる。ただし、女性キャラをプレイアブルで遊びたいという気持ちも十分に理解できる。一概にどちらが悪い、正しいとジャッジできる問題ではないのも確かだ。プレイヤーと非プレイヤーで、この問題における開発元へのスタンスに乖離が生まれている部分も拭えないだろう。ゲームにおける女性の扱いはしばしば話題にあがる問題。特にゲームの主人公の性別オプションを用意するかという点は、さまざまな会社が取り組んでいる最中である。大きなゲーム会社はそうした取り組みをする余裕もあるが、Battlestate Gamesのようなインディースタジオは、どこまでそうした期待に応えられるのだろうか。

国内コミュニティも盛んな『Escape from Tarkov』。腕っこきプレイヤーが多いのだろう。

『Escape from Tarkov』は、先日Twitchにて実況を視聴するとゲーム内アイテムをもらえるというキャンペーンが実施されており、一時は『フォートナイト』を超える視聴者数を記録しトップに君臨するなど、年末年始に注目を集めていた。3年前のインタビューによって、突如批判に晒されることになったBattlestate Games。人気タイトルで注目度も高いということで、今後はパブリックな発言についても注意が求められそうだ。

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