『Bloodborne』のとある弱小NPCは、開発の初期段階では「ボス」として作られていた説が濃厚に


フロム・ソフトウェアとSCEジャパンスタジオの共同開発により生み出された高難易度アクションRPG『Bloodborne(ブラッドボーン)』。『Demon’s Souls』や『DARK SOULS』シリーズから受け継いだエッセンス、そして攻めに特化した戦闘システムやゴシックを基調とした独自の世界観が高く評価され、2015年には日本ゲーム大賞にて優秀賞を獲得するなど、多くのゲーマーから支持を集めてきた作品だ。そんな『Bloodborne』の作中に、元々ボスとして実装されるはずだったNPCキャラクターが存在することが判明したようだ。海外メディアVG247などが報じている。

※2015年3月に公開されたローンチトレイラー

今回話題の的となったNPCキャラクターは「学長ウィレーム」だ。ウィレームは多くのプレイヤーが中盤で訪れることとなるエリア「ビルゲンワース」に登場する老人である。既プレイヤーなら、白痴の蜘蛛、ロマ戦前の月見台で揺り椅子に座る老人といえば察しが付くかもしれない。このキャラクターはプレイヤーに一切攻撃を加えてこず、こちらが攻撃を加えた場合も反撃してこない、いわゆる無害なNPCである。少量のダメージを与えると死亡し、敵を倒した際のアイテム入手率の上昇効果を持つカレル文字・「瞳」をドロップする。体力が低いうえ、常にか弱いうめき声をあげるウィレームの姿は弱々しく、到底ボスキャラクターには見えない。どういった経緯で“元ボス”だと判明したのだろうか。また、もしボスとして採用されていた場合、一体どのような戦闘スタイルで登場していたのだろうか。

ウィレームが開発段階でボスとしての扱いを受けていたことを発見したのはMod制作者のLance McDonald氏。氏はYouTubeにウィレームが元々ボスだったことを示す動画を投稿した。今回の件は『Bloodborne』ビルド(アルファ)版を起動することによって発覚したようだ。動画前半部分では、製品版には未収録の「生き肝」と称されたアイテムがずらりと並んでいる様子が確認できる。各生き肝の説明欄にはボス名と思わしき記載と、それに続いてソウルの文字が。水銀弾の説明欄には「銃撃に必要」と記載されていることからも、アイテム名下部の文章は開発者向けのメモといったところだろうか。となると生き肝はソウルシリーズに登場するボスソウルに該当するアイテムだと推測できそうだ。

そしてその中に「大学教授のソウル」とメモされたアイテムが存在する。大学教授とは恐らく学長であるウィレームのことを指しているのだろう。さらにデバッグメニューから大学教授の詳細を読み込むと、移動タイプや旋回速度といったステータス項目が表示される。また、敵の名が並ぶチーム23という項目にも大学教授の名が記載されている。ウィレームが“元ボス”だという裏付けは前述した要素にとどまらない。投稿された動画には、製品版では会話することのできないウィレームに話しかける様子も収められている。するとウィレームは「Eyes,eyes,where are the eyes(目はどこ)」など、目が見えない故の言動をとる。McDonald氏によるとウィレームは、会話の選択肢から特定の項目を選ぶとプレイヤーを攻撃するように設定されていたようだ。

動画の中盤から後半にかけてはウィレームの戦闘時のモーションが確認できる。あくまでビルド版のため、エフェクトなどは用意されておらず、単調な動きに見えることだろう。それでも身体ごと椅子を浮かせて地面に叩きつけるモーションや、手に持った杖を用いて何かを放つようなしぐさをするなど、明らかにプレイヤーを攻撃する様子がうかがえる。以上のことからMcDonald氏は、ウィレームは元々ボスだったと判断するに至り、動画を投稿したわけである。

ストーリー上の都合なのか、はたまたゲームプレイ部分の調整によるものなのか、製品版でウィレームが無害なNPCとなった(であろう)理由は開発者のみぞ知るところだ。しかし発売から長い年月を経て、こうした形で新たな説が見出されることは『Bloodborne』を遊んだプレイヤーにとっては、開発の紆余曲折を知る興味深い機会なのかもしれない。ちなみにMcDonald氏は今までにも、『Bloodborne』における没ボスや没アイテムを解析してきている。またソウルシリーズや『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』の没コンテンツの発掘もしているよう。今後も何かしらの新発見がありそうだ。