『スマブラ』の大会にて、優勝者に「カニ」が投げつけられる事件が発生。注目集めるプリン使いプレイヤーの受難


歴史あるスマブラシリーズの大会として知られている「Pound 2019」にて、優勝者に向かってカニが投げつけられるという珍事件が発生した。贔屓のプレイヤーが負けてしまったり、気に入らないプレイヤーが活躍したりで歯がゆい思いをするのはどんなスポーツのファンでも経験したことがあることだろうが、今回はそれがすこし行き過ぎてしまったようだ。

被害にあったのは『大乱闘スマッシュブラザーズDX』(以下、スマブラDX)にてプリン使いの強豪であるHungrybox氏。EVOでは壇上常連かつ2016年大会の覇者であり、メジャー大会マイナー大会どちらでも多くの優勝経験を持つ。少しでも『スマブラDX』シーンを追っている人なら一度は名前を目にしたことはあるだろうプレイヤーだ。今回のPound 2019はダブルエリミネーション方式であり、Hungrybox氏はセミファイナルで同じく強豪プレイヤーのMang0氏に敗れルーザースに落ちたものの、そこから執念の5セット連勝で優勝をもぎとった所で背後からカニに襲われたというわけだ。問題のシーンは動画にもなっている。

Hungrybox氏はいわゆるアンチが多いプレイヤーとしても知られている。同じ『スマブラDX』プレイヤーではLeffen氏もアンチが多いと言われているが、Leffen氏はエゴイスティックで強気な言動や態度がしばしば批判の的となっているのに対し、Hungrybox氏のそれは使用キャラクターとプレイスタイルに起因する部分が多い。『スマブラDX』はスマブラシリーズだけではなく古今東西あらゆる対戦ゲームと比べても屈指のゲームスピードを誇るタイトルであり、そこに魅力を感じる観客も多い。そんな『スマブラDX』においてHungrybox氏のキャラとプレイスタイルが「遅い」と感じる人達がいるというわけだ。またHungrybox氏と上位プレイヤーの対戦は「フォックス対プリン」というマッチアップになる可能性が非常に高く、これを見飽きた観客のヘイトがプリンに、そして波及的にプリンプレイヤーであるHungrybox氏に向かっているパターンもある。

もちろん、Hungrybox氏のキャラやプレイスタイルは氏が真摯にゲームに取り組んだ結果なのであり、なんら責められる謂れのあるものではない。勝負や結果を追い求めた結果、時としてオーディエンスからは「寒い」とされるような戦術に終始することはeスポーツに限らず珍しいことではない。それどころか、将棋の盤外戦術や2018年W杯でサッカー日本代表が取った「時間稼ぎ」戦術のように、競技の外側にまで勝負が影響を及ぼすケースもある。こういった現象はしばしば議論の争点となっており、eスポーツが既存の競技と同じく真剣勝負であると同時に興行的な側面も持つ以上、向き合わねばいけない問題のひとつではあるだろう。

今回の事件がHungrybox氏を気に入らない観客によるものであることは間違いないが、優勝を見て感情が高ぶってしまい思わずなのか、もともと投げつけるつもりで会場にカニを持ち込んでいたのかは知る由もない。しかし、危うく頭に命中するところだったことを考えると到底許されざる行為ではないだろう。

投げつけられたアオガニ(blue crab)は大会会場であるメリーランド州の特産品でもある。地元民が食べるつもりで持ち歩いていたものなのか、観光客が土産として買ったものなのかは謎であるが「メリーランドで人に向かって何かを投げつけるなら、まあカニだろう」と冗談交じりで話すユーザーも。投げつけた行為はともかく、投げつけたモノ自体は土地柄に沿った(?)選定だったようだ。もしくは、最近インターネットにおいてミーム化している大量のカニが音楽に合わせて楽しそうに踊る動画(Crab Rave)に関連するネタのつもりで持ち込んだものなのかもしれない。

なお、カニを投げつけた犯人は会場からの逃走を試みたが結局は捕まったようだ。「Pound 2019」の主催の一人でもあるAposl氏の発表によると、犯人は名前こそ公開はされないものの他の大会オーガナイザー達に情報共有と注意喚起がされ、今後スマブラ関連の大会には出入り禁止になるだろうとのこと。

ちなみに同日にアリアナ・グランデのパフォーマンス中にレモンが投げつけられるという事件もあった様子。どちらも行き過ぎたファンによるものであるだろうが、どんなに不満であろうと人に食べ物を投げつけるべきではない。危険であるし、選手やアーティストにも、食材にも、どちらにも失礼である。

【UPDATE 2019/4/23 19:20】
被害者であるHungrybox氏は早速、カニに対しリベンジを果たしている。詳細記事はこちら