発売から3年以上、ダンジョンRPG『両手いっぱいに芋の花を』がSteamで「圧倒的に好評」に。開発者いわく“ウリのないゲーム”が、ただただ作り込まれて花咲く

リリースから4年が経ち、「圧倒的に好評」も得たこのタイミングで、あらためてPon Pon Games氏に本作への想いを訊いた。

弊社アクティブゲーミングメディアのゲームパブリッシングブランドPLAYISMは『両手いっぱいに芋の花を』を配信中だ。対応プラットフォームはPC(Steam)/Nintendo Switch。 

『両手いっぱいに芋の花を』は3DダンジョンRPGだ。本作の舞台となる世界は土壌汚染が広がっており、人類社会が脅かされている。しかし、とあるひなびた島の迷宮の最下層に、土壌汚染の影響を受けずに育つ特別な種が保管されているという。プレイヤーは3人パーティーを編成し、地下迷宮の攻略を進めていくことになる。

本作は種族や職業などを選び、パーティーメンバーをキャラメイクすることが可能だ。ナイトやレンジャー、シャーマンなど8種類の職業から3人を選び、チームを編成。メンバーの組み合わせと育成方針次第で、戦術も大きく変化していく。また迷宮はシンボルエンカウントとなっており、戦闘が終了するごとに体力が全回復する仕様。全滅したときのペナルティも特になく、歯ごたえがありつつも気軽に、戦闘に集中して取り組める作品となっている。 

本作は国内の個人開発者Pon Pon Games氏が制作し、2022年3月にリリースした作品だ。伝統的なダンジョンRPGを再構築したシステムや、優しげで親しみやすい世界観などが評価され、Steamユーザーレビューではリリース以来、好評レビューが日々着実に投稿されていた。そうしてついにレビュー数が500件を超え、本作のステータスは「圧倒的に好評」に到達。きわめて高い好評率のゲームしか達成できない、ユーザーレビューステータスにおける最高評価を手にした。

リリースから4年が経ち、「圧倒的に好評」も得たこのタイミングで、弊誌はPon Pon Games氏にメールインタビューを実施。節目にあたって、あらためて同氏に本作への想いを訊いた。Pon Pon Games氏の、本作やそのファンに対する熱い思いをうかがうことができたので、本稿で紹介する。

充足と、ほんの少し苦い悔恨

──『両手いっぱいに芋の花を』がついにSteamで「圧倒的に好評」を得ました。率直な感想を教えてください。

Pon Pon Games氏:
大変名誉な評価をいただき、プレイヤーの皆様、制作や販売を支援していただいた皆様、すべての方に改めて、深く感謝を申し上げます。ありがとうございます。今現在も、Steam上に限らず、レビューやご感想は可能な限り拝読させていただいており、その度、充足とほんの少し苦い悔恨の入り混じった、確かな励みを得ております。

『両手いっぱいに芋の花を』は、私の好きな、海外製ファンタジーのクリーチャーや、等価値に多態であるRPGの職業概念を、妥協なく詰め込んだ、めちゃくちゃに個人的(インディペンデント)な作品です。たくさん受け入れられるのが「いい表現」というわけではないのですが、それで世の中に少しでも爪痕を残せたのは、表現者としてこの上ない喜びです。

今後も懲りずにファンタジーのRPGを制作して参りますので、完成しましたらまた遊んでいただければ幸いです。

──こうした評価を得られるとリリース前から思っていましたか?

Pon Pon Games氏:
自分自身は楽しく何十周もテストプレイできていたので、内容に一定の自信はありました。ただ、評価のされ方は別だと思っていて、ダンジョンクローラーやDRPGのファンに、受け入れられるかどうかは、リリース直前まで心配していました。明らかに、繰り返しによる成長を遊ぶゲームではないからです。「こんなのはDRPGではない」と拒絶されるのではないか、と。私もアイテム集めやキャラクター育成をするRPGは好きなので、DRPGにそれを求める気持ちはよくわかるのです。なので、露出面で「DRPG」という言葉はできるだけ使わないように気を付けていました。

しかしいざSteam Nextフェスで体験版をリリースしてみると、それらのジャンルのファンこそ、既

存のタイトルにない魅力を快く受け入れてくださっており、ほっと胸をなでおろしました。よかった!

また、物語創作を好きなタイプのプレイヤーさんが、ご自身で長年温めているマイキャラ、いわゆる「うちのこ」をキャラクター作成要素で再現して、それで遊んでくれることは十分予測できることでした。リリース後、そういった方々に無事届いて、楽しんでいただけているのは、確かな喜びです。

チーフみたいな人間になりたい

──具体的に、本作のどういった要素が支持されたと感じましたか?

Pon Pon Games氏:
長話になります。

まず、キャラクターの話をさせてください。プレイヤーの皆さんに人気の登場人物であるチーフです。探索をサポートする仲間であり、物語の主人公でもある重要なNPCです。「手を振ってくれてかわいい」と言ってくれる方も、そこからさらに内面を好きになってくれる方もいらっしゃいます。みなさんがチーフを好きになってくれたことを、本当に本当にうれしく思っています。

チーフは理想の上司像であり、気さくな近所のお姉さん像でもあるのですが、それ以上に私の「かくありたし」を詰め込んだ人物です。人生を通して、チーフみたいな人間(あの人はエルフですが)に、私はなりたいのです。本作をリリースして4年、昨今の世界情勢や情報社会の潮流は大きく変化し、人の人生観や価値観は大きく揺らいでいるように思います。そんな中でも自分をしっかり持って、チーフのごとく、よく生きねばならん、と改めて思いを確かにしているところです。

実はチーフがこんなに人気になるとは思ってませんでした。真面目なタイプなので、下手したら嫌われるかと。もうひとりのダークエルフである騎士見習いこそ(作者は「手前くん」と呼んでます)、人気が出ると思ってました。彼も結構人気ではあるのですけどね。

全く余談ですが、チーフの本名は作中では語られないのですが、作中舞台の言語で、「最初の文字を意味する言葉」です。地球語ではさしずめ、アルファさん(または、いろはさん、하나さん)といったところです。

個人のこだわりと、ボリューム感の両立

Pon Pon Games氏:
キャラクターだけでなく、ゲーム内容についてもお話しせねばなりません。

支持されたゲームシステムについて、各要素をつぶさに解説することはできます。体験の濃さを重視したこと、戦略性を縮小して戦術性にフォーカスしたこと、多彩なキャラクタービルドとその力をふるう場をふんだんに用意したことなどです。しかし、「なぜ支持されたか」という問いに対しては、せっかくですから、もう少し大局的な答えを導くことが、有意義に思います。

ところで、本作をPLAYISMさんから出版していただくにあたって、最初のころに水谷さん(PLAYISM事業責任者)とお話ししたことと、その内容をよく覚えております。水谷さん曰く、「このゲームのウリはなんですか?」と。想定していた質問ではあったのですが、改めて問われて、戸惑いを隠しながら私はこう答えました。

「このゲームには、わかりやすいウリはありません。新規性や差別化を考慮して作ってません。例えば、このゲームはJRPGでありながらメイスが戦士の武器として普通に強いです。そういったことを一緒に喜んでもらえるような、そんな人向けに作ってます」いただいた反応は簡素で、「なるほどー」でした。その後、無事発売が決まりました。

話を戻します。

改めてSteamやブログのレビューを俯瞰すると、作りが丁寧であることを、概ねお褒めいただいているようです。また、「作者の美学・哲学が最後まで揺るがなかった」というお声をいただいていて、それが強く心に残っています。嬉しい!

おっしゃる通り、制作にあたっては、作者として譲れる要素、譲れない要素、メカニクス目的で入れる要素、単に好みで入れる要素、これらの区別を常に徹底しました。こだわりポイントです。それが結果的に、個人製作作品としての純度、属人性を高めました。チームが合議制で作ると、どうしても味が濁りがちだからです。ゲームは対話のメディアですから、話し相手(作者)のパーソナリティがはっきりしていると、体験が印象に残りやすいのではないでしょうか。

もちろん、個人で作ったゲームや、個性的なリーダーが作ったゲームは、Steam上にたくさんありますが、一定規模以上の作品となると稀です。ターン制のRPGとなるとなおさらです。Unity等があってもゲーム制作のハードルは高いので……。つまり個人製作の作品として20時間以上遊べる規模のRPGだったことが、Steam市場で希少性としてたまたま刺さったというのが、今作が支持された大局的な理由ではないかと、今は思っています。

ですので、本作のウリを問われたときの私のフワフワした回答に対し、水谷さんは、そこら辺をくみ取ってくれたのかな、と今は解釈しております。「なるほどー」

ひとりで長年かけて作った、という制作エピソードは、ともすればプレイヤーを無視した、作者本位の苦労話に聞こえがちです。もちろん、そういう側面もあるでしょう。しかし、ゲームの一貫性や統一感を作り上げる、確固たる不滅のアプローチのひとつであることは、確かに言えるのではないでしょうか。そうして作ったものが、必ずしもヒットするとは限らないことは、私たちゲーマーのよく知ってることでもありますが……。

ゲームに限らず、いかに世の耳目を集めるかが、議論される昨今。作りたいものをただただ作るという創作の原初の気持ちを忘れまじと、改めて思う次第です。

ファン活動はみんな目に焼き付けている

──個人制作でしっかりと細部までこだわりつつ、20時間以上遊べる規模に作りこんだことが希少性として刺さったと。なるほど。Steamやブログのレビューも見ているとのことですが、ユーザーの反応のなかで特に嬉しかったものを教えてください。

Pon Pon Games氏:
これまでゲームに限らず物語らしいものを創作したことは無かったのですが、ストーリーそのものや、それを構成するテキストをお気に召していただいていると、心が躍ります。

特に、手紙や日記に対する引用文について言及があると、頑張った甲斐があったなと報われた気持ちになります。これは、NPCとの会話中に引用される古文書風の文章です。作者の嘘八百であるフィクションの物語に説得力を持たせるために、はったりの効いた引用文と再現映像を表示することにしたのです。中世風のテキストを作るために、中世の古文書を読むための入門書で勉強したり、「甲陽軍鑑」(武田信玄の家臣の書いた本です)の本を買って、参考になりそうなフレーズを探したりしました。

この、古文書の引用要素は、宮下英樹さんの漫画作品「センゴク」シリーズの演出をヒントにしてます。戦国時代が舞台の作品なのですが、展開に合わせ、実在する古文書がコマ内で引用されることで、それが歴史上実際に起こった事だという現実味や臨場感がぐっと増すのです。

また、ストーリーについて、言外の出来事を汲み取ってくださっている方がいると、めちゃ幸せになります。以下、プレイ済みの方向けの、ネタバレになるんですが、「絶対『兄』の知ってる『妹』は今の『落日』さんとはまるで別人」という旨の書き込みをSNSで見て、「そうなんだよ! よくわかってくれたね~~~!」と悶えました。

あと、前述の通り、プレイヤーのマイキャラを交えたファンアートや、プレイ日記(なんとソロプレイ縛りなども!)も、拝見するたびに満ち足りた気持ちになります。ブログも動画もすべて目に焼き付けてます。改めて、ありがとうございます。

──Pon Pon Gamesさんの本作にかけた想いの大きさと、ユーザーへの感謝のほどがよく伝わってきました。本日はありがとうございました。

『両手いっぱいに芋の花を』はPC(Steam)/Nintendo Switch向けに配信中だ。価格は税込1870円。

この記事にはアフィリエイトリンクが含まれる場合があります。

Akihiro Sakurai
Akihiro Sakurai

気になったゲームは色々遊びますが、放っておくと延々とストラテジーゲームをやっています。でも一番好きなのはテンポの速い3Dアクションです

記事本文: 738