スクウェア・エニックスが8月2日に発売するSteam版『サガ スカーレット グレイス 緋色の野望』が日本語のみに対応していることが、海外で注目を集めている。海外フォーラムResetEraにてこの事例が注目を集め、PC Gamerなどの海外メディアもこの件を報じている。
Steam版が日本語のみに対応してことには、とある事情が絡んでいるとみられる。『サガ スカーレット グレイス 緋色の野望』は、2016年12月にPlayStation Vita向けに発売された『サガ スカーレット グレイス』のバージョンアップ版だ。Steamのほかに、PlayStation 4、Nintendo Switch、iOSとAndroidでの発売が予定されている。スクウェア・エニックスはワールドワイドにゲームを発売するパブリッシャーであるが、実は『サガ スカーレット グレイス』に関してはそもそも海外向けに発売されていない。
シリーズを監修する河津秋敏氏は今年4月に、『サガ スカーレット グレイス 緋色の野望』の英語対応(もしくは海外向け発売)については準備を進めているとTwitter上でコメント。8月2日の発売時点では日本語のみに対応して発売し、英語には後日対応するとしている。この時点で、日本語のみに対応することが濃厚であったが、7月12日にSteamストアページがオープンし、あらためて確定した形だ。
#サガスカ #サガスカーレットグレイス #緋色の野望
8月2日は日本語版のみのリリースとなります。英語版は後日対応の予定です。 https://t.co/YcYvW9G1tZ— 河津秋敏 (@SaGa30kawazu) April 25, 2018
英語のローカライズが現在進行中という事情で、発売時点では日本語にのみ対応する形となった『サガ スカーレット グレイス 緋色の野望』。日本語のみ対応というケースは非常に珍しく、注目を集めているわけだ。『MOBIUS FINAL FANTASY』のように国内向けと海外向けにストアを変更している作品はあれど、日本語のみに対応している作品はスクウェア・エニックスでは極めて稀だ。他メーカーの作品でいえば、コーエーテクモゲームスの『信長の野望』シリーズなど一部作品はSteam版は日本語のみ対応しており、前例がまったくないわけではないが、それでも珍しいケースである。
もともとSteamにおいては、一部国内メーカーは日本向けにはリージョンロックをおこないゲームを販売しないという施策をとることもあった。スクウェア・エニックスは『FINAL FANTASY III』『FINAL FANTASY V』のリメイク版は日本からは購入できず、『FINAL FANTASY IV: THE AFTER YEARS』『FINAL FANTASY VI』『FINAL FANTASY VII』といった少し前に移植されたタイトルは日本語でプレイできない状態ではあるが、近年発売されたタイトルは『FINAL FANTASY XV』や『クロノ・トリガー』など、『ドラゴンクエストXI』を除くほぼすべてSteamタイトルが日本語に対応し日本国内から購入可能。PC Gamerが「日本のPCマーケットは欧米よりも小さいが、おそらく少しずつ変わってきている」と考察しているのが、現状を物語っているだろう。
この流れはスクウェア・エニックスに限ったものではなく、先日には『龍が如く0 誓いの場所』がSteam向けに日本語字幕・音声付きで発売されることが発表されており、国内メーカーのユーザーへのアプローチは確かに変わってきている。もちろん、マーケット事情や都合により販売されないソフトは依然として少なくない数が存在しており、また国内向け価格がドルベースの価格よりもいくらか高いというケースも見受けられる。しかしながら、一時期と比べると変化が生まれていることを感じているユーザーもいるのだろう。
『サガ スカーレット グレイス 緋色の野望』のSteam版日本語対応は、英語版が間に合わなかったともとれるが、一方で日本語対応のみの状態でも国内ユーザーのためにSteamでリリースすることを決断したとも解釈できる。PC版における日本語のリリースには、音声のライセンス料を代表としたコスト問題が付随するとされており、見えない部分での障害も存在するとも言われている。この変化の流れが続くのか、はたまた止まるのか。国内メーカーがとる、国内向けのSteam市場への施策には今後も注目したい。