アメリカのハワイ州の州議会において先月、ゲーム内課金システムの1つであるルートボックスに関する4つの具体的な法案が提出されていたことが明らかとなった。提出された法案のうち2つはルートボックス導入済みの製品に年齢による購入制限を取り入れるというもの、もう2つはルートボックスが導入済み製品のパッケージや説明文に警告表示を義務付けるものである。その詳細をGlixelが報じている。
ルートボックスとは、日本で言うガチャのようなランダム型のゲーム内アイテム購入システムであり、導入当初は主にフリープレイゲームにおける収入源のひとつとして活用されていた。しかしUbisoft、Activision、Electronic Artsなどの大手パブリッシャーが買い切り型(フルプライス)製品に長期的なマネタイズを図る為の手段としてこれを取り入れたことで状況は変わっていく。
一度製品に対し対価を払っているにも関わらず追加で料金を支払わせるゲームシステムそのものに嫌悪を示すユーザーや、対戦型ゲームにおいて課金額がゲーム内での勝利に直結する恐れがあるということに対する不満を持ったプレイヤーが表れ始めたのである。そして、昨年の11月17日にルートボックスが導入されたAAAタイトル『Star Wars バトルフロント II』が販売されたことをきっかけにこの問題は世界的に注目されることとなった(関連記事)。特に問題の焦点となっているのは、対価を支払って手に入るアイテムがランダムであるということを受けた、ルートボックスはギャンブルに当てはまるか、という議題である。
そんな中ハワイ州は、ESA(エンターテインメントソフトウェア協会)などの業界団体が提示した「自己責任論」に揺れるアメリカ本国を横目に、独自の動きを見せていた。昨年11月末、州議会議員であるChris Lee氏がハワイ州を代表する声明として『Star Wars バトルフロント II』ひいてはElectronic Artsを直接批判、「ルートボックスはギャンブルであり、青少年の教育には害悪である」とルートボックスはギャンブルだという提言を行ったのである(関連記事)。この流れに続き提出されたのが今回の4つの法案だ。
4つはそれぞれ連邦議会の下院、上院に対応したものとなっており、うち2つが「21歳未満の人間にゲーム内課金システムを備えたビデオゲームを販売することは違法となる」という内容の法案である。元々ハワイ州において21歳未満の人間による賭博行為は違法とされており、ルートボックス入りのゲームもこれに当てはめようという形だ。もう2つはタバコや酒などと同じく、ルートボックス入りのゲームのパッケージや説明文に「警告:ゲーム内での追加課金要素や賭博のようなシステムが導入されています」「ルートボックスは21歳になってから」というような警告表示を義務づけるというものである。
この2組の法案が通過した場合、アメリカないし世界に対するさまざまな影響が考えられるが、特に大きな影響があると思われるのがESRB(エンターテインメントソフトウェアレイティング委員会)によるゲームの対象年齢設定である。ESRBにおけるレーティングは細かく区分できるが、大枠として性的および暴力表現の有無などを基準に「18歳以上」と「それ未満」でゲームの販売対象を区別する手法が採用されている。今回の法案が通過した場合、レーティングの基準が大きく変更される可能性がある。
また、万が一こうした施策がアメリカ全土に及んだ場合には、追加課金システムであるガチャがマネタイズの手段としてモバイルゲーム市場で主流となっている日本においてもその影響は看過できないだろう。2016年に消費者委員会が提出した「『スマホゲーム』におけるガチャに関する意見書」(リンク先はpdf)の意を汲むように日本オンラインゲーム協会(JOGA)がガイドライン(リンク先はpdf)を提示するなど、あくまで違法ではないが自主規制を推奨するスタンスをとる国内業界に対し、先日アプリの販売プラットフォームを提供する側であるAppleから直接ルートボックスに関するガイドラインが提示されたことは日に新しい。もし今回の法案がアメリカ全土に反映されることとなれば、国内ではなく海外のスマホゲーム販売プラットフォーム側からなんらかの新たな通告が出される可能性も否定できない。
ルートボックス規制に関する声明を提出したハワイの州議会議員Chris Lee氏はかつて自ら立てたRedditのスレッド内で「いくつかの州さえ動かせば、全体の流れを変えられるかもしれない」と語っていた。小さな離島での出来事が、はたして世界の流れを変えるうねりとなりえるのか、見届ける必要があるだろう。