『仁王』スピードラン1時間36分の世界記録達成者現る。速攻のカギは陰陽術、そして素手と鎖鎌のタコ殴り

 

コーエーテクモゲームスによる戦国アクションRPG『仁王』。2月9日のリリースから2週間が経ち、これまで2時間台であったスピードランの記録を大幅に更新する、1時間36分51秒のクリアタイムが叩き出された。記録を更新したのはスピードランナーのDistortion2氏。スピードラン条件はニューゲームからの全メインクエスト制覇である。

Distortion2氏は『仁王』に限らず、『BIOHAZARD 7 resident evil』(以下、バイオハザード7)のスピードラン(条件は、カジュアル難易度、ニューゲーム+、Any%)でも1時間30分22秒の公式記録(speedrun.com)、1時間30分09秒の非公式記録を残している(本稿執筆時点での世界記録はxerian氏の1時間30分07秒)。初回クリア平均40時間以上の『仁王』も、初回クリア平均8時間から12時間の『バイオハザード7』も、スピードランになればクリア時間にさほど差はないようだ。

※以下の文章・動画は『仁王』のネタバレを含んでおります

『Dark Souls』風のアクションRPGと呼ばれるだけあって、『仁王』のスピードランも基本は『Dark Souls』シリーズのそれと似ている。雑魚敵とは戦わず、キーアイテム・属性付与アイテム・一部装備品だけを回収しながら最短ルートを突っ走る。ボス戦は弱点属性をついて瞬殺。ただし『仁王』はステージごとにマップが分かれているため、『Dark Souls』または『Bloodborne』のようにグリッチを使って特定エリアをスキップできない。メインクエストのボスもスキップできず、必然的にスピードランの条件は全ボス撃破の「オール・ボス」タイプになってくる。また『仁王』の装備品は性能がいくらかランダムで決まるため、待ち時間でインベントリーを開き、どの武器・防具が優れているかを瞬時に判断する必要がある。

移動はダッシュではなく、下段構え状態で前方回避が基本。敏捷さステータスは一番身軽なAをキープ。アイテムのショートカットは回復薬、属性付与アイテムと陰陽符で埋める。戦闘は手数の多い鎖鎌または単発攻撃力を強化した素手を使い、バフ・デバフ呪文をかけたあと、弱点属性によるバックアタックでダメージを素早く重ねていく。ボスの弱点属性によっては守護霊の付け替えが必要だ。九十九技の使いどころもひとつのポイントとなっている。

 

陰陽術をフル活用

Distortion2氏のランでは、陰陽術をフル活用するためアムリタ(経験値)を呪ステータスに振っている。その次に体力と最低限の霊力。覚える陰陽術は、バフ系の「召水符(武器への水属性付与)」「結界符(気力回復速度アップ)」「修羅符(防御力ダウン・攻撃力アップ)」「拳力符(素手攻撃力アップ)」。デバフ系の「克金符(敵の防御力ダウン)」「封気符(敵の気力回復量ダウン)」「遅鈍符(敵の動作速度半減)」。そしてパッシブスキルの「心気清浄法(対常世ボーナス)」「浄天地呪(常世祓い範囲拡大)」「符術の心得(術容量アップ)」だ。

「結界符」は戦闘だけでなく移動時にも有用。「召水符」と「拳力符」は序盤から中盤までのボス戦で重宝する。「遅鈍符」「克金符」は全てのボス戦において、ほぼ必須。あまりに強力なため、今後のアップデートにより弱体化される可能性はあるだろう。なおスピードランの目的は全メインクエスト制覇であるが、陰陽スキル習得のため修行場の「陰陽の道」サイドクエストを「中伝」までこなしている。

 

ボスは素手と鎖鎌でタコ殴り

序盤のボスはいずれも武器に水属性をつけてタコ殴り。ひるませにくい立花宗茂戦ではデバフ後に大砲連発でゴリ押し。九州編クリアまでわずか18分30秒。続く中国編の石見銀山では正規ルートではなく、はじめから毒エリアを突っ走っていく。厳島の海坊主戦は、後半で「ひょっとこの面」を連発して一気に片付けている。中盤のボスは個体によって鎖鎌で挑むか、「拳力符」と「修羅符」をつけた素手で単発高ダメージで勝負するか、まだ検証段階のようだ。Distortion2氏は大蝦蟇戦は素手、鬼女戦は鎖鎌が速いと語っている。ただし後半戦に入ると攻撃力の高い鎖鎌を安定して入手できるため、素手を使う機会は減っていく。

部屋内を飛び回るお勝戦は、はめ技に失敗すると大幅に時間をロスする。また長期戦になると、それだけ攻撃を受ける機会が増え、死亡リスクが高まる。動画内でも1度死亡しているが、2回目にはうまく部屋の隅に追いやり、九十九技で瞬殺している(55:40)。続いて九十九技を発動するポイントは、関ヶ原2回目のガシャドクロ戦。足を破壊したのち九十九技の速攻で頭部を1回目の攻撃チャンスで破壊しきっている(1:06:50)。

近江の安土城では雑魚との強制連戦があり、手持ちのデバフを使える回数が限られている分、苦戦している。お勝と半蔵の挙動にも左右されており、動画内では半蔵が戦闘に参加せず、Distortion2氏が苛立ちをあらわにするシーンも(1:19:26)。このエリアの攻略はこれから最適化されていくのだろう。続くボスとの連戦でも3度死亡。とくに怨霊鬼はゲーム序盤で登場したときよりも動きが速いため、アジャストするのが少し難しい。なお最後の鬼門となるラスボス直前の雑魚戦は、安全圏から大砲を使って敵を瞬殺している(1:35:57)。

Distortion2氏が動画の最後で語るように、『仁王』はランダム要素に左右される面もあるが、ほぼパターン化できるゲームである。ただセオリーが固まっていないエリアも残っており、Distortion2氏も現時点では試行錯誤しながらの記録挑戦となっている。記録達成ランでの死亡回数は8回で、リスタートだけでも数分ロスしている。つまり、まだまだタイムを縮める余地があるというわけだ。氏が目標に掲げている1時間30分切りというのは、十分に達成可能な数値だろう。


元・日本版AUTOMATON編集者、英語版AUTOMATON(AUTOMATON WEST)責任者(~2023年5月まで)