最強のコピーガード「Denuvo」の無効化は契約満了のため、突破されたら無料の噂を公式が完全否定


オーストリアのソフトウェア会社Denuvo Software Solutions GmbH(以下、Denuvo社)は、Bethesda Softworksのファーストパーソン・シューター『DOOM』から同社のコピー防止技術「Denuvo Anti-Tamper」(以下、Denuvo)が無効化された理由について説明し、先日からフォーラムサイトを中心にささやかれていた期間保証の噂を完全に否定した。同作のコピーガードが解除されたのは契約期間の役目を無事に終えたからであり、ゲーム発売から一定期間内に破られた場合は利用料金を請求しないといった保証制度など存在しないと、海外メディアを通じて担当者が語っている。

 

初期セールスを守りきればお役御免

「Denuvo」とは、Denuvo社が開発した改ざん防止技術。ゲームソフトを特定のユーザーアカウントと紐付けることでコンテンツの無制限な利用を規制するデジタル著作権管理(通称DRM=Digital Rights Management)とは異なり、SteamやOriginといった既存のDRMプラットフォーム自体を保護するようデザインされている。デバッグ作業や逆行分析、実行ファイルの改ざんを防ぐことで、DRMをバイパスできないようさらに強固な守りを提供するのが目的だ。そのため、DRMを組み込まれていないゲームに対しては何ら意味をなさない。これまで発売日を待たずして違法コピーがインターネット上に蔓延するPCゲームの“割れ”事情に革命を起こした実績から、世界最強のコピーガードと賞賛されてきた。

今年8月にクラックが報じられた『DOOM』
今年8月にクラックが報じられた『DOOM』

先日、フォーラムサイトNeoGAFのユーザーがPC版『DOOM』の最新パッチを分析したところ、ゲーム内から「Denuvo」が無効化されていたことが判明。先月には、PC版『INSIDE』からも「Denuvo」が取り除かれていた。DRMに否定的な多くのユーザーから賞賛の声が寄せられる一方で、除外の理由について一部ではコピーガードの脆弱性を疑う見方もあった。「Denuvo」を利用する大手ゲームスタジオ勤務の開発者を名乗るユーザーが、Denuvo社にはコピーガードの安全性を約束する保証制度があると一部のフォーラムで発言したのだ。もしゲーム発売から一定期間内にプロテクトが突破された場合は利用料金が発生しないという内容で、「Denuvo」をゲーム内データから削除することが適用の条件とのことだった。

業界メディアKotakuによると、メールでの問い合わせに対応したDenuvo社のRobert Hernandez氏は、この噂をはっきりと否定している。「Denuvo Anti TamperがDOOMから取り除かれた理由は、単に初期販売計画の期間中に海賊版が流通することを防ぐという役目を無事に終えたからです。DOOMのプロテクトは4か月近く破られませんでした。あれだけの有名作品にしては輝かしい成果といえるでしょう」。また、保証制度の噂については、取引先との契約内容にはコメントできないとしながらも、巷で話題になっているような制度は同社には存在しないと明言した。その上で、初期セールスを不正コピーから守りきった後や、DRMフリーでゲームを再リリースする際に、不要と判断された「Denuvo」を無効化するのはパブリッシャー側の判断に委ねられていると補足している。

今回話題になった『DOOM』や『INSIDE』はもちろん、今年に入ってから『Rise of the Tomb Raider』や『Deus Ex: Mankind Divided』、『Mirror’s Edge: Catalyst』といった「Denuvo」搭載の新作タイトルは最終的にはクラックされたいる。しかし、そもそもPCゲームにコピーガードを施す真の意義は、クラッカーたちに破られるまでの時間を可能な限り引き延ばすことにある。パブリッシャーにとって最も重要な初期セールスを、海賊版の脅威から守りきるまでが「Denuvo」本来の役目というわけだ。その点においてはDenuvo社が敗北を喫したことは未だかつてないと言える。世界最強のコピーガードという存在感は依然として健在なようだ。