豪華ホテルで待ち受ける謎を解き、5人のゲストに最高級のディナーを提供せよ。古式ゆかしい推理ゲーム『Rusty Lake Hotel』

 

『CRIMSON ROOM』『My Diamond Baby』ら、2000年代前半に大流行したオンライン謎解きゲームを知っているだろうか? プレイヤーは画面上のあちこちをクリックして道具やヒントを入手。それらを元に推理し正解を導き出すFlashベースの作品で、今日の「リアル脱出ゲーム」や「謎解き合コン」といった企画の前身と言えるものだ。

ただクリックするだけのシンプルさと、算数・国語といった常識力を問われる問題と、眺めているだけでは解けない“とんち”の絶妙なブレンドで大ヒットした推理ゲームというジャンル。開発・販売Rusty Lake社と同名の『Rusty Lake Hotel』は、この古き好き伝統(?)をしっかりと受け継いだクラシカルな謎解きゲームである。iPhone/Android版アプリもあり、既にプレイ済みの読者もいるかもしれないが、謎解きは大得意!と言うなら通しで1時間半から2時間程度、初心者なら1日じっくり楽しめる満足度。さらにSteamでも198円とたいへんお財布に優しい価格の本作を紹介しよう。

なお、謎解きにおいてネタバレはもちろんご法度なので、その点は安心して目を通してほしい。

 

求められているのは三ツ星ディナーに必要な最高の素材。あなたは3点すべてを見つけられるのか?

ゲームは1893年のある日の午後、Mr.Crowの漕ぐボートで「Rusty Lake Hotel」へ5人のゲストが到着するシーンから始まる。その外観から歴史と風格を漂わせるホテルにふさわしい、いずれも身ぎれいな服装でめかしこんだ紳士淑女達。プレイヤーは客の一人……ではなく、ホテルの持ち主であるMr.Owlとフロント係を兼ねるMr.Crowの指示を受け、最高のサービスを皆様に提供するために働くスタッフにすぎない。一流シェフの求めるディナー用食材を最低1点、できれば3点すべて入手するだけの簡単なお仕事。ただし、あなたが働けるのは日が沈んでからディナータイムまでの間に限定されている。

ゲームの進行はクリック以外必要ないので、特にチュートリアルめいた物はない。初のディナーを迎えるためにはフロントのMr.Crowをはじめゲスト全員への挨拶が必須なので、クリックで視点を回転させる、場所によっては拡大画面に変わったり、アイテムを拾いあげ画面右のスロットに収納といった基本はここで感覚を掴めるだろう。

広大な湖のほとりにたたずむ「Rusty Lake Hotel」。ボートがなければ対岸からホテルに着けないという立地は推理小説における「雪山の山荘」や「孤島の洋館」をイメージさせ、いかにも“何か”が起こりそうだ。
広大な湖のほとりにたたずむ「Rusty Lake Hotel」。ボートがなければ対岸からホテルに着けないという立地は推理小説における「雪山の山荘」や「孤島の洋館」をイメージさせ、いかにも“何か”が起こりそうだ。

画像左: まずはフロントでシュリンプカクテルを受け取り、まずはゲスト一人一人にご挨拶を。画面の左右と下部にある小さな黒い三角をクリックすれば、視点が移動する。
画像右: 昼の間はエレベーターが使用不可で客室のあるフロアに入れない。左上の肖像画がこのホテルのオーナーMr.Owlだ。

フロント奥のキッチンを訪ねると、ゲストが滞在する5日分のレシピを渡される。レシピは画面右上の本アイコンからいつでも確認可能だ。さて、シェフに要求された1日目のディナーの食材はマッシュルーム・鹿肉・ローズマリーの3点である。では、これらの食材をプレイヤーは一体どこから手に入れればよいのか?

……そういえば5人の中にMr.Deerなるゲストがいなかっただろうか??

最初のディナーは鹿肉のステーキ マッシュルームとローズマリー添え。おいしそうだなあ。
最初のディナーは鹿肉のステーキ マッシュルームとローズマリー添え。おいしそうだなあ。

もう賢明な読者ならば肉の入手先はお分かりのはず。やがて夜の帳が下りたならば、エレベーターに乗ってMr.Deerの客室を訪ねよう。ここからが謎解きゲームの本番となる。本ゲームには食材を見つけるまでの時間制限はない。部屋の中をくまなく調べてクリックし、必要なアイテムとヒントを見つけられたならあとは正解を導き出すだけだ。

初日だけあってMr.Deerの部屋の謎は『Rusty Lake Hotel』では一番わかりやすく癖がない。謎解きゲームに不慣れな場合はとにかく何でもいいからクリックし、アイテムを使えないか片っ端から試してみよう。拾える物はすべて拾い。触れるところはすべて触った。それでも謎解きに行き詰まったら? すべての手がかりは必ず部屋の中に用意されている。丁寧に考えれば簡単に解けるものもあればちょっとした閃きが必要なもの、音が重要な手掛かりになるなど謎のバリエーションはかなり豊か。注意深く観察すればきっと答えが見えてくるだろう。

画像左: 1つのヒントで1つの謎が解けるとは限らない。重要そうな記号や数字はメモを取るのもおすすめ。
画像右: 算数が大の苦手である筆者が一番苦しめられたのが、この水問題。恥ずかしながら理系専攻の大学生に電話して解いてもらったことを今、ここに告白します。ごめんなさい。

実はディナーの食材3つのうち、必須なのはお肉だけ。その他、例えば初日ならばマッシュルームとローズマリーはあくまでオプション扱いで手に入らなくてもクリアはできる。ただし最高の三ツ星はもらえなくなるので、可能な限り副食材も謎を解いて見つけたい。さて、シェフが腕によりをかけた鹿肉のステーキ、お客様は満足してくださるだろうか?

すべての食材を手に入れたおかげで、お客様から星みっつ、いただきましたー!

『Rusty Lake Hotel』はヨーロッパの絵本のような味のあるイラストと、ほんの少しブラックユーモアの混じったストーリー、そして初心者から中級者向けの謎が散りばめられた質の良い謎解きゲームだといえる。特に本作で評価すべきは、理不尽で納得のいかぬ謎がないという点だ。かつてのオンライン謎解きゲームには、ある特定の1ドットを正確にクリックしなければ先に進めないなど“解かせない”ための意地悪い謎もたびたび見かけた。『Rusty Lake Hotel』はその点すべてのヒントは公平に表示されており、一見難しい仕掛けもわかってみればスッキリ納得できる。

謎解きファンはもちろん、パズル系ゲームは未体験という方にはぜひとも初めての1本として『Rusty Lake Hotel』を選んでほしい。