TVドラマ『ツイン・ピークス』 ビデオゲームにも影響を与えた人物の存在感と関係性

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新連載[Film Gamer]では、ゲームに関係した映画・ドラマを定期的に紹介していく。その第1弾として、2016年に25年ぶりに復活することが発表され、予告動画も公開された『ツイン・ピークス』を取り上げる。

『ツイン・ピークス』は90~91年にアメリカで放送されたTVドラマと、92年に公開された映画『ツイン・ピークス ローラ・パーマー最後の7日間』からなる作品だ。アメリカでは放送と同時に高視聴率を記録。日本においてはWOWOWの開局時の主力ドラマであり、レンタルビデオで高回転率をキー プ。海外ドラマとしては異例のヒット作となり、のちにさまざまな作品に影響をあたえた作品だ。ゲームも例外ではなく、後述するように影響を受けた作品がある。

アメリカ北西部にある架空の田舎町ツイン・ピークスで、地元の女子高生の死体が湖畔で発見されるところから『ツイン・ピークス』の物語がはじまる。殺人事件を担当することになったFBI捜査官のクーパーを中心に、ツイン・ピークスに住むさまざまな人たちの人間模様が群像劇のスタイルで描かれる。

 


デヴィッド・リンチとマーク・フロスト

 

製作総指揮と脚本をつとめたのはデヴィッド・リンチとマーク・フロストだ。

デヴィッド・リンチは映画監督をメインとして活動する人物だが、その創作は絵画(水彩、板画、リトグラフ)、アニメーション、写真、音楽、脚本、俳優と多岐にわたる。ダークで不条理、難解でシュール・リアリスティックな作風はカルト的な人気を誇り、世界中に熱烈なファンがいる。

マーク・フロストはオカルト映画の脚色や、ミステリー小説を手掛けている人物で、シャーロック・ホームズを生んだコナン・ドイルを愛好しており、その影響はFBI捜査官クーパーにも感じられる。

このような2人が手掛けているのだから、『ツイン・ピークス』は「殺人事件を中心とした群像劇」だけでは終わらない。途中からオカルトやSFにも傾斜していき、劇中の「赤い部屋」が代表するように、謎めいたシンボルが幾重にもでてきて、様々な解釈を視聴者に投げかける。通俗的で大衆的なジャンルに、オカルトやシュールリアリズムを組み合わせる手法は、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』に先駆けているものがある。

 

ツイン・ピークスの赤い部屋
ツイン・ピークスの赤い部屋

さらに『ツイン・ピークス』は、奇妙で個性的な人物ばかり出てくるという点が特徴だ。これはアメリカの小説家、ウィリアム・フォークナーや、シャーウッド・アンダーソンの『ワインズバーグ・オハイオ』の流れを汲んだものである。カセットテープで捜査状況のみならず日常の些細なことまで録音するFBI捜査官。女装癖のあるDEA捜査官。いつも丸太を持ち歩く通称”丸太おばさん”。そして物語が展開するごとに日記や証言でイメージが覆される、殺されたローラ・パーマーその人など。誰が犯人であってもおかしくない、あやしいキャラクターばかり登場する。

物語が展開がするにつれ、これら個性的な人物たちの意外な関係が浮かびあがってくる。この『ツイン・ピークス』における人物の存在感や関係性といった要素は、これから紹介するゲームに共通して強く受け継がれている。

 


『ゼルダの伝説 時のオカリナ』

 

ゲームクリエイターの宮本茂氏が『ゼルダの伝説 時のオカリナ』を創るにあたり、この『ツイン・ピークス』の「奇妙で個性的な人物ばかり出てくる」という要素に影響を受けたと語っている。

でも、『時のオカリナ』をつくっていて気がついたのは、僕はストーリーを語りたいのではなくて、主人公のまわりに出てくる、いろんな人たちや、その関係を描いてみたいと思ったんです。昔、テレビドラマで『ツイン・ピークス』が流行って、それを見たとき、ストーリーがどうのこうの、というよりも、どんな人が出てくるかのほうが、ずっと魅力的だと感じたんです。(中略) ただ単に、怪しくておかしな人がそこにいるだけでも面白いというのはあると思うんです。それに僕自身、「誰々は誰々のいとこ」とか、「昔は親と親がかたきだった」みたいなつながりの設定より、それぞれの存在感のほうに興味があるんです。 (社長が訊く『ゼルダの伝説 時のオカリナ 3D』より 1)

『ツイン・ピークス』が、剣と魔法の世界である『ゼルダの伝説 時のオカリナ』に影響を与えたというのは意外なことだが、一方で『ツイン・ピークス』の「アメリカの田舎町を舞台にした殺人ミステリー」という設定を踏襲した『ミザーナフォールズ』と『レッド シーズ プロファイル』というゲームもあるので、簡単に紹介しよう。

 


『ミザーナフォールズ』

 

『ミザーナフォールズ』はヒューマンが開発した、1998年にプレイステーションで発売されたミステリー・アドベンチャーゲームだ。アメリカの田舎町ミザーナフォールズで起きた、女子高生が行方不明になった事件を独自調査する高校生マシューを主人公として操作する。

 

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このゲームの特長は、3D空間上で作られた田舎町を自由に動きまわれることと、住んでいるキャラクターがライフスタイルにそって動くこと。そしてゲームの時間はリアルタイムで経過することだ。数日以内に事件の謎を解かないとバッドエンドになってしまう点や、ミニゲーム要素など、ようするに1999年の『シェンムー』を先取りしたゲームだった。

3D空間ではないが、箱庭的に再現された町で行動によって時間経過するアドベンチャーゲームは1992年の『同級生』がある。また、リアルタイム性を導入したアドベンチャーゲームは1997年の『ラストエクスプレス』があるが、これらの要素を取り込み、3D空間に落とし込んだことは先駆的であり、再評価されるべきゲームといえるだろう。

 


『レッド シーズ プロファイル』

 

『レッド シーズ プロファイル』はアクセスゲームが開発し、マーベラスが2010年にプレイステーション3、Xbox360で発売したアクション・アドベンチャーゲームだ。プレイヤーはFBI捜査官ヨークとなって、アメリカの田舎町グリーベイルで起きた猟奇連続殺人事件を、プロファイリングを駆使しながら解決に導いていく。こちらも広大なフィールドをもつオープンワールドのゲームで、住民が時間とともに生活をしており、ユーモアや悲哀のあふれる台詞や、個性的なキャラクター同士のやり取りが面白い。なにより本編のストーリーの完成度が高く、途中から目が離せなくなるだろう。ゲームのエロティシズム表現やバイオレンス表現にも一石を投じている。

 

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このゲームは海外のゲーム誌で、最低の評価と最高の評価という両極端に評価が割れたゲームとして有名だ。低い評価は、開発が長引いたためグラフィックが見劣りしてしまった点と、開発途中でアクションを盛り込んだために調整不足になったことに起因している。最高の評価はそれを補って余りあるストーリー、キャラクターの面白さ、世界観の魅力などを評価している。

筆者としては当然、掛け値なしに後者の立場である。たとえば致命的なバグはあるが評価は高い『フォールアウト3』を思い出してほしい。『レッド シーズ プロファイル』のストーリーやキャラクターの面白さを前にすると、およそ欠点などは些細なことなのだ。

筆者はこの記事を書くにあたり『ツイン・ピークス』をすべて観なおしたが、『ツイン・ピークス』と『レッド シーズ プロファイル』は相関関係にあると気づいた。『ツイン・ピークス』を観たことのある人が『レッド シーズ プロファイル』を初めてプレイすると、類似した設定にミスリードされるだろう。『レッド シーズ プロファイル』をプレイ済みの人が『ツイン・ピークス』を観れば、さらに謎が深まるにちがいない。『ツイン・ピークス』を観た人はぜひ『レッド シーズ プロファイル』をプレイしてほしいし、『レッド シーズ プロファイル』をプレイした人は、ぜひ『ツイン・ピークス』を観てほしい。

残念ながら『レッド シーズ プロファイル』は新品・中古価格とも高騰しており、プレイステーション3版は1万円前後、Xbox 360版は5000円前後の値段まであがっており、今からでは手は出しにくい。

しかし安心してほしい。弊誌のトイボックスへのインタビューで明らかになったとおり、『レッド シーズ プロファイル』の完全版といえる『レッド シーズ プロファイル ディレクターズ・カット』の日本版が、PlayStation storeでダウンロード販売されることが決定したようだ。『レッド シーズ プロファイル ディレクターズ・カット』日本版の発売を楽しみに待っていよう。

本稿で紹介した、『ツイン・ピークス』に影響をうけた『ゼルダの伝説 時のオカリナ』『ミザーナフォールズ』『レッド シーズ プロファイル』は、どれもオープンワールド、あるいはそれの先駆けのゲームデザインを採用している。これは興味深いことだ。

小さな田舎町に個性的な人物がいるという『ツイン・ピークス』の特徴が、ゲームクリエイターたちにオープンワールドを発想させるひとつのきっかけになったのかもしれない。

 


どこから観ればいいのか

 

最後に、『ツイン・ピークス』は序章にあたるパイロット版+ファーストシーズン7話、セカンドシーズン22話、前日談の映画からなる構成になっている。これから観る人は、パイロット版から観ればいいのか、ファーストシーズン1話から観ればいいのか、映画版から観ればいいのか、どこから手をつけていいのか迷うかもしれない。

これは製作順に観るのが一番で、まず序章のパイロット版から観るのが正解だ。ファーストシーズン1話から観ても、パイロット版の直後から始まってしまう。パイロット版を観ていなければ、わけがわからなくなってしまう。映画版はTVドラマを観た人を念頭に作られているので、登場人物が把握しきれないおそれがある。そして事件の真相が明らかになってしまうため、TVドラマ版の楽しさが著しく損なわれてしまう。

間違っても映画版から観るのだけはさけてほしい。DVDではパイロット版とファーストシーズン1話は同じディスクに収められているので、迷うことはないはずだ。

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Koji Fukuyama
小学2年生のときに、『ドラゴンクエスト5』に出会い、「ゲームは、ゲーム独自の手法を使って人間のドラマや物語を伝えることができる」ということに衝撃を受けました。そこから一貫して、ストーリーメディアとしてのゲームに注目しています。 同時に中学生から映画を浴びるように見始め、西部劇やホラー、SF映画など、アメリカの古典的なジャンル映画をとくに偏愛しています。 オールタイムベストゲームは『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』。このゲームで感じた面白さや感動を再び体験するために、ずっとゲームを続けています。

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