――僕も一時期MMOをプレイしていましたが、毎日プレイする理由は「友達との交流」でした。

木村氏:
そうなんですよ。オンラインゲームはゲーム内に友達がいないと楽しくないですよね。それが自然なことだと思うんです。僕らは一生懸命ゲームを作ります。でも、主役は友人との会話なんです。卑屈になってるわけじゃないんですけど、友達同士のくだらない会話のおもしろさには、簡単には勝てない。
ソーシャルゲームという名前がついた時に、「そうじゃないな」と思いました。ソーシャルは社会じゃないですか。僕らは社会が嫌いだからオタクやってるんです。コミュニケーションなんですけど、それも苦手なワードな感じがするのでうまい言葉でいえたらいいんですけど。

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――だからモバイルで友達同士がつながるサービスを立ち上げられたんですね。つながりを重視されたと。

木村氏:
最近はアイドルでも、歌やダンスがうまいということよりも、ファンとの交流を大切にしている感じがありますよね。その感覚を大切にしようと思い、立ち上げたポータルサイトを「ゲムトモ」(2006年~2015年)というタイトルにしたんです。「コミュニケーション」がメインコンテンツですよという意味ですね。
当時僕は、「ゲームにチャットがついてるんではなくて、チャットにゲームがついてると思ってくれ」とスタッフに言っていました。チャットメインですよね、パソコンのオンラインゲームでも美しい画面を見ると、最初はすごく感銘を受けたり、プレイするきっかけにはなるんですけど、何十時間もプレイするとチャットしか見なくなる。

 
――お話を聞いていると、技術者的な発想があるようにも思えるのですが、もともとそうなんですか?

木村氏:
ただのオタクです(笑)全部統括していたり、技術の知見があるので、プログラマーと間違われるんですが、プログラムは一行も書けません。どちらかというとデザイナーです。

僕が大学を卒業した1997年、当時はまだインターネットがそれほど普及してなかったんですよ。その時はプレステ・セガサターン・NINTENDO 64の時代で、ワンダースワン以外は全部買いました。子供の時に買ってもらえなかった抑圧が爆発して、バイト代のすべてを注ぎ込むレベルでハマりました。とくに友達の家で夜通し遊ぶのが楽しかったんですよね。自分の家でではないんです。その頃からゲームをコミュニケーションツールとして使うことが面白いんだと思っていました。

 
――僕も昔NINTENDO 64の『007 ゴールデンアイ』を友達と遊ぶのが好きで、それこそ友人とならジャンケンでも楽しいと感じました。

木村氏:
わかります。ちなみにうちのCTOとはネットゲームで知り合いました。当時はIRCとかチャットツールを使ってました。ゲームをやめてもチャットチャンネルは残るので、「『Age of Empire』やろうかー」と言って声をかけたり、サーバーダウンした『Ultima Online』の復旧を、IRCで友達と会話しながら待ったりするのが楽しかったですね。友達がゲームを引退すると、とてつもなくせつないんです。できることなら、ゲームに飽きても友達を残したいなと思いました。それが『ゲムトモ』を作ったきっかけですね。ゲームはどんな名作でも飽きて消耗してしまうものなんですけど、友達は消えないですよね。

 
――ちなみに、全盛期の『ゲムトモ』の会員数はどのくらいでしたか。

木村氏:
300万人ぐらいいました。でも、特に公表していませんでした。休眠ユーザーを含んだ数字なんか発表してもアホらしいと思ったからです。当時の僕は青臭い考えをしていて、かっこ悪いと思ってました。今は言うべきだと思いますね。言わないと自分のゲームに自信がないと思われますから。登録無料のゲームは100人のユーザーが入ってきたら、そのうち90人がやめてしまいます。そういうものだと僕は思っているので、残った10人をどう育てていくかが大切なんです。10人に焦点を当てたかったんです。

 

――ちなみにその10人をどう育てていましたか。

木村氏:
完全にどぶ板営業でした。当時の僕の立場は、プロデューサー、ディレクター、アートディレクター、ライター、メールサポートでした。あとたまに社長業も。

 
――全部じゃないですか(笑)

木村氏:
全部じゃないです。他にもいろいろあるんですよ。でも、人数が少ないので、1人でなんでもやらないと。とくにメールサポートには力を入れていました。「金返せ!」といった暴言が送られてきても、ちゃんと返信していました。このユーザーを絶対自分のファンにしてやろうという意気でしたね。メール友達みたいになるほど、返事を返してました。

 
――今でこそガチャでほしいものが出ないというのはある種文化となっているところもありますが、当時はガチャが外れると怒りのメールなどがきたのでは。

木村氏:
クレームというか、「ガチャ当たらない!確率をいじってるんじゃないのか!」という問い合わせは、絶えずきていました。でも不思議で、そういうメールがくるゲームはヒットします。問い合わせが優しいゲームは、売上は伸びていない印象ですね。売上=人が多い、人が多い=問い合わせが多いという仕組みなので。でもそういったメールがきても「みなさん確率は同じです」って返すしかないんですけどね。僕らはガチャの確率をいじったことは一度もないので。確率をいじったことがないのは、僕らの誇りです。本当にリアルな確率でやっています。でもデジタルですから、それを証明することは難しいですよね。乱数って結果が固まるじゃないですか。「6・6・6・3……6ばっかりじゃないか」みたいな。全員の結果を公開したりして、確率通りであることを見てもらったり、変わった工夫をしたりもしました。

 
――そんな木村社長が業界で一目置く人はいますか。

木村氏:
いないです。というか、正確には「分からない」です。人にあまり会わないので。
ソーシャルゲームって、「なんだかわからないけど儲かってるんだよね」というイメージで作り始める人が多いんです。そして「なんだかわからないけど儲かった」って人もいるんですよね。もうゴールドラッシュみたいな。「あいつが金を掘ったから俺も掘ろう」という感覚で。「なぜ売れるのか分からない」と「運がいいだけ」といっている人もいます。正直な感想だと思います。
映像とかゲームの質とかを比べれば、すごい作品はいくらでもありますからね。そこだけを比べると、「なぜこれがこんなに売れるのだろうか」と感じます。
オンラインゲームは体験の共有に価値があるので、どんな綺麗なグラフィックであろうが音楽であろうが、コミュニケーションのラインが切れてると、そのゲームにお金を払う理由がなくなってしまんだと思います。

 
――一貫した考え方があるように感じます。

木村氏:
ただゲームが好きなんだと思います。ゲームとは正面から向き合いたいし、そこで裏切りたくないという気持ちはあります。

 
――会社理念に「よきユーザーであれ」という言葉がありますが、そういったことも関係していますか。

木村氏:
その言葉にはどちらかというと社内教育的な意味が強いです。舞台でいえば、僕らは役者や小道具など舞台側ですよね。それが続くと、お客さんの目線を忘れてしまいがちなんです。自分がプレイヤーだったときの気持ちを忘れないようにものづくりをしたいなと思ってるんですけど、全員ができるわけではないです。なかには勝手にクリエイター気取りになる人もいます。だから、「よきユーザーであれ」は教育的な意味合いが強いんです。

 

――それほどゲームというものを大切にされているんですね、ちなみに人生のベストゲームを教えてください。

木村氏:
『Ultima』シリーズは全シリーズ遊んで大好きですが、やっぱり『Warcraft III』ですかね。どれか一つに決めることはできないですけど。最初にPCを買ってもらったので、どうしても海外のゲームを遊びがちです。

 
――普段はどういったゲームで遊ばれますか。

木村氏:
寝る前にアドベンチャーゲームを遊びますね。プレイしていると眠れるので。興奮してしまうと寝れなくなってしまうんです。アドベンチャーゲームはおだやかで、小説を読む感覚に近いので。最近では、ポリスノーツを遊び直しました。

 
――今から5年先10年先のゲーム業界はどうなっていると思いますか。

木村氏:
僕にはニンテンドースイッチが大好きな3歳の息子がいます。息子は「カートリッジ」についてしばらく理解できなかったみたいで、スマートフォンやタブレットを先に見ているから、YouTubeやNetflixのようなストリーミングが当然だと思ってるんですよ。そういった流れはおのずとゲーム業界にくるだろうと思います。

 
――ゲームのストリーミングサービスですか。

ただ、現状だとネットワークが弱いんですよね。もっと速くなればストリーミングも広まると思います。僕らは以前Netflixみたいなサービスを想像できなかったですよね、今は端末を変えてもリアルタイムでも見られるんですから、すごい時代になりました。
ネットワークの弱さ以外にも問題はあるかと思います。ゲームを配信するオンラインストアのインターフェイスです。現状だと新作順に上から並ぶ方式がほとんどですよね。これだと面白いゲームがすぐに埋もれていきます。面白いものを作りましょうというのがテーマなのに、それを見つけにくいです。

 
――Steamはそういう部分を常に改善しようとしていますよね。

木村氏:
そうですよね、そうした部分をもっと取り入れてほしいなぁと思います。僕らみたいな会社でも「あそこでプレイヤーに褒められてピックアップしてもらえるゲームを作りたい!」という気持ちにさせてほしいですね。いい意味での戦場にしてほしいんです。現状ではデジタルストアは戦場になりえない。だから、今は物流がメインで、ポップを飾って勝負するという選択肢しかなくなる。新しく参入する人には選択肢がないんですよね。

パッケージ販売のノウハウを持っている会社しかコンシューマーゲームを作れないんじゃないかなと思います。物流や宣伝のノウハウがないと、売ることは難しい。僕らはまずゲームの売り方に悩むんです。でも、セールスに悩むために仕事しているわけではないんですよね。セールスで勝負するなら、ビッグネームな方を引っ張ってこないといけない。ビッグネームは個人的には好きなんですけど、新人や無名の方でもチャレンジできる場がほしいんです。

 
――埋もれてしまったゲームは、セールで勝負ですか。

木村氏:
そうなんです。社長だからそうする理由はわかるんですけど、ゲーム好きですよと言ってる人間としては面白さで勝負させてほしいと思うところはあります。なんかいいアイディアないですかね。

 
――面白いゲームを作ってMetacriticで90といった数字をとれば自然と注目されますが、なかなかむつかしいですよね。

木村氏:
いいゲームなのに発見してもらえないことは多いですね。発見してもらえないってキツいですよね。Steamはレビュー文化などがあって面白いなとは思います。マニアはいい商品かどうかを評価できるんですけど、そうじゃない人は評価できないから、マニアにどれがいい商品なのか教えてほしいんですよ。いいキュレーターがいればいいんですけどね。僕らが20年前に読んでいたファミ通レビューみたいな、辛口コメンテーターがほしいですよね。

 
――デジタルゲームだけでなく、ボードゲームも作られているという話も聞きました。

木村氏:
作っていますし、販売もします。ボードゲームを作っているのには、ふたつ理由があります。ひとつは、僕らが制作しているものはデジタルなものばかりなので、手に持てるものを作りたいという憧れ。もうひとつは、全く新しいタイトルでドイツ年間ゲーム大賞を狙いたいからです。それがどれほど難しいかもわかってないんですけど、やりたいんです。ボードゲーム業界の方に監修してもらっていながら作っています。

ボードゲームが面白いと思っている理由は、単純にゲームとして面白いだけでなく、物としておしゃれですよね。それと、人気があるのに儲かってないですよね。これは面白い取り合わせで、世界中にファンが居るのに儲からない。ざっくり言うと、利益率が低いんです。ヨーロッパではファミリーでボードゲームを遊ぶ文化があって、何百万個も売れるというタイトルがあると聞きます。日本では経済としてそこまで成立していないのに、人気はすごい。

 
――社内イベント「オトナゲナイラボ」でもボードゲームを遊ばれていましたね。

木村氏:
ラゼストのHPを作ってくれた株式会社人間さんが僕を見て、「オトナゲナイ」という感想を持って名前をつけてくれました。今はまだ社内に毛が生えた程度の規模感ですが、どんどん会社の枠組みを壊していって、社外だか社内だかよく分からないラボになったらいいなぁと思っています。

会社内にリラクゼーション空間があって、いろんな人がこの空間を使いたいと仰ってくださったのが、ラボのキッカケなんです。
あと、さっきも言ったように僕らは内向きなんです。外の人と関わっていかないと成長というのはないよねという話をしていた時、僕らが外に出られないなら、来てもらおう!という発想になりました。

格好悪い話をすると、当初のラゼストがある程度の独自性を持っていたにもかかわらず、会社のブランディングをしなければいけないという発想に至るのが遅れすぎたことによる危機感も背景にあるんです。2006年~2009年の頃は東京でも「いまどきブラウザゲームを作ってるへんな会社が大阪にある」と知られていたんですが、某六本木の二社が伸びすぎて、「ゲムトモ」もそうですし僕らの存在もかすれてしまった。だから「発信しなければいけない」という危機感が、後から強くでてきたんでしょうね。遅すぎる(笑)。
まだまだマイペースですが「面白いことをやっているよ」と発信していこうと思います。
もちろん徹底的にオトナゲナイことを貫きます。

 
――では最後に、ラゼストの今後の抱負について聞かせてください。

木村氏:
オリジナルタイトルにこだわっていきたいですね。いろいろやりたいことがあって悩むんですけど、新規IPを生み出したいんです。
モバイルにこだわってる訳ではないので、アナログゲームにコンソールのゲームに、おもしろそうなものには、なんでもチャレンジしていきたいと思います。

 
――ありがとうございました。

 

[写真: Mon Gonzalez]

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