ついに日本上陸・大ヒットRPG『バルダーズ・ゲート3』PS5日本語版先行プレイ感想。翻訳の質もバッチリ、自由とスリルの冒険がそこに


今年もっとも注目を集めたゲームタイトルのひとつであるファンタジーRPG『バルダーズ・ゲート3』の日本語対応PS5版が12月21日、スパイク・チュンソフトより発売される。PC版(英語版)は8月4日に発売され世界的に高い評価を受けており、今回が待望の日本語対応となる。


弊誌は今回メディア向けに開催されたハンズオンイベントに参加し、発売に先駆けて3時間ほど先行プレイする機会をいただいた。本稿ではハンズオンの先行プレイレポートをお届けする。同時に行われた開発者ミニインタビューの内容については、こちらの記事を参照してほしい。

『バルダーズ・ゲート3』(以下、BG3)は、ベルギーのゲームデベロッパーLarian Studiosの新作RPGだ。TRPGである『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(以下、D&D)を踏襲した世界観と、TRPGとコンピューターRPGを見事に融合させたプレイ感が特徴で、Metacriticでは驚異のメタスコア96を叩き出し、Steamのレビューでも42万件のレビュー中96%が好評と海外を中心に非常に高い評価を得ているタイトルとなっている。2023年を代表するゲームのひとつであることは間違いないだろう。

『BG3』を開始するとまず難易度選択がある。難易度はゲーム中にも自由に変更可能のため、ここは特に悩まずに選んでも良い。後述するが、基本的に初見プレイの場合はイージーにあたる「探検家」(Explorer)を選ぶのが良いと思われる。難易度選択が終わるとオープニングムービーだ。「マインド・フレイヤー」と呼ばれる種族(その見た目は多くのゲーマーが「マインドフレイア」と呼ばれて想像する通りのものである)の船に拉致された主人公は、脳内にその幼生を寄生させられてしまう。このマインド・フレイヤーの飛行船から脱出するまでが、『BG3』の序章であり実質的なチュートリアルとなる。


ムービーが終わるとキャラクタークリエイト画面に移る。『BG3』はTRPGベースの作品らしくキャラクリのオプションは非常に豊富だが、ここで重要になってくるのがLarian Studiosの前作『Divinity: Original Sin 2』にも存在した「オリジンキャラクター」と呼ばれるシステムだ。オリジンキャラクターは、それぞれが固有のバックボーンとストーリーを持つ、あらかじめゲームに用意されたキャラクターだ。彼らは名前や外見、クラスなどが(一人を除いて)固定されているので、いつもキャラクリに悩むといったプレイヤーもこのオリジンキャラクターを選ぶことでさくっとプレイを始めることが可能となっている。ただし、このオリジンキャラクターはいわゆる「キャラクリ用のプリセット」とは少し違う。彼らは前述したように全員が『BG3』世界における固有の物語と目的を持っていて、プレイヤーキャラクターとして選ばなかった場合でも本編にNPCとして登場してくる(ダークアージを除く)。そういう点ではプリセットというよりは、「本編ストーリーに深く関わるキャラクターのうち一人を選んでロールプレイできる機能」というほうが近いだろう。『BG3』には7人のオリジンキャラクターが存在するが、その全員がプレイヤーキャラクターとして選択された時用の固有のテキストや選択肢、ストーリーやクエストが豊富に用意されている。


ちなみに今回ハンズオンで筆者が選択したのはオリジンキャラクターの一人であるアスタリオン。自分を200年間奴隷としてこき使った主人への復讐を誓う、ハイ・エルフのヴァンパイア・スポーン(ヴァンパイアの配下)である。アスタリオンは基本紳士的ながらも皮肉好きであり、英語ボイスのアクセントとあわせていかにも英国的なキャラクターと見せかけて、ストーリーを進めるにつれてその享楽的で自己中心的な側面も見え隠れするようになる、二面性が魅力のキャラクターとなっている。

別途インタビューでも触れているように『BG3』の初見プレイは基本的にカスタムキャラクター(オリジンキャラクターではない、プレイヤーが自由に作ったキャラクター)でのプレイが推奨されているようだが、今回は限られた時間でのハンズオンということもあり『BG3』でも屈指の人気を誇るオリジンキャラクターであるアスタリオンでのプレイを選択した。

キャラクリを終えると再びムービーが流れたあと、いよいよゲームプレイがスタート。プレイヤーキャラクターが捕らえられていたマインド・フレイヤーの船内を自由に探索できるようになる。今後の『BG3』のゲームプレイの多くを占める探索パートでは、見下ろし視点でフィールドと自由にインタラクトすることが可能。フィールド上に配置されたアイテムや人物を選択することで会話シーンが始まるが、ここでも実にTRPGらしい演出がふたつ用意されている。

まず1つ目は「ナレーター」の存在だ。『BG3』のストーリーにはナレーターが存在し、目の前の状況やキャラクターの振る舞い、感情などをテキストベースで説明してくれる。小説で言うところの「地の文」であり、TRPGで言うところのゲームマスターのセリフである。『BG3』のテキストは英語で200万語以上とされており、『指輪物語』全巻の3倍を超えるテキスト量となっているが、その理由の一端がこのナレーターの存在であることは間違いないだろう。そして2つ目はもちろんスキルチェックのダイスロール。『BG3』では随所で選択肢が提示されるが、一部の選択肢には成功・失敗が存在し、20面ダイスの結果によってそれが判定される。キャラクターの能力やステータスによってダイスの数字にさらにボーナスが追加されるため、例えばローグであるアスタリオンは宝箱の解錠に大きなボーナスがかかり、失敗しにくくなっている。こちらもTRPG経験者にとっては非常に馴染み深いシステムだろう。


船内の探索を進めると同じくオリジンキャラクターの一人であるギスヤンキ(種族)のレイゼルと行動を共にすることになり、すぐに戦闘のチュートリアルが始まる。『BG3』の戦闘はターン制となっており、ターンが回ってきたキャラクターはそのターン中に「移動」「アクション」「ボーナスアクション」の3つが可能となっている。マップは探索中のフィールドが接敵するとそのまま戦闘にシームレスに突入するようになっていて、感触としては「グリッドのないSRPG」といった感じだ。この「探索しているマップがそのまま戦闘マップにもなる」システムにより、高低差を活かして敵を突き飛ばして落とすことで孤立させたり、地面にぶちまけられた油に着火したりといった環境や地形を利用した戦い方が有効となっている。なお、戦闘のダメージ計算なども内部的にはダイスロールを使っていることが詳細ツールチップを読むと分かるが、実際の戦闘中にそこまで意識することはあまりないだろう。


チュートリアル戦闘で「歩く脳みそ」としか言いようがない謎のクリーチャーを数体倒すと、船内の探索をさらに進めることが可能となり、もうひとりのオリジンキャラクターである「シャドウハート」を救出することができる。RPGらしく3人パーティーまで人数を増やした一行は操舵室を目指し、そこで悪魔の司令官とマインド・フレイヤーの交戦に遭遇。この2体の戦闘の隙間を縫い、最奥の操縦装置にたどり着くのが目的となるイベント戦闘が始まる。このイベント戦闘では特に新しいシステムを覚えるというわけでもなく、先程のチュートリアル戦闘で覚えた通りに雑魚敵を倒しながら奥を目指し、装置にタッチするとクリア。ムービーが流れ、船内から放り出され(実質的に)脱出成功となる。

さて、ここまでが実質チュートリアルとなるプロローグであり、プレイヤーキャラクターが見知らぬ海岸で目を覚ましたところからが本編第一章となる。ここから一気にプレイの自由度が増し、プレイヤーそれぞれの『BG3』が始まるポイントともなる。なので、あえてここからは筆者が実際に行ったプレイ内容の詳細については割愛し、ネタバレを極力避けた形で『BG3』のプレイフィールについて触れていきたいと思う。というのも『BG3』の最大の魅力はその自由度であり、参考知識なしの初見プレイでこそその魅力がもっとも輝くタイトルだと信じているからである。


とはいえ「自由度」というのは最近のゲームを表すにあたってやや頻出すぎるきらいがある単語である。ここで明確にしておきたいのは『BG3』の自由度は、たとえば『ELDEN RING』や『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』に代表されるようなオープンワールドゲームが謳う自由度とは似て非なるものだということだ。

これらのゲームの自由度が広大なフィールドをベースとした、「好きな場所を好きな順番に冒険できる」ゲームプレイ的な自由度であるのに対し、『BG3』の自由度は「登場人物の一人として自由に物語に介入できる」という、まさしくTRPG的な自由度なのだ。そういう意味でも、『BG3』において初見プレイが推奨されるのは、『デトロイト ビカム ヒューマン』のようなタイトルに近しいものがあるとも言えるかもしれない。そしてもちろん、キャラクターのビルドや攻略順などのゲームプレイ的な自由度も、十分以上のものが用意されている。

となるともちろん気になってくるのは翻訳の質だ。『BG3』の魅力はプレイヤーの選択をまんべんなくカバーする膨大なテキストの量と質に依存するところが大きく、こういったゲームにおいて翻訳の質はそのままゲームの質に直結すると言っても過言ではないだろう。そして少なくとも筆者がハンズオンでプレイした3時間分のゲームプレイとテキストにおいては、「おや?」となるような翻訳に遭遇することはなかった。

むしろ原文の英語版では説明無しで登場するゲーム中の造語が日本語版では丁寧に意味の注釈がついていることがあり、(演出と引き換えではあるが)読みやすくなっている部分もあった。もちろん原文の英語を丸暗記した上でハンズオンに臨んだわけではないため細かい部分までは自信がないが、筆者は英語のテキストアドベンチャーゲームもよくプレイしており、ゲームの有志翻訳などにも携わったことがある。露骨に誤訳っぽい表現やテキストにはそれなりに敏感な自信はあるが、ほとんど違和感なくゲームプレイに没頭することが出来たので、翻訳の質はなかなかのものを実現できているように感じられた。ボイスは英語のままなのもあり、ちょっとした字幕付き映画を見ている気分でプレイすることが出来た。


次に触れておきたいのがコントローラーでの操作感だ。『BG3』はもともとコンシューマ版も想定されて開発されたゲームであり、コントローラーサポートも「PC版のUIのままカーソル移動だけコントローラーに対応させている」ようなものではなく、しっかりとしたコントローラー用のネイティブUIが用意されている。移動やカメラ操作はもちろん、戦闘におけるスキル選択も、PC版のホットバーライクなUIからトリガーを押し込みながらスティックで選択するホイール式のUIに変更されていて、直感的な操作が可能となっていた。少なくとも操作性においては、PC版のマウス・キーボードと同等かもしくはそれ以上のものがしっかりと用意されている。


そして最後に言及しておきたいのが、ハンズオンを通じて改めて実感したこのゲームの難易度である。このゲームの難易度は、JRPGに比べると全体的に難易度が高めの傾向があるいわゆる「洋RPG」の中で見ても比較的高いと思われる。戦闘の難易度は絶妙に高めの調整がされており、「役割分担を決めて効率的にキャラクタービルドを進める」「クエストをこなして経験値をもらう」「戦闘で地形や環境、補助行動やグループといったシステムを使いこなす」といったことをしっかり意識しておかないと苦戦すること必至である。

会話シーンの選択肢やスキルチェックの結果次第で突然(不利な状況で)戦闘に入るといった場面もあり、こまめにセーブしないと大きく進捗を戻される危険もある。初回プレイ時は難易度を一番下の「探検家(エクスプローラー)」にしておき、ゲームに慣れてきたと感じたら改めてノーマル難易度に戻した方が楽しみやすいだろうと強く感じた。

以上が今回の先行プレイレポートとなる。『バルダーズ・ゲート3』PS5版は12月21日発売予定。価格は8580円(税込)で、日本語に対応。SteamやGOG.comにて販売されているPC版にも、同時に日本語ローカライズが追加される予定となっている。

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