『アーマード・コア6』先行プレイ感想。“死にゲー”の遺伝子により、『AC』は「シューティング」から「総合戦闘アクション」へリブート

 

直近最後のシリーズ作品『アーマード・コア ヴァーディクトデイ』の発売から約10年。ついに最新のナンバリングタイトルである『ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON(以下、アーマード・コア6)』が発売される。このたびゲーム内のストーリーにおける「最初のチャプター」を先行してプレイする機会に恵まれたため、現時点で判明しているコンテンツの内容を紹介していきたい。なお、本記事ではネタバレを考慮し、文章表現においてストーリーやミッションの具体的な内容は明示しない。こちらが気になる方は動画コンテンツをチェックしてほしい。

『アーマード・コア6』は『アーマード・コアシリーズ』における最新作だ。価格は8,690円(税込)。対応プラットフォームはPC/PlayStation 4/PlayStation 5/Xbox One/Xbox Series X|Sとなっている。PlayStation 4/PlayStation 5版には特典付きのコレクターズエディション、プレミアムコレクターズエディションが別途用意されている。Xbox One/Xbox Series X|SはDL販売のみ。PC版についてはパッケージにゲームDL用のコードが付属する形である。詳しくは公式ホームページを参照してほしい。なお、今回のメディア向け体験会においてはマウスコンピューターがプレイ環境の機材を提供。具体的には、G-Tune FZ-I9G90が提供され、同PC上でゲームが快適に動作していた。



新作は“戦争”をリブートする 


本記事は『アーマード・コア6』の内容について紹介するものだ。それと同時に、『アーマード・コア』シリーズに共通する基本的なゲームシステムや、ゲームフローについて紹介していく。というのも、『アーマード・コア6』はシリーズのリブートを標榜する作品であり、システムベースは歴代作品とほぼ似通っている。またそもそもとして、本シリーズに初挑戦する、本作からシリーズに興味をもったという読者の方もいるだろう。ゆえに、改めてシリーズの概要を確認しながら、本作のゲームシステムについて紹介していこう。

『アーマード・コアシリーズ』シリーズは1997年7月10日にフロム・ソフトウェアより発売された『アーマード・コア』を初作とするロボット3Dアクションゲームのシリーズである。プレイヤーは戦闘用のロボット兵器……アーマード・コアを1から組み上げ、3次元の高速戦闘を戦い抜いていく。シリーズを通してステージ制を採用しており、機体のアセンブル→ミッション攻略→報酬を使って機体を強化→さらなるミッションへ、というゲームフローを繰り返していく。これは『アーマード・コア6』も同様だ。ゲームの攻略においては、ステージ内容に応じた機体のカスタマイズと、登場する敵に対応するためのプレイスキルという、理論と実践の両面が重要となってくる。



メカのカスタマイズ(アセンブル)が本作のコア


『アーマード・コア6』における機体のカスタマイズパーツについては「頭部」「コア(胴体)」「腕部」「脚部」というロボットの身体を構成するものと、移動力に関わる「ブースター」、ロック速度やロック距離のバランスを調整する「F.C.S.(火器管制)」、ブーストなどの使用に必要なEN(エネルギー)の供給源である「ジェネレーター」、そして「アサルトアーマー」のように、アンロックしたコアの拡張機能を表示する「Expantion」という、ロボットの内装を構成するパーツがある。武器については両手と両肩、計4箇所に装備可能だ。さらには本シリーズの特徴として、装着した「脚部」パーツの種類により、機体挙動の方向性がまったく異なってくるという要素がある。というのも、「脚部」はアーマード・コアの見た目はもちろんのこと、積載可能な武装の全重量、機動力、安定性、防御力など、機体のあらゆるステータスに直結する部位になっているからだ。

たとえば、足が太くガッチリしていれば、そのぶん大砲や巨大なミサイルなど大型の武装を装備しても安定して機体を動かすことができ、防御力も高い。逆に細く軽い足を装備すると、武装量と防御力を最小限にすることになり、必然的に機体の重量低下と高速移動が可能になる。また、キャタピラのような脚部を装備すれば、高速機動はできないが、最高の積載量を獲得できる。これによって上半身に重装甲をもつパーツをつけることが可能になるため、砲撃を真正面から受けたとしても平気な防御力を獲得できる。一方でいわゆるチキンレッグのような逆関節の脚部を装備すると、優れたジャンプ力や旋回力、そして低燃費(そしてしばしば打たれ弱さ)を特徴とした機体が出来上がる。アーマード・コアをカスタマイズする上で「まず足から考える」という考え方は定石と言える。

なお今回の試遊では、筆者の好みである「軽量の逆関節」タイプの機体を組み上げて使用した。本作はマップが非常に広く、よって快適な移動を重視したほうが良いと考えたからだ。そして何より、最新のハードウェアで美しく描かれる逆関節はカッコいい。『アーマード・コア6』はシリーズのリブート作品的な立ち位置ということで、マシンのフォルムがどこか初期作のそれに回帰しているように見える。当時作り上げた機体が生まれ変わって目の前に現れたようにも思え、感動した私は試遊用のモニターの前で「おおっ!」と声を上げてしまった。



多彩な武装とシナジーも健在


アーマード・コアの武装については大小さまざまな種類が存在するが、基本的に両腕には銃や近接戦闘用の武器、肩にはミサイルポッドやレールガンなど巨大な武器を装着する傾向にある。また後期『アーマード・コア』シリーズの特徴として、両腕の武器、両肩の武器をそれぞれ同時に扱うことができる。たとえば両腕の銃を同時に撃って瞬間的な火力を高めたり、左肩のミサイルをばら撒きながら右腕の銃を撃つことで、相手の回避を困難にさせるといった使い方もある。この武器同士のシナジーもアセンブルにおいて重要な要素である。
【UPDATE 2023/7/26 22:50】
記事初版にて銃型のEN武器はENを消費するとしておりましたが、誤りでしたので該当記述を削除いたしました。

本作では『アーマード・コアV』より引き続き、一部武器において、発射ボタンを単発で押した場合と長押しした場合で挙動が異なるものがある。これは実弾武器、EN武器に問わない仕様である。これによって左腕のEN武器を溜め撃ちしながら、右腕のライフルを単発で打ち続けるといった「撃ち方の使い分け」も可能となっている。戦術の幅がさらに広がったといえるだろう。ちなみに、近接武器は同じタイプでも、武器によって攻撃モーションが異なるものがあるようだ。本作は後述の理由によって近接武器の価値が非常に大きくなっているため、自分の好みだけでなく敵に合わせて使い分けるのも面白い。

さらに本作では、は細かな機体性能のチューンナップ要素として、「OS TUNING」というものがある。これは「OST CHIP」を消費することにより機体機能の解禁や性能の向上を行うことができる仕組みである。解禁できる機能には、バリアを伴った衝撃波を放つ「アサルトアーマー」をはじめとした「コア拡張機能」と呼ばれるものが確認できた。「OST CHIP」はシリーズ恒例の対NPC戦闘要素である「アリーナ」において、勝利報酬の1つとなっている。

性能に関係のないカスタマイズ要素としては、オリジナルエンブレム作成と機体のカラーリングが用意されている。自分の機体の図面(アセンブル内容)をほかのプレイヤーとシェアすることもできる。「足から全体像を考えて、武器のシナジーを意識する」。『アーマード・コア6』における機体のアセンブルは、他シリーズ作品と同様に考慮すべき点が非常に多い。ゆえにアクションを楽しむ前段階から人を選ぶ内容になっていることは否めない。しかしながら、ミッション内容に頭を捻りつつ、こだわりを隅から隅まで込めた愛機を戦場へ出陣させ、縦横無尽に大地と空を駆け巡る……その行為自体に得難い魅力があることも確かである。また、右も左もわからぬまま初期機体で戦場の厳しさを味わい、共に成長していくのも、一度しか味わえない喜びであることだろう。



「ロボットシューティング」から「ロボット死にゲーアクション」へ


シリーズ作品の流れをそのまま汲み取っている機体のアセンブルやゲームフローに対し、アクション要素については大きく変化が起きている。それは「的を狙って弾を打つ」シューティングアクションゲームから、「戦闘アクションゲーム」への変化である。開発者によると、近年フロム・ソフトウェアより発売された3D戦闘アクションゲームの要素を戦闘に取り入れたそうだ。映像だけを確認してみてもその内容をパッと見で知覚することは難しいが、実際にコントローラーを握ってアーマード・コアを操作してみるとよく分かる。外見を変えずに本質を変える、作品の仕切り直しというコンセプトに相応しい仕様であると言えるだろう。

従来のシリーズ作品では、ミッションを受注後、ステージ内で指定された数や対象の敵を倒すことになるのだが、ステージ内での基本的な立ち回りとして、索敵→接敵→有利な間合いを維持しながら交戦するという形式を採用することが多かった。ざっくり言うと、「敵の射程外を維持しつつ、こちらの攻撃を当て続けることができればステージをクリアできた」のだ。大量の弾薬を備えたマシンガンを両手に装備し、ひたすらに弾を撒きながら後退する戦法、いわゆる“引き撃ち”を採用していたプレイヤーもいることだろう。だが本作では「スタッガー」というシステムを取り入れたことによって、上記の戦法が通用しづらくなっている。

『アーマード・コア6』では相手に攻撃を当てることで、機体の姿勢制御システム(ゲーム内ではゲージとして表示される)に衝撃を与えることができる。ゲージがMaxになると敵に対して「スタッガー」を引き起こし、一定時間、相手の行動を封じることができるだけでなく、相手の被ダメージが上昇する。というよりかは、普段の状態だと敵の体力を削ることが極めて難しい。ゲーム内の演出・フレーバーとしては行動停止(スタッガー)中に攻撃を当てることではじめて「攻撃が直撃した」という扱いになっているようだ。ちなみに、自分の機体もまた、被弾し続けるとスタッガーが発生し、動けなくなり被ダメージが上昇してしまう。この仕様が何を意味するのかというと、普段の立ち回りの大きな変化である。

『アーマード・コア6』には「装甲の薄い部分を攻撃をしなければ、スタッガーを狙ったり、ダメージを与えられない敵」が登場する。また、機体を行動不能にするゲージを溜める力は、今回の試遊体験において近接武器のほうが強かった。さらにいうと、敵もまた距離を詰めてくる相手に対応した反撃用の武装やモーションを備えている。つまり本作では、わざと敵の有効射程に潜り込み、弱点に攻撃を当て行動不能を引き起こし、畳み掛けたあと素早く離脱するといった戦術が必要になる。引くだけではない、進撃する動きをしなければ敵を倒すことが難しくなっているわけだ。意識してスタッガーを引き起こさなければ、武装の火力差とリソース差を通じてジリ貧に陥ってしまうことだろう。

一方、こちらが被弾をし続け行動不能になってしまえば、すなわちそれは死を意味する。無策で雑魚の群れに飛び込み、掃射を浴びて動けなくなった結果、ゲームオーバーになってしまうことはザラである。自分は英雄ではなく一介の傭兵であることを思い出す瞬間である。

ゲームスピードは体感としてそれほど速くはないものの、敵が繰り出す動きを見切り、攻撃を差し込むという、フロム・ソフトウェア産の「死にゲー」をプレイしているときのような思考と判断が求められるようになっている。熟練したプレイヤーならば、敵のモーションに対応することで肉薄し弱点に張り付き続ける、これまでの王道戦術であった、“引き撃ち”とは真逆の戦法を成立させることが可能になるだろう。

こうした「死にやすい」仕様もあり、本作では敵の配置を探るスキャンがワンボタンで可能になっているほか、使用回数が限られている体力回復アイテムがデフォルトで用意されている。試遊時点では3回まで回復することが可能であった。被弾を軽減する防御系の装備も存在し、左肩に装備できるシールド系のパーツは、使用することでシールドを展開。被弾によるダメージとスタッガーの危険を軽減することが可能だ。シールドを展開した直後の1~2秒前後は「イニシャルガード」となり、受けるダメージなどの被害を最小限に抑えることができる。いわゆる「ジャストタイミングによるガード」という仕様である。

リアルタイムで変化する戦況を読み取り、生存に最も適した手段を必死に導き出す。鋼鉄の戦場を蝶のように舞い、好機を捉えた刹那、蜂以上の鋭さで敵を撃滅する。ブースターによる瞬間的な加速を駆使したダイナミズム溢れるアグレッシブな戦闘形態を特徴とする本作は、間違いなく過去シリーズ作品では見られなかった独自の魅力があり、今やフロム・ソフトウェアのお家芸である「死にゲー」の遺伝子を取り込んで生まれたものでもある。



戦いを取り巻く環境も変化


この仕様に合わせて、ステージ上のマップにも変化が発生している。まず最初に言及したいのは、その広さだ。本作のマップはとにかく広く、上下を意識した構造や、盾になる障害物も多い。試遊体験中では、移動を快適にするために存在する、簡単に空中へ上昇可能なエレベーターのような設備を確認できた。今回体験したのは人工物をメインとした地形のビジュアルデザインが施されたマップだったが、自然物を重視したマップもあるという。

プレイヤーはこれらの要素を活用することで、自分なりの攻略ルートをある程度構築することができる。前面に展開する敵部隊に対して真正面からぶつかりにいけばすぐにでも蜂の巣にされてしまうが、フィールドを大回りして背後をとったり、オブジェクトの上から一方的に攻めるといった戦術が成立する。「ログハントプログラム」という、指定の敵を倒すと戦闘ログがたまり、一定値に達すると報酬がもらえるというシステムもある。報酬目当てにターゲットを探して敵陣へ突っ込むという選択もアリというわけだ。

今回体験したミッションの中には巨大兵器破壊のため不安定な足場を行き来する、ほぼアスレチックのような構造を持ったステージも確認でき、「本作はシューティングではなくアクションゲームなのだ」ということを改めて認識することができた。

なお、ミッション中にはチェックポイントが用意されており、ゲームオーバーになったとしてもその時点から復帰することが可能だ。なかにはミッション中に体力と回復アイテムを全回復してくれる場合もある。そして、復帰する際にはアセンブルを組み直すことが可能であることに留意したい。本作ではアセンブルの重要度がプレイスキルと同等に高く、少なくとも適当にマシンを組んで攻略できる内容ではない。たとえば、「実弾よりもEN武器の方が攻撃の通りが良いかもしれない」「直接のダメージより、スタッガー(行動不能)のゲージを溜める性能を高めた方がいい」「そもそも脚部が敵の性質にあっていないかもしれない」など、ゲームオーバーになった際には、一旦冷静になり、マシンの性能から敗北の原因を考えてみるのも肝要である。頭脳と操作の両面で、諦めず試行錯誤を繰り返していけば、必ず勝利の栄光にたどり着けるはずだ。なお、今回試遊したのはソロプレイ用の内容であったが、オンラインマルチプレイの対戦モードの要素については後日改めてアナウンス予定となっている。1対1、および3対3のチーム戦が実装予定ということで、詳細については首を長くして待ちたい。

今回の試遊体験における筆者の総合的なインプレッションとしては、『アーマード・コア6』は間違いなくシリーズのリブート作品であり、同時にナンバリングタイトルとして独自の魅力を備えているという印象を受けた。フロム・ソフトウェア産「死にゲー」のエッセンスを取り込んだ本作の戦闘アクションは、歴代作品と比較すると難易度が上昇しているが、他シリーズにはなかった、よりスリリングでダイナミック、かつ知略を必要とする体験を提供することに成功している。機体のアセンブルに関してはベースはそのままだが、「スタッガー」をはじめとする戦闘の追加要素を通じ、これまで以上にミッション内容に合わせた機体づくりを意識する必要があるという点で、より戦略性が増している。4箇所の武器を同時操作しながら高速移動するという、機械の操縦さながらの複雑な操作体系や、カスタマイズ要素はそのままであるため、いつにも増して本作は人を選ぶ作品になっている。しかし、こだわりを込めて作り上げた相棒とともに、自身のすべてを出し尽くして困難を乗り越えていく快感は、ほかでもない本作でしか味わえない経験であった。製品版の発売が待ち遠しい限りである。

ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON』は8月25日にPC(Steam)/PlayStation 4/PlayStation 5/Xbox One/Xbox Series X|S向けに発売予定だ。

なお、本稿のアセンブル画面および動画はPC版で収録、動画の次の画像は公開済み素材となる。ほかのスクリーンショットについてはPS版の素材となっている。