『スマブラ for 3DS』で起こった新キャラ大量リークは「当時の米任天堂社員の子どもが漏らした」説浮上。9年前の関係者証言により

 

ニンテンドー3DS向けに2014年9月に発売された『大乱闘スマッシュブラザーズ for Nintendo 3DS』では、発売直前に登場キャラなどに関する情報のリークが発生していた。この一件について人気YouTubeチャンネルが独自の調査報告を公開し、注目を集めている。同チャンネルがNintendo of America(以下、NoA)の元社員の証言として伝えるところによると、当時のNoA社員の「子ども」が情報漏えいに関与していたと考えられているそうだ。

『大乱闘スマッシュブラザーズ for Nintendo 3DS』は2014年9月に発売された対戦アクションゲームだ。ゲッコウガやパルテナ、シュルク、クッパJr.などがプレイアブルキャラとして参戦。オフラインまたはオンライン対戦モードのほか、ひとり用のシンプルモードやオールスターモードなどさまざまなモードが用意されていた。


今回人気YouTubeチャンネルDidYouKnowGamingが、著名作品にまつわる情報リークについての独自調査結果をまとめた約2時間にわたる動画を投稿。動画内では『大乱闘スマッシュブラザーズ for Nintendo 3DS』にて発売前に発生した大規模リーク問題についても扱われており、注目を集めている。


発売数週間前に起こった大規模リーク

動画では、『大乱闘スマッシュブラザーズ for Nintendo 3DS』発売直前の2014年8月に発生したリークについて報告されている。動画によると当時海外フォーラム4chan上で、開発中のゲーム画面を撮影したと見られるさまざまなリーク写真が投じられていたという。こうした写真には未発表の参戦キャラが映り込んでいたものの、加工されたフェイク画像ではないかといった疑念もフォーラム内のユーザー間に生じていたそうだ。

そうしたなかで2014年8月25日にYouTube上に投稿された動画がさらなる波紋を広げることになる。本作のプレイ画面を撮影した動画であり、先んじてリークされていたクッパJr.などが戦いを繰り広げる内容であった。この動画はNoAの申し立てによりYouTube上からすぐさま削除。さらにその後公開された公式動画にて、ユーザーたちはシュルクのアニメーションが削除されたリーク動画と一致することを確認し、動画やそれ以前の画像などが“本物の情報リーク”であると確信を得ることになったようだ。合計8人の未発表キャラとステージなどの情報が漏えいする結果となった。


誰が漏えいさせたのか

なお画像や動画においてはプレイヤー名が「ESRB0083」と表示されていた。このことから、当時のユーザー間ではレーティング機関のESRBが漏えい元ではないかと考えられていたようである。

Image Credit: DidYouKnowGaming on YouTube

ESRBはアメリカおよびカナダにおけるゲームのレーティング機関。審査においては開発元・販売元が用意した映像が用いられるほか、テストプレイも実施されるという。先述の「ESRB0083」とのプレイヤー名もあり、審査プロセスにおいてESRB側からゲームプレイ映像が漏えいしたとの憶測を呼んでいたようだ。

しかしDidYouKnowGamingのLiam Robertson氏が取材の結果として伝えるところによれば、“犯人”はESRBスタッフではないそうだ。Liam氏はまずリークが発生した当時在籍していた元ESRBスタッフらに話を訊いたという。そのなかには任天堂のゲームを担当していたスタッフも含まれていたといい、彼らは「ESRB側から情報が漏れた可能性はない」と主張したそうだ。

元ESRBスタッフらは、ESRBでは未発表のゲームのコンテンツはすべて厳重なセキュリティのもとで視聴あるいはテストプレイされると証言したとのこと。視聴またはテストプレイがおこなわれる設備では、録画や通話ができる機器が持ち込みできず、また常にセキュリティによって監視されており機密の持ち出しも不可能だそうだ。さらに場合によっては、パブリッシャー側からスタッフを派遣して、機密を厳重に梱包しつつ輸送する場合もあるという。リークされた動画が撮影できるような環境ではなかったと見られる。


犯人は子ども説

そしてLiam氏は、NoAにおいて本作『大乱闘スマッシュブラザーズ for Nintendo 3DS』の開発に携わった元社員らにも取材を実施したとしている。元社員らの証言によると、上述の情報の漏えい元は、当時の同社のローカライズおよびESRBコンプライアンス部門の社員の「子ども」だと考えられているそうだ。証言によると、リーク動画ではニンテンドー3DSではなく、開発ツールである「PARTNER-CTR」でのプレイ映像が撮影されていたとのこと。とある元NoA社員の子どもが同デバイスを勝手に使って携帯電話でプレイ動画などを撮影したとの説が唱えられている。

Image Credit: DidYouKnowGaming on YouTube
*開発ツール「PARTNER-CTR」とされる映像内のデバイス。上下画面の継ぎ目がないことから、ニンテンドー3DS実機ではなくモニターに出力されているような様子がわかる

一方で撮影された写真や動画は、直接その子どもが4chanに投稿したわけではないと見られるそうだ。動画によると、元社員の子どもは、当初はオンライン上の少人数の仲間うちでこれらの情報を共有していたとされている。しかし次第に情報は拡散され、結果的に4chanに投じられることになったようである。Liam氏の調査によれば、NoAはすぐに情報の流出元を突き止め、即座に関係した社員を解雇したという。動画でのプレイヤー名に「ESRB0083」との管理番号が割り当てられていることもあり、誰が流出に関与したかの調査は容易だったのかもしれない。

動画の内容はLiam氏による独自調査ながら、約9年前に生じた情報リークの原因に関して今になって語られた点は興味深い。国内外で大きな注目を集める『大乱闘スマッシュブラザーズ』の新作ということもあり、当初は“当時の社員の子ども”だけが握っていたリーク情報が次々と伝播してしまったかたちと見られる。

開発元・販売元にとって情報のリークは悩みの種といえる。小売店の従業員や、場合によってはスタッフ自身が漏えいさせてしまうこともあるだろう。またハッキングやランサムウェアによる攻撃が原因になる例もしばしば見られる。各メーカーでさまざまなケースを想定して情報の管理がおこなわれていると見られ、今回の報告されたような従業員の子どもや家族に向けた情報漏えい対策も当時と比べて業界水準はさらに強化されているかもしれない。