Nintendo Switch『スイカゲーム』の“ニセモノ被害”が深刻化。公式サイトより目立ってしまう厄介すぎるニセモノゲーム


突如として人気が爆発し、2023年最大級のダークホースとなった『スイカゲーム』。同作のニセモノゲームの増殖が悪化しているようだ。本家が対応に苦慮していることがうかがえる。ゲーム開発者Yanase氏などが伝えている。

『スイカゲーム』は、箱にフルーツを投入しながらスコアを稼ぐパズルゲームだ。現在はAladdin Xがパブリッシャーを担当している。対応プラットフォームはAladdin X/Nintendo Switch。本作では同じフルーツ同士がくっつくと、ひと回り大きな別のフルーツに進化することが特徴で、もっとも小さなさくらんぼから、もっとも大きなスイカまで11種類のフルーツが存在。箱からフルーツが溢れ出てしまうとゲーム終了となるため、無駄のないようにうまくくっつけながらハイスコアを目指すのだ。


本作は2021年12月にリリースされた作品ながら、今年9月に入りインフルエンサーを中心に人気が爆発(関連記事)。300万DLを達成するなど、大人気タイトルの仲間入りを果たした。一方で、同作の人気にともないニセモノゲームが急増。以前公式からも注意喚起があったものの、悪化しているようだ。

その状態を顕著に示すのがApp Storeの無料ダウンロードランキング。iPad向けランキングはトップ5中4、iPhone向けランキングではトップ5中3が『スイカゲーム』のニセモノゲームなのだ。『スイカゲーム』はシンプルなルールであり、プログラム知識があれば“ざっくり再現”するとなれば容易。それゆえにフォロワーゲームが続々と生まれつつある。また、同作のゲームプレイには過去のパズルゲーム(合成大西瓜含め)からの影響もうかがえる。それらについての是非を問う議論もあるだろう。しかしニセモノゲームの論点は別にある。それらの問題点は「スイカゲーム」をそのまま名乗ったり、アセットの盗用らしき行為が見られることだ。


App Store無料ダウンロードランキングに入ったゲームはそれぞれ「スイカゲーム – パズルチャレンジ3D」「スイカゲーム ジ 楽しい パズル ゲーム」「スイカゲーム3D – スイカゲーム」と、明確にスイカゲームを名乗っている。Aladdin Xのスタジオ以外が「スイカゲーム」の名を冠したゲームをリリースするのは道義にもとり、アセットの盗用などは著作権侵害である(なお、BGMは楽曲素材サイトの有料BGM)。そもそも消費者を騙そうとする行為であり、似ているとかいう話ではないのである。
【UPDATE 2023/10/30 18:05】
BGMは音楽サイトで販売されているものであることを追記

では実際これらのゲームはどのような内容なのか。ハイスコア3500点を超えるためそこそこ『スイカゲーム』をやりこんでいる筆者が検証してみた。ニセモノゲームを10作品ほどそれぞれ“スイカ”相当を出せるまでプレイした。

一番そのままなのは、ダウンロードランキングトップのゲームであった。BGMからオリジナル版と同じで、アセットはチェリーを除いてほぼ一緒。果物の輪郭には白い余白が残っており、“切り取った感”を思わせる。ゲームの挙動はオリジナル版とは異なるが、そもそも縦幅と横幅がオリジナル版と違って大きいことから、ゲームテンポ的な冗長さを感じた。クオリティも低いのだが、ニセモノゲームとして一番オリジナルに近いことからDLされやすいのかもしれない。悪質である。


App Store無料ダウンロードランキング2位のゲームは、「スイカゲーム」を名乗っているものの、果物のデザインは結構違う。果物の大きさも違うので、プレイフィールは本家とも違う。かなり物理演算の挙動が暴れ気味。これもプレイエリアが横に広すぎ、縦に長過ぎてオリジナル版と比べると冗長に感じた。


App Store無料ダウンロードランキング4位のゲームは、ストア上ではスイカゲームを装っているが、実際に筆者が起動してみると「Animal Merge」なる謎のゲームが立ち上がった。ゲーム内容を確かめたが、たしかにニセモノゲームであった。ゲームとしては、ルールは『スイカゲーム』なのだが、デザインはまるっきり違う。BGMも異なる。『スイカゲーム』の名を冠さなければ普通のゲームなのだが、それはそれで認知されないのだろう。ただしこのゲームのアセットなどもオリジナルのものであるかは疑わしい。


これらの3ゲームには、共通点がある。開発者を辿っていくと個人開発者であること、コンタクト先としてはBloggerのブログページを用意していること。LinkedInを見るとそれぞれの開発者は名のある会社に勤めていた/勤めているようだが、手口が似ていることから、それらの名前の人物が“ニセスイカゲーム”を実際に作っているかは不明だ。どれもゲーム内広告を採用しており、かなり高い頻度で流れる。そうした収益を目当てにしているのだろう(一部アプリはゲーム内広告削除のオプションを300円で販売)。


一方で、もっとも深刻と考えられるのは、検索エンジンで「スイカゲーム」を調べると、公式サイトより上にニセモノブラウザゲームが表示されることだ。ゲーム内容は上に似ており、サイトデザインは『スイカゲーム』っぽさがあるものの挙動の違うゲームを遊ばされる。サイトを見ると、「スイカのゲーム」「Aladdin Xとは無関係」といった記載はあるものの、Googleで「スイカゲーム」あるいは「Suika Game」と検索するとこのニセモノゲームにたどり着く。英語版サイトも存在しており、国内外のスイカゲーム検索者がこのサイトにランディングするかたち。こちらも広告収益目当てと考えられ、かなり悪質だ。


『スイカゲーム』をそれなりにやりこんだ筆者としては、どのゲームもオリジナル版のもつ絶妙な冗長さや適度にラフな挙動を再現できておらず、かわりにはなりえない。それでも“それっぽいガワ”を着せれば、それっぽくはなる。そもそもNintendo Switchをもっていなければオリジナル版の面白さもわからない。本家がわからなければニセモノかをはっきり判断もできないだろう。

そういう意味では、早期にニセモノの注意喚起をしたことはAladdin Xのフットワークの軽さがうかがえる。しかしながら、日本やアメリカの商標をデータベースサイトで検索した限りでは、現時点ではまだ「スイカゲーム」「Suika Game」に関する商標などはあがってきていない。なので、商標を取得し商標権を盾にする段階に至れていない。商標登録には時間もかかる。一昨年12月に発売したゲームが今年9月に突如として売れだした状況であれば、そうなるのも無理はない。法的な準備はいままさに進められているのだろう。


カボチャゲームアップデートなどもあり、単なるブームに終わらずいちゲームジャンルとして人気が出ている『スイカゲーム』。Aladdin Xが、今後どのような手を打つのか気になるところだ。『スイカゲーム』は、Aladdin X(プロジェクター)/Nintendo Switch向けに発売中。ニセモノゲームは多く出ているが、オリジナル版でしか味わえない体験があるので、ぜひオリジナル版を遊んでほしい。