中国で「NVIDIA RTX 4090」搭載グラボの価格が高騰しているとの報道。米国による半導体輸出規制強化の発表を受けて


米国政府は10月17日、中国を念頭にした半導体関連製品の輸出管理規則の改訂を暫定的に公表した。従来よりも規制対象が拡大され、一部のゲーミング向けハイエンドGPUも対象になるという。これを受けて、中国国内市場では早くも「NVIDIA RTX 4090」を搭載するグラフィックボードの市場価格が高騰していることが現地メディア晚点(LatePost)により報じられている。


米国の商務省産業安全保障局(BIS)は昨年10月、中国を念頭にした半導体関連製品の輸出管理規則を強化。特定の先端半導体やそれらを含むコンピューター関連の汎用品が、規制品目として追加されていた。そして今年10月17日、BISは輸出管理規則の一部を改訂することを暫定的に公表した。改訂には、昨年の輸出規制発行後に出現した“抜け道”を塞ぐ狙いがあるという。

BISが昨年発表した中国を念頭にした半導体関連製品の輸出管理規則の強化は、米国の国家安全保障などが目的とされる。背景としては、規則の強化によって規制品目となった先端半導体などは、大量破壊兵器を含む高度な軍事システムの製造、あるいは人権侵害などに利用されるといったBISの見解が説明されていた。

なお昨年の規制発効後、米国に拠点を置く半導体メーカーNVIDIAは規制に該当する製品よりも性能を落とした新たな高性能GPU「A800」などを開発。中国向けに輸出していたとされている(Bloomberg)。先日公表された輸出管理規則の一部改訂では、そうした“抜け道”が対処されることになるようだ。さらには中国のほか、米国が武器輸出を禁じている21か国が、先端半導体とその製造装置の輸出規制対象となった。規制品目が第三国を迂回して輸入されるリスクへの対処もおこなわれるかたちだ。なお改訂は暫定的に官報公示されている段階であり、公示後30日間を経て有効となるほか、60日間のパブリックコメント募集期間が設けられる。


これを受けてNVIDIAが米国証券取引委員会に提出した報告書によると、輸出管理規則の一部改訂後にはNVIDIA製品のうち先述のA800を含む複数の高性能GPUが規制対象となることが伝えられている。そして同社が挙げた製品の中には、ゲーミング向けGPUである「RTX 4090」も含まれている。

これは今回のBIS側輸出管理規則一部改訂によって、従来の輸出管理規則では基本的に規制対象とならなかったゲーミング向けGPUにも規制範囲が拡大されるためと見られる。先述のBISの官報公示によれば「一部ハイエンドゲーミングチップに対する届け出義務を設ける(Creates a notification requirement for a small number of high-end gaming chips)」とされており、「RTX 4090」は届け出義務が必要な輸出規制対象となったかたちだろう。

そして中国のビジネスメディア晚点(LatePost)が10月18日に、業界・小売り関係者から得た情報として伝えたところによると、輸出管理規則の一部改訂の公表は早くも現地の市場に影響を及ぼしているようだ。同誌によると(小売店など)法人顧客向け市場において、RTX 4090を搭載したグラフィックボードは、24時間以内に20%から35%のスポット価格上昇が見られたという。従来は1万3000元から1万4000元(約26万6000円~28万6000円)で取引されていたのに対し、一部では2万1000元(約43万円)まで値を吊り上げる卸売業者もいたとのこと。7000元から8000元(約14万~16万円)の上昇幅となっており、小売価格ではさらに高額で取引されることになるだろう。また手元に在庫のない卸売業者も発生しているそうで、今後品薄に向かっていくかもしれない。


なおNVIDIA広報担当者は米放送局CNBCの取材に対し、同社が提供している多岐にわたる製品はすべての規制を遵守していると回答したとのこと。また「当社製品に対する世界的な需要を考慮すれば業績に短期的に大きな影響が出るとは考えていない」との見解を述べたという。

そのほかReutersは今回の輸出管理規則の改訂について、米国政府の官報公示に先がけて報じていた。そして同誌は10月16日におこなわれた中国外務省の定例記者会見において、本件について中国側の対応を訊いている。これに対し中国の毛寧報道官は「米国は貿易や技術に関して政治的・軍事的にとらえることをやめる必要がある」との見解を述べ、世界の産業やサプライチェーンを不安定にしていると批判。今後も「米国の動向を注視し、我々の権利と利益を守っていく」といった立場を示していたとのこと。

中国を念頭にした半導体関連製品の輸出規制をさらに強化する今回の改訂。本稿執筆時点では暫定的な官報公示段階ながら、すでに中国国内市場では発表による影響もうかがえるという。今後の正式発表や発効後の動向も注目される。