「ゲームエンジンをUnreal Engineに“切り替える”スタジオが増えている」との主張に、ある開発者が反論。UEと内製ゲームエンジン二刀流も普通にある

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ある技術系メディア関係者が、ゲームエンジンをUnreal Engineに“切り替えた”スタジオが増えていると主張し、注目を集めている。一方でスタジオによってはUnreal Engineでの開発に専念するわけではなく、並行して内製エンジンでの開発を継続しているという例も複数見られる。

『Star Wars ジェダイ:サバイバー』


Unreal Engine(以下、UE)はEpic Gamesが提供するゲームエンジンだ。PC/PS/Xbox/Nintendo Switchからモバイルに至るまでさまざまなプラットフォームに対応しており、インディー・大手メーカー問わず数多くのゲームがUEにて制作されている。2020年からは第五世代となるUE5が公開され、ライティングなどの新機能が実装された。

UEを使用しているスタジオが増加していると主張しているのは、ゲームの技術解析に定評のあるメディアDigital FoundryのAlexander Battaglia氏だ。同氏は、ゲームエンジンをUEに“切り替えた(switching)”とするスタジオを列挙。ユーザーにほかにも同様のスタジオがないかを募っている。


Battaglia氏の投稿した“UEに切り替えたスタジオリスト”には、『ウィッチャー』シリーズの開発元CD PROJEKT REDや、『トゥームレイダー』シリーズの開発元Crystal Dynamicsなどが含まれている。両スタジオ共に、開発中の新作にはUE5が用いられていることが発表されている(関連記事1関連記事2)。公式発表されている情報などをもとにリストアップしたかたちだろう。

Battaglia氏のツイートには、ユーザーからそのほかUEが使われていると見られるスタジオが寄せられたほか、業界人も反応。Unknown World’s Entertainment のリードアーティストLiam Tart氏が、『サブノーティカ』の次回作ではUnityからUE5にゲームエンジンを切り替えたと伝えている。そうした声を受けて、Battaglia氏はリストを更新。さらにUEを使用しているスタジオがないかユーザーに問いかけている。現在リストには18スタジオが名を連ねており、リプライではユーザーらがさらにUEを用いているスタジオを挙げている。


UEを使用しているスタジオの増加を示すBattaglia氏の投稿。これを受けて、各スタジオが開発に用いるエンジンが画一化されているのではないか、といった懸念を示す反応も見られる。ゲームエンジンは物理演算やグラフィック、光源処理などゲームの動作における主要な処理を司っている。そのためエンジンによって、ビジュアルや手触りの特徴はあるだろう。同じエンジンで開発されたゲームが増加すると、雰囲気の似たゲームが増えていく可能性はある。

一方で内製のゲームエンジンを利用する場合に、エンジンの開発には手間もお金もかかる。また世代にあわせたクオリティのゲームを作るために、エンジン自体をアップデートしていく必要もあるだろう。さらに各社の内製エンジンは、基本的にはソースコードは非公開。初めて内製エンジンに触れる開発者は、まずそのエンジンでの開発ノウハウを学ぶ必要がありそうだ。

その点UEは無料での利用も可能で、ソースコードも公開されているゲームエンジン。エンジンの開発リソースが必要なく、UEでの開発経験のある開発者であればノウハウを活かせる点はスタジオにとって魅力となりそうだ。また、幅広いプラットフォームにも対応しているため、各プラットフォームへの最適化も比較的容易だろう。

『龍が如く 維新! 極』


つまり扱いやすさや汎用性はUEの強みであり、採用するスタジオが増えている一因と見られる。しかしながら、特定の作品にUEを使っているからといって、スタジオが“UE専門”になるとは限らない点に留意したい。まず、Battaglia氏が上記リストに挙げている龍が如くスタジオは、『龍が如く 維新! 極』(以下、維新!極)にてUE4で『龍が如く 維新!』をフルリメイクした。一方で最新作『龍が如く7外伝 名を消した男』『龍が如く8』では、内製のドラゴンエンジンが採用されているという。

またBattaglia氏によるリストにはRespawn Entertainment(以下、Respawn)も挙げられているものの、同スタジオの開発者Michael Kalas氏は「正確ではない」と反論している。同氏はスタジオにてリードプリンシパル・ソフトウェアエンジニアを務める人物だ。同氏によるとRespawnでも複数のエンジンが採用されているとのこと。特に『Titanfall』シリーズや『Apex Legends』にはValveのSource Engineが元に独自開発されたエンジンが使用されており、これが変更されることはないとしている。


一方でスタジオ最新作である『Star Wars ジェダイ:サバイバー』ではUE4が用いられていた。これについてKalas氏は、開発チームが最適なエンジンを選んだ結果であると説明。スタジオ全体がゲームエンジンをUEに切り替える、といった方針はないわけだ。ようするに、Battaglia氏はUEに“切り替えた”スタジオとしてリストを作成しているものの、中にはUEと内製エンジンを両方採用しているスタジオもあるわけだ。

そのほか任天堂も『ピクミン4』などではUEが用いられている一方、ほかの多くのコンソール向け作品では内製エンジンが採用されていると見られる。またバンダイナムコスタジオは『エースコンバット7 スカイズ・アンノウン』や『鉄拳』シリーズなどでUEを用いてきたものの、現在内製エンジンを開発中であることを発表している(関連記事)。

以上のように、UEを用いつつ内製エンジンの開発・運用を並行しておこなう、いわば二刀流の開発体制をとるスタジオは複数見られる。内製エンジンを差し置いてUEを用いる理由として、たとえば龍が如くスタジオ代表の横山昌義氏はファミ通.comのインタビューにて、『維新!極』にてUE4を用いたことのメリットを言及。UE4での日中の自然光表現に開発者が触発されて、新作の開発に活かされていることを明かしている。また弊誌のインタビューにて同氏はUE4が採用された理由が、光の表現の良さにあったと述べている(関連記事)。

『龍が如く 維新! 極』


そのほかさまざまな理由が考えられるものの、内製エンジンとは別にUEが採用される理由はスタジオによって異なるだろう。作品に求められる表現力、ノウハウの獲得、開発やスタジオ運営におけるリスクの分散など、スタジオによってまちまちといえそうだ。また逆に、一部スタジオがUEに完全移行しない背景には、開発に関わる技術を根幹からすべてコントロールできるといった内製エンジンならではの強みもありそうだ。

いずれにせよ、内製エンジンあるいはUE以外のエンジンを用いての開発を続けるスタジオは今後も引き続き一定数存在し続けると見られる。もっといえば、各社のモバイルゲームタイトルとなると、Unity製のゲームがぐっと多くなる。UEに限らず、状況に応じて適したゲームエンジンを選ぶというのが、大手の主な動きである。ひとつのエンジンに絞ると、外部エンジンの動向にプロジェクトが依存するリスクもある。そういう意味でも特定の外部エンジンに一本化するというのは、あまり現実的ではなさそうだ。

ただBattaglia氏の指摘するように、UEで開発されることが発表された大規模開発の新作が増えているのも確か。また昨今では小規模スタジオや個人開発者もUEを用いて、リッチな表現のゲームを制作している(関連記事1関連記事2関連記事3)。動画コンテンツ制作などにも用いられており、扱いやすさを強みとするUEも引き続き幅広い分野に活用されていくことだろう。

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