1981年に第1作がリリースされ、今でも「コンピューターRPGの原点」の1つとして数えられる『ウィザードリィ』。その最新作『Wizardry Variants Daphne(ウィザードリィ ヴァリアンツ ダフネ)』が10月にリリースされる。対応プラットフォームはiOS/Android。PC(Steam)版も別途準備中とのこと。基本プレイ無料形式で配信される。
同作リリースも含め『ウィザードリィ』IPが盛り上がりつつある。しかし結局どのようなシリーズか知らない人もいるだろう。それはもったいない。『ウィザードリィ』シリーズは、他人のエピソードを聞くだけでも面白いゲームなのだ。またそうした遺伝子は新作である『ウィズダフネ』にも継承されている。
ということで、編集部の『ウィザードリィ』無知スタッフが、シリーズのハードコアさを古参ファンに聞くという対談を実施。『ウィザードリィ』をはじめとする3DダンジョンRPGに詳しいゲームライターのずんこ。氏、そして『ウィザードリィ』への愛が詰まった同人誌「ウィザードリィの深淵」シリーズを頒布しているサークル・ゆずもデザインの代表Pin氏をお招きし、『ウィザードリィ』シリーズのハードコアさを深堀りする対談を行った。ちなみに『ウィズダフネ』については、別記事でより深く掘り下げているので、興味がある人はそちらを読んでほしい。
――自分は『ウィザードリィ』と言えば昔から「ハードコア」という認識があります。ただ世代的にプレイしたことがない人も出てきています。古参Wizファンおふたりに、そういったエピソードを教えていただけますと幸いです。
Pin :
頑張ります、よろしくお願いします。
ずんこ。 :
よろしくお願いします。
シリーズ初期から尖っている
――『ウィザードリィ』といえば、「死に方のバリエーションが多い」と聞きます。本当ですか?
Pin:
本当です。普通ロールプレイングゲームで死ぬとなれば、戦闘に負けて死亡で全員負けたら全滅、ゴールド半分でなぜか教会に戻されるというのが、普通なパターンですよね。
――はい。違うんですか?
Pin:
でも初期『ウィザードリィ』はそうじゃないんです 。HPが0になって死んでしまうのは通常のRPGと同様ですが、そこからの蘇生が必ずしも成功するとは限らなくて、失敗すると「灰」になってしまうんです。さらにそこから蘇生のチャンスもあるんですが、これも失敗してしまうと「ロスト」……すなわち、キャラクターが失われてしまうんですね。
――せっかく作ったキャラクターがいなくなってしまう!それはつらい……。
Pin:
そして、戦闘でやられてしまう以外にもたくさんの死に様がある。たとえば有名なところで「いしのなかにいる」がありますね。
――「いしのなかにいる 」!聞いたことがあるセリフだ! セリフとして知っている人は多いと思うんですが、どういう話なんですか?
Pin:
ワープすると壁に埋まって全滅……、という恐ろしい死亡パターンです。宝箱を開けた時にテレポーター(同じ階層のランダムな位置に強制的に移動させられてしまう)の罠に引っかかってしまって、それが運悪いと通路とか部屋でなく石のエリアというパターンがあります。で、そこの中に運悪く飛ばされてしまったらもう石の中になります。ちなみに石の中に入ってしまった場合の扱いはゲームによって異なりますが、基本的に全員ロストです。
――怖っ。
Pin:
それだけじゃないですよ。 MALOR(マロール・マラー)という自分で座標を選んでテレポートする呪文があるんですが、その座標指定に失敗して石の中に入ってしまうと、もう即座にゲームオーバーになるというえぐい死に方があります。
――……恐ろしい。初めて「いしのなかにいた」時 、どう思いましたか。
Pin:
「……信じられへん」と。
ずんこ。:
(笑)
Pin:
怖いですよね、壁の中に人がいきなり埋まってる状態。
ずんこ。:
『ウィザードリィ』のテレポート魔法はえげつないですよね。ある意味シリーズの特性として一番覚えやすいエピソードかもしれません。
――『ウィザードリィ』の移動魔法、めっちゃ怖いですね。
ずんこ。:
脱出魔法のLOKTOFAIT(ロクトフェイト)も怖いですよ。 死にこそしないものの地上に緊急脱出する代わりに身ぐるみ全部はがされますし(笑)
―― 『ウィザードリィ』、やはり怖いゲームだ。 移動魔法以外で衝撃的だった仕様やシステムは初期シリーズでありますか?
Pin:
やっぱりレベルを下げられる攻撃「エナジードレイン」ですかね。戦って毒を食らうとか、石にされるというのは、状態異常としては分かるんです。けど、食らうとレベルが下がるという。
――レ、レベルが下がるんですか?さすがに勝ったらレベル返してくれますよね?
Pin:
返してくれないですよ。そんな優しいゲームじゃないので(笑)「こっちの時間をごっそり奪ってくる」という嫌がらせ、初めて食らった時は唖然とするしかなかったです。何をしてくれているんだ、と。
――やばすぎません?
Pin:
(笑)ちなみに、この間出た初代リメイク『Wizardry: Proving Grounds of the Mad Overlord』ではレベルドレインで失った経験値が寺院で回復できるようになっていました。
――ほっ。
ずんこ。:
『Wizardry: Proving Grounds of the Mad Overlord』では、寺院で回復してもらうと経験値が再度元通りになってレベルアップもできるし、さらにリメイク版ではレベルドレイン・レベルアップで能力値が下がらない設定にもできます。ほぼデメリットなしで能力アップできるようになったこともあり、レベルドレインがむしろボーナスになったという見方もありますね。
――優しくなったリマスターでそこまで機能が変わるのは面白いですね。
Pin:
正直ちょっとさみしくもありますけどね(笑)あとはやっぱり、Wizの死に方と言えば「くびをはねられた!」を挙げないわけにはいかないでしょう(笑)
――「くびをはねられた!」これも聞いたことがあります。
Pin:
敵の忍者や、迷宮に闊歩するウサギ(ボーパルバニー)の直接攻撃を受けると、突然このメッセージが出て残りHPに関わらず死んでしまうという、恐ろしい特殊能力です。
編集部注記:
ちなみに新作『ウィズダフネ』にはボーパルバニーは出てくる。それ以外にも「くびをはねられた!」の特殊能力を持つ敵も健在。しかも首を落とされるカメラワークの演出付きである。
異常難易度極まる『ウィザードリィ4』
ずんこ。:
自分は、『ウィザードリィ4』の異常な難易度について話したいです。
――教えてください!
ずんこ。:
『ウィザードリィ4』では、初代『ウィザードリィ』のラスボスのワードナ様が主人公なんです。ラスボスが主人公になるパターンですね。
――過去作ラスボスが主人公!ワクワク。
ずんこ。:
で、もう1回世界制覇を目指して地上を目指すんですが、ワードナ様が弱すぎて話にならない。復活直後はHPが1しかない。
Pin:
あんなに強かったワードナ様が。
――弱っ。
ずんこ。:
一応、ダンジョンに点在する魔法陣に入ると、昔の力をちょっとだけ取り戻すことができます。
――おお。
ずんこ。:
手下にできるモンスターを召喚できるけれど、召喚できるモンスターが多すぎて何を召喚していいのかわからない。適当にモンスターを召喚しても、部屋に出口がなくて出られない。「あれ?これどうしたらいいんだ?」と。
――理不尽な難しさとはまた別の軸のハードコアさだ!
ずんこ。:
そうです! 攻略本を見るしかなかったゲームでしたね。
Pin:
難しいですよね。
ずんこ。:
確かに難しいんですよ。難しいけど難しさの質が違うというか、制作者が「プレイヤーを試行錯誤させよう」というのがダイレクトに伝わってくるというか、そんなゲームです。
――『ウィザードリィ4』はほかにも強めの仕様はあるんですか?
ずんこ。:
フロア一面が足を踏み入れると大ダメージを受ける地雷原に埋め尽くされてるとか、方向感覚を失う「回転する床」ならぬ「回転する壁」がいっぱい設置されていてフロアの構造がどんどん変わっていくとか……。
――意地悪!!
ずんこ。:
あとは地下3階から地下1階の「コズミック キューブ」と呼ばれるダンジョンもすごいですよ。 この階層は空間の繋がりがデタラメで、地下3階の階段を上ったら地下2階だったり地下1階だったりでわけが分からない。
――マップ構造理解ごとぐちゃぐちゃにしてくるやつ!
ずんこ。:
さらにワードナの召喚モンスターを呼び出す魔法陣も低レベルのものが置いてあって、それを踏むと低レベルのモンスターを召喚し直さねばならず、このフロアを歩いてる冒険者に手も足も出ずに一発アウトとなってしまうなど、『ウィザードリィ4』は「よくここまでプレイヤーを殺すギミックを思いついたな……」と思うゲームでしたね。
――さっき聞いた「いしのなかにいる」「レベルドレイン」に負けずとも劣らない!
Pin:
(笑)
ずんこ。:
ただ、攻略本を見て攻略法を覚えると結構面白くて、マルチエンディングなのでつい何周もしてしまいました。 難しいけど、難しいだけじゃない。ちゃんと面白いという『ウィザードリィ』シリーズの個性を代表するような作品です。
またPS版である『ウィザードリィニューエイジオブリルガミン』は、周回ごとに使えるモンスターが増えていくんですね。2周・3周と繰り返していくとエル’ケブレス(ル’ケブレス)とか、マジックソードとかマジックガントレットとか、ほか のシナリオのボス級モンスターまで使えて、逆にワードナの召喚モンスター無双になるという。最初はあんなに弱かったので、極端に強くなっていく。それはそれで面白くて、「ひどいゲームで、だからこそ面白い」という感想に収縮していく不思議なゲームでしたね。
――『ウィザードリィ』はそんなゲームばかりなんですか!?
Pin:
『ウィザードリィ4』はシリーズの中でも特異なゲームといいますね 。
ずんこ。:
特異というか、無茶苦茶なゲームなのは間違いないです。ただ、何故か面白いんですよ、本当に。
――今風な表現で失礼かもしれませんが、ソウルライクも同じような経験をするのでイメージしやすいです。
『ウィザードリィ6』や『ウィザードリィ外伝3』の落とし穴
――中期以降は、さすがに『ウィザードリィ』シリーズももうちょっとやさしくなっていますよね?
ずんこ。:
どうでしょうか……(笑)中期というと、 『ウィザードリィ6: Bane of the Cosmic Forge』(以下、 ウィザードリィ6)になるでしょうか 。この辺りから一挙にゲームシステムが変わって、拠点の街がなくなってずっとダンジョンの中を1つのパーティーで潜り続けるスタイルのゲームになりました。
――それはそれで緊張感がまた増えますね……。
ずんこ。:
ゲームの始まりのダンジョンである古城を抜けると山脈に繋がってるんですね。その山脈のマップがすごく迷路みたいな構造をしてるのに、足を踏み外したら即死という。
―― 出た!即死!すぐ即死する!
ずんこ。:
迷路みたいな構造しているから、すぐ足踏み外してしまうんですが、容赦なく即死です。 どこでもセーブ・ロードができるので無茶苦茶理不尽という訳ではないですが、びっくりはします 。
Pin:
アクションゲームでそういうのはたまにありますが、ダンジョンゲームでやらせるのは『ウィザードリィ』らしい。
編集部注記:
新作『ウィズダフネ』もダンジョン内のトラップは多い。引っかかってしまうと即死まではいかないものの、かなりのダメージを受けてしまう、パーティーに盗賊キャラクターがいれば気付いて警告してくれることもあるので、盗賊はパーティーに加えておくとよいだろう。
ずんこ。:
それと、国産のもので印象深いものは『ウィザードリィ外伝3』です。
――『ウィザードリィ外伝3』。
ずんこ。:
滅んだ街をダンジョンとして探索するパートがあるんです。 その地下に4桁のナンバーロックがあるんですけど、この謎が1か月くらい解けなかったのが印象に残ってますね。
――積み期間長すぎません?(笑)
ずんこ。:
実はヒントが街の上の方の階層にあるんですけど、その空間にまったく気付かなかった。『ウィザードリィ外伝3』は中盤のインフレとか「ドラゴンの洞窟」とかでいろいろ言われることが多いんですけど、個人的にはここが一番難易度高かった印象です。
Pin:
ちょっとした謎解きが解けなくて、思わぬところにヒントがある。
ずんこ。:
でもそれも『ウィザードリィ』っぽさでもあると思います。手応えがあるので。
――ちょっと、それぐらい難しい謎解いてみたいかもです。
Pin:
手応えがあったという点では、初代『ウィザードリィ』の中ボスであるモンスター配備センターがあげたいです。重要アイテムを守る番人の敵なのですが、初見だとほぼ確実にやられるぐらい強い。最初このモンスター配備センターを出会ってボコボコにされ、それからパーティーを強化しましたね。
ずんこ。:
これ、ちょっと面白い傾向があって。初期『ウィザードリィ』作品には強大なボスが多いのですが、中期作品(ナンバリング6~8)は、ボスの印象は薄めで。どちらかというとアドベンチャー要素に重点が置かれているんです。
―― 意外です。
ずんこ。:
おそらく、その時代RPGが、アドベンチャー色強くなってきたので、合わせたのでしょうね。新作『ウィズダフネ』はシリーズ初期のボス戦の強さがありつつ、物語もしっかりあるので、両時期のいいどころどりな気がしました。
『ウィザードリィエンパイア 古の王女』も結構意地悪
ずんこ。:
あと国産の『ウィザードリィ』で印象深いのはPS版『ウィザードリィエンパイア 古の王女』。印象に残っているのが、「地下2階中央部の井戸」ですね。
――えらく具体的ですね。
ずんこ。:
これを調べると、地下6階まで落とされるんですよ!
――めちゃくちゃ落としますね。
Pin:
もうほとんどシュート(下の階層に落とされる罠)じゃないですか。
ずんこ。:
シュートにしても、 地下6階まで落とされるというのは衝撃的でした。 そこから少しずつ上に登って行って、帰還ポイントまでたどり着けたときは九死に一生を得た感覚でした。
―― その達成感、ちょっと気持ちよさそうです。
編集部注記:
新作『ウィズダフネ』では(CBT時点では)そこまで凶悪なトラップはなく、要所要所で拠点に帰還・再開できるポイントがある。ただしいずれもパーティーの戦力がギリギリになりそうな絶妙なタイミングで配置されており、九死に一生を得る感覚を『ウィズダフネ』でも味わえる……かもしれない。
ずんこ。:
あとは『ウィザードリィエンパイア 古の王女』のトラウマとしては、「呪文禁止+ダークゾーン+回転床」ですね。
――それ、ヤバいんですか?
Pin:
周囲のマップを視認できなくなるダークゾーンと、向いている方向がわからなくなる回転床の組み合わせはヤバいですね。何が何やらわからなくなる。
――なるほど、ヤバいんですね!!
ずんこ。:
ヤバいです。ダークゾーンと回転床が加わると方角がまったくま からなくなって、さらに呪文の使用できない呪文禁止ゾーンだと呪文で方角を知ることも禁止されるというギミックですね。これを抜けるために「魔法の地図」というアイテムを大量に持ってないと困るんですが、同作ではこれ1個でアイテムスロット1個を占有するので荷物持ちも大変でした。
――開発者の意地悪だ!!
ずんこ。:
あと『ウィザードリィエンパイア2』にも印象に残ったトラップがあって。
――『ウィザードリィ』は、トラップがヤバいシリーズなのはわかってきました!
ずんこ。:
扉を開けようとすると、某クイズ番組の司会者によく似た顔がニュっと出てきてクイズを仕掛けてくる「問答扉」なるものがありました。クイズの回答を文字入力で答える形式 なんですが、シンプルに答えが難しい。
問答扉の例題(回答は少し後に記載)
――まさかのクイズ難しすぎるトラップ。新パターンだった。
ずんこ。:
問答扉のタチが悪いのは、『ウィザードリィ』に関係ある問題もそうでない問題も混ざって出題されるところなんですよ!一般的なクイズ問題だけかと思っていると絶対解けないという。自分は制作者自身が制作してた攻略サイトを見るまで解けない問題が多数ありました(笑)
Pin:
制作者が、自前で攻略サイトを作ってたというのはなんというか、時代を感じますね。
ずんこ。:
00年代当時でないと出来なかった制作者とプレイヤーのコミュニケーションであったかなとは思います。
問答扉の回答。あなたは正解できましたか?
あとは『ウィザードリィエンパイア』シリーズの制作者が手がけた、当時「学園ウィザードリィ」と呼ばれた『ウィザードリィエクス』シリーズでですね。
――『ウィザードリィ』は学園ものもあるのか!
ずんこ。:
デザインは少しポップになったんですが、変わらずシリーズとして魅力はあります。こちらのシリーズでは、 「呪文禁止+ダークゾーン+回転床」の進化版である「呪文禁止+深水域」が登場したのが印象深かったですね。
――どういうことですか??
ずんこ。:
「深水域」というのは、一部のトラップを回避する常駐飛行呪文をかけてないと通れない床なんです。 そこに「呪文禁止」が重なると飛行が解除されて「みずのなかにいる!」状態になると死ぬ。
Pin:
みずのなかにいる。
――「いしのなかにいる」の別パターンだ!
ずんこ。:
一応エンディング後にしか出ないという手心はあるんですけどね。あまりに評判が悪かったのか『ウィザードリィエクス2』では装備するだけで飛行効果が得られて、魔法禁止+深水域ゾーンでも溺死しないようになる「飛行石」などのアイテムが追加されました。
――続編では優しさが出たんですね。
Pin:
私は最近『ウィザードリィ外伝 五つの試練』を遊んでますが、手痛い目に遭いました。
――Steamで売ってるやつですね!
Pin:
そうです。パーティーが育って、最強攻撃呪文の「ニュークリアブラスト」も打てるようになって、このシナリオのエンディングも近いだろうと思ってちょっと余裕かましていました。そんなタイミングで 初めて会った敵にいきなり石化のブレスを食らいまして、一発で全員が石化してゲームオーバーでした。
――最新作でも変わらないエグさ……!
難しさには意味がある
――しかしなんかそういうの聞くと、理不尽なゲームにも聞こえますよね。
Pin:
いえ、そういうわけじゃないんですよ。実は面白い話があって。自分が『ウィザードリィ』に達成感を感じたのは、初代をプレイした時に1F~10Fまでマップを埋めた時です。攻略本もない時代でした。
――マッピングですか。ぷちぷちを潰すみたいな気持ちよさですか?
Pin:
それもあるんですが、『ウィザードリィ』シリーズでは、落とし穴やトラップにハマった時とかが地獄なんです。できるだけハマりたくない。ではどうするか。マッピングをするんです。マッピングをすれば、意地悪な罠を回避できる。
――なるほどなー。マップの意地悪さがあるからこそ、マッピングという行為の意味も高まる。マップが平坦で何もなければ、ただの埋め作業ですよね。
ずんこ。:
自分は強い敵と出会った後に、トレハンやレベルアップをするのが楽しくて。強い敵という目標があって、そこに打ち勝ちたいと願うからこそ、宝探しやレベリングに意味があります。なので、ただただ難しいだけでなく、難しさがゲームサイクルに厚みをもたらしているのが、『ウィザードリィ』シリーズの特徴だとも思っています。
辛くも楽しいのが『ウィザードリィ』
――いろいろ教えていただき、ありがとうございます。他人に知ったかぶりできる豆知識ができました!それではまとめに入らせてください。Pinさん的に、『ウィザードリィ』のハードコアさはどう映っていますか。
Pin:
ロールプレイングゲームは成長していくゲームなので、だんだんと自分が強くなっていくのを楽しむ部分が大きいじゃないですか。『ウィザードリィ』は、たとえば潜っていくごとになんかすごい緊張感があるとか、何されるかわからないみたいな怖さが常々あると思うんですよ。そこら辺のシビアさが楽しい部分でもあるとは思うんですよね。
今時たとえば『ダークソウル』ですとか、『エルデンリング』のような「死にゲー」が流行ってるというのもちょっと繋がる部分でもあるかなと思います。そして、ちょっとヒリヒリするような、ギリギリの状態でコマンドベースで戦っている楽しさが味わえるのは、『ウィザードリィ』の面白さだと思うんですよね。
『ウィザードリィ』はコンピューターゲームの最初期に作られてなおかつアメリカのほとんど素人のような学生が作ったゲームなんです。ただ、昔のPCゲームは大概難易度が高くて理不尽なゲームが多かった中で、奇跡的になんかすごくいいバランスのゲームではあったと思うんですよ。
そういう部分がすごく評価されてることだと思いますし、そこに魅了された人たちがファミコン版ですとか、後の外伝とかをどんどん作っていって裾野を広げていったからこそ、未だにそれが綿々と続いてると思うんです。「厳しさと楽しさ」が共存してるのが『ウィザードリィ』かなと私は思ってます。
――ずんこさんはいかがでしょうか?
ずんこ。:
ベニー松山氏が『ウィザードリィ』を題材にした小説「隣り合わせの灰と青春」を出していらっしゃいますけれども、究極的に言えば『ウィザードリィ』の魅力ってそのタイトルに詰まってると思うんですよ。
一歩間違えれば灰になる。そんな緊張感の中で、生き延びるために一歩一歩を踏みしめ、拠点や安全地帯に無事戻れたことに安堵し、そして自らがキャラクタークリエイトした10代から20代のキャラクターの成長を見届ける青春の一幕。
その「一歩の重み」が、『ウィザードリィ』が厳しいゲームでありつつも、私が生まれる前から長くプレイヤーに支持されている要因の1つではないかなと思っています。
――ちなみにずんこさんは今度リリースされる『ウィズダフネ』のベータテストを遊んだそうですが、シリーズの持ち味は新作にもあるのでしょうか。
ずんこ。:
そうですね、6人のそれぞれの個性を持った冒険者でパーティーを組み、迷宮の未探索領域を一歩一歩踏みしめ、安全を確保しながら先に進み、そしてフロアをまたぐ度にどんどん強くなっていくモンスターと命がけの戦闘を繰り広げるという、そういう面白さは『ウィズダフネ』にはものすごくあるかなと。
伝統的な『ウィザードリィ』シリーズの戦闘は、基本的に「やられる前にやれ」の傾向が強いんですが、その反面大味さもあります。しかし『ウィズダフネ』は、そうした点は現代的で、戦士や盗賊・魔術師はアタッカー、騎士はタンク、僧侶はヒーラー……といった感じで各キャラクターの役割(ロール)をしっかりと活用して戦術を組み立てていく点が重要になっていて、スピード感はありつつ戦術性は増しています。
また、こうしたはっきりしたロールの分割が仲間キャラクターの個性を強調することにも繋がっていて、そういった点でもモダンな仕様でキャラクターたちの成長とシビアな戦闘を見守っていく、『ウィザードリィ』の魅力を感じられるゲームになっていると思います。
個人的には『ウィズダフネ』から『ウィザードリィ』デビュー、大いにアリだと思います 。難易度の高いゲームを求めているユーザーにこそオススメしたいですね。
ちなみに、『ウィズダフネ』については別記事(関連リンク)の方でもっとしっかり掘り下げているので、気になる方はぜひそっちも読んでほしいです。
――ありがとうございます。これをきっかけにシリーズに挑戦してみます。
『Wizardry Variants Daphne』は、10月にiOS/Android向けに基本プレイ無料でリリース予定だ。なお弊誌では『Wizardry Variants Daphne』を、レビュー動画でもお伝えする予定だ。