「星のカービィ」アニメボックスには“ちゃんと”「現代の社会通念では不適切な表現あり」との記載あり。でも全部収録

 
*画像は公式直販ページValueMallより

株式会社ハル研究所は12月16日、「アニメ星のカービィ HDリマスター版 まるごとコンプリートBOX」を2023年3月14日に発売すると告知した。公式直販ページでは先行受注販売が開始。そして同ストアページにおける注意書きが、ユーザーから注目を浴びている。

『星のカービィ』シリーズの始まりは、ゲームボーイ向けに1992年に発売された2Dアクションゲームだ。その後30年にわたって多数の作品がリリースされてきた。シリーズの開発は主にハル研究所が手がけ、任天堂から発売されている。最新作である『星のカービィ ディスカバリー』Nintendo Switch向けに、今年2022年3月に発売。任天堂が11月8日に公表した第2四半期決算発表によれば、シリーズ最高の売上と見られる、累計販売本数527万本を記録しているという(関連記事)。

2001年10月にはアニメ化も実施され、2003年9月まで全100話にわたって放映された。アニメ版の舞台はプププランドにおけるオリジナルの村であるププビレッジ。ゲーム版の世界とは違い、コンビニや自動販売機といった、現実世界で見られる物にあふれている点が特徴だ。

そんなアニメ版がHDリマスターとなり、バリュープラスより先行販売が実施されている。アニメ版をフルHD画質にリマスターし、Blu-ray BOXとしてパッケージ。10枚組のBlu-rayディスクには、テレビアニメ全100話をはじめ、「星のカービィ ~特別編~ 倒せ!!甲殻魔獣エビゾウ」、北米版アニメ第1話やパイロット版などの映像特典も収録。そのほか設定資料、声優インタビューなどを収録した100ページのスペシャルブックレットや、第1話の絵コンテ集も封入。さらに、購入特典として「アクリル万年カレンダー」が付属するとのことだ。


そしてストアページには、注文前に必読とされる注意事項が存在。購入個数の制限などの各種注意事項が並ぶなか、「映像表現の注意」とする項目に『星のカービィ』のイメージらしからぬ記載が見られるのだ(公式直販ページValueMallより引用):

本作品には2001~2003年放映のアニメ映像を収録しております。本編の映像・構成・台詞に、現代の社会通念や今日の人権意識に照らして不適切と思われる表現が一部ございますが、制作当時の時代背景と作品のオリジナリティを尊重して、原版のまま収録しておりますことを予めご了承ください。

注意事項によれば、本編の映像・構成・台詞には現代の社会通念や今日の人権意識に照らして不適切と思われる表現が一部存在する、とのこと。全年齢向けゲーム『星のカービィ』のアニメ版がリマスター化されるにあたって、こうした注意書きが用意されたのは意外かもしれない。本稿執筆時点で国内Twitterでは、「カービィ」や「アニカビ(アニメ版カービィ)」といったワードがトレンド入り。「星のカービィの注意書きとは思えない」と驚くユーザー反応も見られる。しかしその一方で、この注意書きに納得を示すユーザーも散見されるのだ。そう、アニメ版「星のカービィ」はブラックジョークの宝庫なのである。

本作の世界には現実世界に即した要素が盛り込まれていた。さらにそうした世界観のもと、社会風刺もふんだんに盛り込まれていた。列挙するといとまがないが、一部例をあげてみよう。たとえば悪役として登場するデデデ大王は、際どい言動を連発。特に第5話「怒れ!ウィスピーウッズ」において、森を嬉々として伐採する大王が発した「環境破壊は気持ちいい」との発言はネットミーム化している。


そのほかにも村人たちに不眠不休で“アニメづくり”を強いる第49話や、ワドルディを自動販売機で売り飛ばす第72話など。デデデ大王は数々の悪事をはたらいた。そしてそれぞれのモチーフは環境破壊、アニメ業界の過酷な労働環境、人身売買、とかなり生々しい。こうした描写が「現代の社会通念や今日の人権意識に照らして不適切と思われる表現」と判断された可能性はあるだろう。

なおアニメ内でのデデデ大王はあくまでも悪役。大王のはたらく悪事には基本的に、村人たちから批判が叩きつけられる構図であった。社会倫理に背く考えを推奨する作品というわけではない。そしてゲームの『星のカービィ』とはひと味違うするどい社会風刺が見られる点は、アニメ版の特徴ともいえる。というより、アニメ版「星のカービィ」についてはブラックジョークが多すぎて、注意文箇所に該当するのはデデデ大王の言動だけではないかもしれない。

*画像は公式直販ページValueMallより


今回リマスター版販売サイトにて、上記のような注意書きが記載されることとなったアニメ版「星のカービィ」。もともと本作を知っていたユーザーからは、納得のいく記載とする意見も一定数見られるわけだ。一方でそうした表現は制作当時の時代背景と作品のオリジナリティを尊重し、原版のまま収録されているとのこと。原版そのままでHDリマスター化されて復活するのは、ファンにとって嬉しいところだろう。

「アニメ星のカービィ HDリマスター版 まるごとコンプリートBOX」は2023年3月14日に発売予定。なお現在先行受注は生産可能上限数に達したため受付終了。ただし、「在庫なし」の表示となっていても、再度ご注文を承れる状態に戻る場合があるとのことだ。二次受注などの対応が検討されているという。




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