実体験ベースの戦争ノベル『Ukraine War Stories』Steamにて無料配信開始。ロシアがもたらす戦渦をウクライナ目線で描く

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デベロッパーのStarni Gamesは10月18日、『Ukraine War Stories』を無料でリリースした。対応プラットフォームはPC(Steam)で、日本語表示に対応している。開発元は本作から収益を得るつもりはなく、世界中のプレイヤーにウクライナの人々の体験を共有してもらうことを目的にしているという。

『Ukraine War Stories』は、ロシアのウクライナ侵攻を題材にしたビジュアルノベルだ。兵士ではなく民間人として、占領地における極限状態を追体験できるゲームとされている。本作には、それぞれ異なるウクライナの町で展開する3つのシナリオが存在。ホストメリ(Hostomel)、ブチャ(Bucha)、マリウポリ(Mariupol)が舞台となる。そしていずれのシナリオでも、愛する人と共に戦地からの脱出を目指すことになる。

ゲームプレイでは、選択肢によって自身と仲間の心理状態が変化するシステムが採用されている。またシナリオによっては、ガソリンや医薬品、備蓄状況といった別パラメータも存在。いずれかのパラメータを消費しなければ選べない行動もあり、上手くリソースを管理していかなければならない。一方で、仲間の心理状態が底を尽きると、パラメータや自身の心理状態を消費して彼らを勇気づける必要が出てくる。そして自身の心理状態がゼロになると、その時点でゲームオーバーとなる。

本作で語られるすべての物語は、実際の出来事に基づくとされている。目撃者の証言、およびその地での記録を、1つの物語にまとめあげているそうだ。なお、物語のベースになったと見られる出来事については、出典元が記載され「情報源」としてリストアップされている。タイトル画面から確認可能だ。またゲームにおけるイラストは、その地域で撮影された戦時下の写真をもとにしているとのことだ。なお本作には有志の翻訳者たちの助けもあったようで12言語に対応。日本語表示にも対応し、比較的丁寧な翻訳がなされている。


無料配信かつ日本語表示に対応していることもあり、本作はさっそく国内でもユーザーの反響を呼んでいるようだ。民間人目線での生々しい戦争体験が描かれている点に言及するユーザーが多く見られる。そして、今まさに起こっている戦争を扱っていることもあり、本作についてはさまざまな見方や意見が国内外のユーザーから投じられているようだ。

たとえば、本作で展開する物語自体はあくまでフィクションである点を強調するユーザーも見られる。目下進行中の戦争におけるウクライナ側の視点を描いた本作において、事実と脚色を見分け、客観的な視点を保ち続ける困難さを懸念する意見はあるようだ。一方で、戦時下の現実をそのままゲームとして描くのは難しいと言及するユーザーもいる。脚色などの可能性はあるものの、ウクライナの惨状を伝えるという本作のコンセプトに一定の理解を示す見方もあるようだ。


本作を手がけるのはウクライナのキーウ(Kyiv)に拠点を置くStarni Games。過去にはストラテジーゲームを開発してきたスタジオだ。『Ukraine War Stories』は、キーウにロシア軍が間近に迫るなか開発が進められてきたという。

また開発チームの一人は過去に、ロシア軍占領下のブチャで家族と共にガレージの地下室に1週間隠れて過ごし、その後脱出を果たしたそうだ。その際の体験もゲーム内に反映されているそうで、先述のとおり本作にはブチャを舞台にしたエピソードも収録されている。なお幸いにも、“現時点では”開発チーム内に死者は出ていないとされる。

『Ukraine War Stories』はPC(Steam)向けに無料で配信中だ。

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