『Marvel’s Guardians of the Galaxy』ライターがQA経験者の貢献度をアピール。「ゲーム遊んでるだけ」じゃないテスターの可能性

 

ゲームが企画・開発されユーザーの手に届くまでには、さまざまな工程がある。開発されたゲームの品質をチェックするQA業務は、重要ながら軽視されやすい側面もあるプロセスだ。先ごろSNS上に投じられた「QA担当者の能力と可能性」を示す意見が、多くの業界関係者の反響を呼んでいる。
 

 
ゲーム開発における「QA(Quality Assurance・品質保証)」は、その名のとおりゲームの品質についてチェックし、バグや仕様からの逸脱などの問題解決を担う業務だ。一般的なイメージとしては、ゲームをひたすらプレイしてバグを発見・報告するテスター業務の印象が強いだろう。しかし開発体制にもよるものの、QAの領分はそれだけに留まらない。適切でない調整の指摘など、ユーザー体験を損ねる問題全般のチェック、および改善提案をおこなうのもしばしばQAの業務範囲となる。ユーザーによりよいゲーム体験を届けるためには、欠かせないプロセスなのだ。

一方で、QAは基礎からの開発を担う部門ではないため、いわゆる“開発者”とは切り分けて考えられるケースもある。また、「できたものをチェックする」場合がほとんどな点から、軽視される例もままあるようだ。先ごろには、「QAはデベロッパーの範疇に入るか否か」なる議論が業界関係者の間で紛糾する一幕もあった。その際には、QA担当者に対する冷遇や低賃金・長時間労働などを訴える声が見られた(関連記事)。業務の重要さに対して、過小評価されがちだと思うQA担当者/元担当者も少なくないようだ。

今回、QAに関する意見を投じたJocelyn Baxter氏も、そうした問題を感じるひとりのようだ。同氏はゲームのQA業務に携わった後、Eidos-Montréalにてシナリオライターになった来歴をもつ。10月26日に発売された『Marvel’s Guardians of the Galaxy(以下、GotG)』などに携わっている人物だ。Baxter氏は11月2日、自身のTwitterアカウント上で「QA担当者を軽んじている開発者たちへ。『GotG』のシナリオの80%は元テスターが手がけています」と伝えた。
 

https://twitter.com/Sizigyy/status/1455514102877536268

 
Baxter氏のツイートからは、QA担当者が“単なるテスター”と軽視されがちな現状への指摘と、「テスターでも経験を積み、開発の中枢に関わっている」と示す意図が受け取れる。同ツイートには、現役QA担当者や、元QA担当で現在開発の中心に関わっている関係者から多くの反応が寄せられている。Baxter氏の意見に賛同する声が目立つ印象だ。また、「自身もQAからキャリアを積んだ」とする主要開発者も散見される。

例としては、BioWareにて『Dragon Age』シリーズなどに携わり、現在はナラティブディレクターを務めるJohn Epler氏が「俺もQA出身だよ!」と反応している。また、Baxter氏と同じくEidos-Montréalに所属するメンバーからも声が寄せられている。サウンドデザイナーのDaniel Richer氏は、『GotG』サウンドデザインチームも大部分がQA出身者であると言及。シニアクリエイティブディレクターJean-François Dugas氏は「私もQAからキャリアをスタートさせた。ゲーム企業について学ぶには素晴らしい業務だと思うよ」と投稿している。

また、EA DICEのFrostbiteエンジン開発にてQA業務に携わるPontus Hallén氏は、QA人員に対してキャリアパスを提供することの重要性と、怠った際の人材流出の可能性を主張。QAにおいて積む経験はほかの開発ポジションにおいても役立つと、Baxter氏へのリプライで示唆している。Baxter氏も同じ意見を持っているようで、「その通り!QAはきちんとしたキャリアパスです。“一日中ゲームを遊んでいるだけ”の仕事ではありませんし、多くの努力と協調性が必要です」と返答。多くのゲーム企業がQA担当者の能力や経験を正しく評価するよう願っている。
 

https://twitter.com/Sizigyy/status/1455835661584437248

 
なお、Baxter氏のツイートには、同氏がライターとして携わった『GotG』のシナリオを称賛する声も多数寄せられている。同作はユーザーおよびメディアから比較的高い評価を受けており、なかでもストーリーの質が高いとする意見が目立つ。ゲームのストーリーはゲームプレイと強く相互作用する。シナリオライティングの上では、各ライターがQAで培った経験も役に立ったことだろう。元QA出身者が大部分を手がけたというシナリオが評価を受けている点も、Baxter氏の主張に説得力をつける要素だ。

同氏の主張どおり、ゲーム全体をつぶさにチェックし、または俯瞰しながら改善していく経験は、QA以外の開発業務にも活かせるだろう。QAはたしかに、プログラミングやデザインなど、ゲーム開発の根幹からは少し離れた業務かもしれない。しかし、プレイヤーに上質なゲームを届けるためには必要不可欠なプロセスだ。ゲーム企業においては、QAの業務やQA担当者の能力が軽視されることなく、才能がきちんと花開いて作品に還元される環境であってほしいものだ。




※ The English version of this article is available here