Twitchに蔓延する人種差別・性差別荒らしに対し、配信者が「1日Twitchボイコット」を呼びかけ。運営側にさらなる対策を要求する

Image Credit : RekItRaven

Twitchにおいて、一部のストリーマーたちが「1日Twitchボイコット」を実行しようとしているようだ。その背景には、深刻化する「ヘイト・レイド(Hate raids)」の問題があった。 

「レイド(Raid)」はもともと、Twitchに存在する機能の一つ。配信者が自身のストリーミングの終わりに、別の配信者のチャンネルへ視聴者をまとめてリダイレクトさせることができる機能だ。配信者同士で視聴者を送りあい、視聴数を高めあう交流手段となっている。 

これに対してヘイト・レイドとは、最近Twitchで勢いを増している荒らし行為だ。あるユーザーが、自身のチャンネルから別の配信者のチャンネルへ、大量のBOT視聴者を送り込む。そして、差別的な言葉などでチャット欄を埋め尽くす迷惑行為をはたらくのだ。標的となるのは黒人や女性、性的マイノリティなどの配信者。ときには配信者のフルネームや家族についての侮辱などにもつながり、その悪質さが問題視されてきた。 
 

 
ヘイト・レイドは8月上旬ごろからとくに問題視されるようになり、Twitterでは「#Twitch Do Better(Twitchちゃんとして)」とのハッシュタグが拡散されるように。これに対してTwitchは8月12日、ヘイト・レイドに対する公式の声明を発表している。Twitchはツイートにて、既存の事前検知フィルターに脆弱性があることを特定したと発表。チャットにおけるヘイトスピーチ検知に向け、アップデートを実施したと明かした。 
 

 
同時にTwitchは、チャンネルレベルでのBAN回避の検出や、アカウント認証の改善を今年中に実施すると発表。可能な限り早く実装したい意向を示した。しかし、これ以外の対策については、チャット上でのブロックやBANなど既存ツールを紹介するにとどまっている。ヘイト・レイドについては現状、Twitchの既存ツールを使った自衛がユーザーに求められているのが現状だ。一部ストリーマーたちは、現状の機能ではヘイト・レイドに対応するのに不十分だとして、独自にツールを開発。ワンプッシュでチャットのクリアやサブスクリプション限定モードへの切り替えができるボタンなどを作成し、対策を講じている(The Verge)。 

こうしたなか、ストリーマーで黒人女性のRekItRaven氏が発起人となり、Twitchにおける1日ボイコットを呼びかけているようだ。同氏はもともと、「#Twitch Do Better」タグを広めた発起人でもある。RekItRaven氏はヘイト・レイドに対するTwitchのより一層の対策を求め、現地時間9月1日にボイコット運動をするように配信者たちへ呼びかけ。同じ日に一斉に配信を取りやめることで、Twitchに配信者から意思表示をしようと提案している。Twitterでは、現在同ハッシュタグを使いさまざまな配信者が賛同の意を示していることが確認できる。 
 

https://twitter.com/RekItRaven/status/1428847935022841868

 
なお関連する話題として、Twitchの既存ツールを使ってヘイト・レイドに対策することの難しさを指摘するユーザーも現れている。配信者のArt for the Apocalypse氏はTwitchの機能である「単語ブロック」の限界について言及した。たとえば黒人に対して用いられる差別語「jogger」について同氏は検討。同単語を禁止しても、たとえばウムラウトを使って「jögger」と表記するなど、代替語が登場するだろうと指摘している。 

そして、キリル文字やギリシャ文字などアルファベットと代替可能な文字すべての組み合わせを検討した場合、「jogger」という一単語の出現を完全に禁止するためには2100万通り以上の組み合わせをブロックする必要があると結論付けている。チャンネルBOTによるブロックを利用しても全組み合わせのブロックには76日ほどかかると計算しており、Twitchがユーザーに自衛を求めるのは無理があると批判している。 
 

 
来週に予定されているTwitchボイコットがどれだけの影響力をもつかは未知数だ。しかし少なくない数の配信者が意思表示に参加したとすれば、Twitchとしても判断を迫られるだろう。