『New ポケモンスナップ』の海外コミュニティにて、ケムッソが人気を集めているようだ。ケムッソといえば、『ポケットモンスター ルビー・サファイア』から登場するいもむしポケモン。性格値によってカラサリスかマユルドかに進化先が変わるという、ちょっと特殊な性質をもっている。キャタピーやビートルの系譜を受け継ぐ、ゲーム序盤に遭遇する昆虫ポケモンとして、親しまれている。そんなケムッソが『New ポケモンスナップ』で脚光を浴びているという。どうやらケムッソの独特の脱力感が、ファンにウケているようだ。Polygonが伝えている。
『New ポケモンスナップ』は、4月30日に任天堂より発売されたNintendo Switchタイトル。開発を手がけるのは、バンダイナムコスタジオだ。主人公はポケモン研究者であるカガミ博士の依頼を受け、未開の地レンティル地方を舞台に、写真を介してポケモンたちの生態系を調査していく。レンティル地方にはさまざまなロケーションが存在しており、プレイヤーはネオワン号に乗って各地を探索。ネオワン号は自動的に進むので、乗り物に乗りこみつつ360度見回しポケモンを激写するのだ。
レンティル地方には実に多くのポケモンが生息している。しかし、なぜかとりわけケムッソが人気を集めているという。きっかけとなったのは、TwitterユーザーProfChestnut氏の投稿のようだ。同氏は「毎朝目覚めた時の自分」と題して、横たわった『New ポケモンスナップ』のケムッソの画像を投稿。木陰で空を見ながら、生気なく横たわるケムッソ。その佇まいから、なんともいえない味わい深さを感じられる。このツイートは1万4000以上のRTと6万4000以上のイイネを獲得し、話題を呼んだ。
その後このケムッソは「気だるい時の自分」を表現するネットミームとして、一躍人気を集めたわけだ。「~な時の自分」という形式で、自分の気だるさを表現するために使われるほか、横たわるケムッソそのものを愛でる創作画像なども投稿されている。Twitter上で#NewPokemonSnapのハッシュタグにて英語での投稿を見ていくと、ケムッソの姿をやたら目撃することだろう。国内でも「虚無ッソ」の名前で親しまれているようだ。
興味深いのは、ケムッソが『New ポケモンスナップ』にて気だるげなのかというと、まったくそうではない点。ケムッソには序盤ステージである公園(昼)で遭遇可能。まっすぐ進んだ突き当たりの草むらで、その姿を目撃できるはずだ。草むらや木の上にて、動きは緩やかながらも活発に活動している。決して、怠惰丸出しに暮らしているわけではない。
ただし、公園(昼)のレベルを3まで上げることで、いつもと違う一面を垣間見ることができる。前述した草むらエリアに生息しているが、時折草むらから出ながら横転するケムッソに遭遇することがある。横転しているワンシーンの一瞬を切り取ったのが、今話題になっている気だるそうなケムッソなのだ。横転中のショットなので別に気だるいわけでもない。さらに、遊ぶたびに生態系が変わる関係で、そこまで目撃事例は多くない。横たわるケムッソが、ゲーム内でよく見かけるケムッソの姿というわけではないのだ。実際のところ、この横たわりケムッソの撮影難易度は高く、SNSで画像を投稿している人でも、自分でこのシーンを撮ったという人は珍しいだろう。
しかしながら、妙味ある姿が巧みに写真に収められ、拡散されてしまったため、ケムッソは気だるいイメージと紐付けられてしまっている。『New ポケモンスナップ』のケムッソといえば、横たわっているイメージが定着しつつあるのだ。物事が一部分だけ切り取られ拡散されることにより、独自のアイデンティティが付与され認知されていく現象は、現代のネット社会にも似通うものがある。
ある意味では、『New ポケモンスナップ』がそれだけポケモンの生態系を多様に描いている作品であるともいえよう。同じコースの同じレベルであったとしても、遊ぶたびに生態系が若干変化するというのは、本作の作り込みを示唆している。このゲームの中で、ポケモンたちはまさしく生きているのだ。ケムッソのネットミーム化は、ケムッソというポケモンに新たにフォーカスを当てるだけでなく、『New ポケモンスナップ』のこだわりを知らしめる事例となった。
『New ポケモンスナップ』は、Nintendo Switch向けに発売中だ。