『Apex Legends』プレイヤー、“ランパード解任”で「ランパート」を心配する。とにかく明るいLMG娘は現状を脱却できるか

 

サッカー界のビッグニュースが、なぜか『Apex Legends』プレイヤーたちを困惑させているようだ。イングランドのプロサッカークラブ・チェルシーFCは1月25日、2019年より選手らを率いていたフランク・ランパード監督を解任すると発表した。昨年夏にはティモ・ヴェルナーやカイ・ハヴェルツ、ベン・チルウェルといった強力な選手を引き入れたチェルシー。しかし直近のリーグ戦では8試合中5敗を喫するなど、苦しい状況が続いていた。成績不振が続くなか、クラブ上層部はランパード監督とたもとを分かつことを決断したようだ。

世界的強豪クラブを揺るがす報道として、SNSを中心に「ランパード解任」の文字列は大いに人口に膾炙した。ランパードといえば、チェルシーのレジェンド。攻撃的ミッドフィルダーとして、リーグ戦通算192ゴールを記録。引退後は監督業を務めており、2019年7月に古巣に就任すると、昨季は補強禁止処分を経験しながらも、メイソン・マウントなどアカデミー出身の若手育成しながら4位に滑り込みチャンピオンズリーグ出場権を獲得する偉業を成し遂げた。現役から人気ある選手で、カリスマ性もあり、若手の育成もうまく、結果も残してきた。クラブの未来とされるほど重要人物とされるほどの人物が、解任という憂き目にあってしまったことに世界が大騒ぎしているのだ。

ところが、中にはニュースを勘違いしている人々もいたらしい。一部のユーザーが「ランパードって誰?」「ランパー“ト”じゃないの?」などと発言し、市井は混乱。逆にサッカーファンから「誰だよランパートって」と動揺の声が聞かれるカオスな状態になってしまった。プレミアリーグの試合の実況をたびたび務め、“ブルーズ”ファンである野村明弘氏も困惑を見せている。
 

 
お気づきのとおり、一部のユーザーとは『Apex Legends』のプレイヤーたち。ゲーマーたちは、「ランパード」の文字列を「ランパート」と見間違えてしまったのだ。ランパートといえば、『Apex Legends』にてミニガンや増幅バリケードを武器とする破天荒ガールのレジェンド。シーズン6より登場した彼女だが、昨年8月からわずか4か月にて退場とあってはさすがにファンも衝撃を受けたことだろう。もちろん単なる勘違いであり、ランパートは次回シーズン8でも変わらず健闘を見せてくれる予定である。『Apex Legends』コミュニティがサッカーニュースに惑わされるのはこれが初めてではない(関連記事)。チェルシーと同じくプレミアリーグのFC「レスター」が話題となった際、エネルギー武器の「Lスター」と見間違えるユーザーが続出するケースが何度もあった。

ところでLスターが勘違いで取り沙汰された背景には、「弱武器とされるLスターに強化が入ってほしい」というユーザーの密かな願いがあった。ランパートもまたしかりである。というのも彼女は、現時点で「もっとも強化が望まれているレジェンド」といってもいいからだ。昨年11月時点で開発者のDaniel Zenon Klein氏から、高レベル帯でのランパートのピック率がワットソンを下回り最下位であることが語られた。ピック率イコール性能の良し悪しではないものの、コミュニティではランパートの強化を望む声は根強い。海外掲示板Redditでは、ここ1か月だけで「ランパート強化のアイデア」を投稿したスレッドが2件、数千単位のUpvoteを獲得するなど、彼女の改良に対する関心の高さがうかがえる状況となっている。
 

*武器職人という設定を活かし、クラフトを有利にしてはどうかとの提案。

 
では、現状においてランパートの何が問題とされているのだろうか。まずは戦術アビリティである増幅バリケードから考えてみよう。遮蔽物を即席で構築できるアビリティで、発動することで、防護壁が備わった特殊なシールドを設置することができる。外側からの弾丸を弾き返す一方、内側からの射撃は威力を増大して貫通させる性質が存在。スナイパーライフルなどと併用すれば大きな威力を発揮できるだろう。パッチでランパートの強化が入る際も増幅バリケードの設置時間・CTが短縮されるなど、大きく恩恵を受けている。ただし現状では、設置の難しさに対し不満が多い。投擲で設置できるタイプではないため、遮蔽物を設置するためにまず体を晒さなくてはならないというリスクがある。加えて、設置判定可否のバグも頻発しているとの報告が。展開中(3秒間)にダメージを受けると一撃で破壊されてしまうことも含め、使いこなせば強いが扱いにくい、というのが戦術アビリティの評価だ。

ランパートについてもっとも評判が芳しくないのは、パッシブアビリティとアルティメットアビリティの性能だ。パッシブ「改造ローダー」は、ライトマシンガンとミニガン(後述)使用時に装弾数が増加し、リロードも高速化するというもの。具体的には装弾数が15%増加し、リロード時間が25%短縮するのだ。一見、武器職人らしい魅力的な能力にも見えるアビリティ。ところが『Apex Legends』において、LMGは現状で3種類しか存在しない。ディヴォーション・L-スター・スピットファイアだ。

ディヴォーションはケアパッケージから降格以来の評価がいまひとつ、ホップアップのターボチャージャーも見つかりにくいことから使い勝手が微妙なところ。L-スターについてはすっかり弱武器のレッテルを貼られてしまっている。こうなると選択肢としてはスピットファイアくらいしかなく、パッシブを活かせる場面はきわめて限定的。その上、増幅バリケードの恩恵を活かすならむしろスナイパーライフルを持ち歩いた方が効果的との意見も根強く、アビリティを腐らせざるを得ないのが現状だ。
 

 
そして本来花形のなるべきアルティメットアビリティ、ミニガン「シーラ」である。その場に固定したマシンガンを設置し、すさまじいレートで弾を撒き散らせるド派手な能力である。とはいったものの、悲しいかな『Apex Legends』は動き回ってこそのゲームだ。スピンアップや集弾までの時間を固定の銃座に居座り続けるのは、メリットに対して格段に大きな危険を抱えるデメリットだといえる。そのため非常に使える場面が限られてしまっており、今では増幅バリケードより素早く展開できる遮蔽の置き物、程度に使われる皮肉な状況となっている。

一時はオリンパスのトライデントで車載シーラが可能となり、一気にロマン武器化が期待された……が、シーラを車に載せるとクラッシュする問題が判明し、まさかの一時凍結(関連記事)。それでなくとも空中判定では当たりにくい、運転手が周囲を視認しづらくなるなどのトラブルを抱えていたようだ。またバグ関連でいえば「クリプトのドローン上にミニガンを設置して空飛ぶシーラができる」という珍裏技も発生(関連記事)。こちらはすでに修正済みだが、「このシーラがもっとも理想的だったのでは」とうそぶくユーザーも存在する。
 

 
たびたびアップデートが重ねられていることから、開発チームもランパートの不調を見逃しているわけではないだろう。スタッフはどのように彼女の性能を見ているのだろうか。その一端がうかがえたのが、昨年のウィンターエクスプレスに関連してデザイナーのKlein氏がランパートを語った際のコメントだ。「列車を守る」というモードは拠点構築型のランパートにとって有利にも思えるが、敵からグレネードを複数投げ入れられると圧倒的不利に。このことをユーザーから指摘されると、Klein氏は「まさしくそれがランパートのデザイン意図です」として、数発のグレネードで壁やミニガンが壊されることは計算づくの設計であるとコメントした。

またパッシブアビリティの強化が可能かどうかを問われると、次のように回答した。まず、バフの対象範囲をLMG以外まで拡げる予定は内容だ。ARやSMGまで恩恵を受けられるようにするとランパートが「壊れキャラ」になってしまう、というのがKlein氏の見立てである。では、あくまでLMGに限ったままでより強力なパッシブにできるかというと、それも難しい判断となる。あまりにLMGの威力を絶大にすると、「ランパート=LMGを持たなくてはならない」という強制力が働くようになるはずだ。パッシブについてはもう少々調整を入れる余地がありそうだが、キャラクターのアイデンティティを決定するほど強力なものにはならないとしている
 

 
現状ではさまざまな課題を抱えたランパート。しかし彼女を愛用するユーザーからは、「攻めのパーティーと相性が悪いだけで守りの連携が取れれば強い」との声もある。底抜けに明るくちょっぴり生意気な彼女のキャラクターは、他にない魅力でファンも少なくない。開発チームも改善に向けた意思を見せていることから、間違っても「解任」されるという心配はないはずだ。なおランパートは「壁(盾)をもった固定銃使い、しかも不憫」という共通点から、FPSファンからしばしば『レインボーシックス シージ』のオペレーター「タチャンカ」になぞらえられることがある。あちらの先輩がリワークにより大幅な強化を得たように(関連記事)、ランパートにも現状を覆すときが訪れてほしいものだ。そして前チェルシー監督ランパードについても、今後の監督キャリアとしての成功を祈りたい。