『PUBG Mobile』インドにおける権利をPUBG Corpがテンセントから回収。「中国アプリ」のラベル剥がしBAN撤回を狙う

 

韓国のPUBG Corporationは9月7日、『PUBG Mobile』フランチャイズのインドにおける権利を中国企業テンセントから回収し、今後はセルフパブリッシングで運営することを発表した。中印関係悪化にともない、インドでは先週『PUBG MOBILE』を含む118の中国系アプリが禁止されたばかり(関連記事)。同社はインドにおける『PUBG MOBILE Nordic Map:Livik』および『PUBG MOBILE Lite』の規制について、政府がとった措置を尊重する旨を表明している。「プレイヤーデータのプライバシーとセキュリティが社の最優先事項」であるとし、今後はインド政府と協力しながらプレイヤーが法にのっとってゲームを楽しめる方向を模索していくという。ふたたび同国で『PUBG MOBILE』の配信を目指し、独自のローカライズを打ち出していくのかもしれない。なおテンセントはPUBG Corporationの親会社Krafton(旧:Bluehole)に出資しており、株式の約10%を保有している(PC Gamer)。

先週2日、インドの電子情報技術省(Ministry of Electronics and Information Technology)は、複数のアプリが「無許可でユーザーのデータを盗み、インド国外へひそかに送信している」との通報を受け取っていると発表。「インド国内のモバイル・インターネットユーザーの日々の利益を保護する」ため100を超えるアプリの禁止に踏み切り、その中に『PUBG Mobile』フランチャイズも含まれていた。インドと中国は今年6月に国境地帯で軍事衝突を起こしており、関係が悪化。以来、段階的にインド国内での中国系アプリ規制を進めていた。

https://twitter.com/PUBGMOBILE_IN/status/1277528546941046784

*6月を最後にツイートしていない「PUBG MOBILE INDIA」アカウント。9月に入り、ファンからBANを嘆くリプライが集まっている。

インドにおける『PUBG Mobile』ダウンロード数は5000万回、アクティブユーザー数は3300万人にものぼり、PUBG Corporationにとってはきわめて重要な市場のひとつだ。また「国内のプレイヤーベースからのゲームへの圧倒的な支援があった」とPUBG Corporationが述べるとおりコアな作品ファンも多く、YouTubeには同作の「葬式」の様子を投稿するユーザーも出現した。「Winner winner chicken dinner!」とドン勝のメッセージを叫びながら半笑いで練り歩く姿はシュールだが、こうしたブラックジョークが飛び出すほどインド国内の『PUBG Mobile』コミュニティは厚いといえるだろう。またTwitterでは「#pubgbaninindia」タグに対抗して「#UnbanPUBGInIndia」とのハッシュタグが出回り、eスポーツ関係を生業とする人の保護を理由に規制撤回を求めるもある。


なおインドでは、『PUBG Mobile』ライクな国産ゲームを作ろうとする動きも出てきた。ベンガルールに拠点をおくNcore Gamesはアクションゲーム『FAU-G(Fearless And United: Guards)』を10月にリリースすることを発表している。スタジオの共同設立者Vishal Gondal氏によれば同作の開発は今年の5〜6月ごろから開始しており、『PUBG Mobile』規制直後のリリースは意図したものではないとのこと。一方でゲームの最初のエピソードは中印両軍の衝突が起きたガルワン渓谷での事件にもとづいており、ゲームの利益のうち20%は退役軍人を支援する慈善団体に寄付されるという。
【UPDATE 2020/09/10 12:19】
バトルロイヤルに特化したゲームではないことから、『FAU-G』のジャンル名を変更。


大きな市場をもつインドだけに、PUBG Corporationとしてはなんとかフランチャイズの配信を再開したいところだろう。今後の動向に注目したい。