犬撫でシム『You Can Pet The Dog VR』Steamにて発売。「永久に犬と触れ合うだけ」のゲームに隠された“目的”とは

 

パブリッシャーのRaconteur Games/3D Mediaは8月29日、犬飼育シミュレーション『You Can Pet The Dog VR』を発売した。対応プラットフォームはPC(Steam)。価格は520円で、プレイするにはVR機器が必要となる。

本作はVRを利用した短編作品だ。その目的は「ビデオゲームにおける究極の幻想を叶えること」、すなわち“犬と触れ合う”ことである。ボールや小枝を投げて追いかけさせたり、ひたすら撫でくり回したり、心ゆくまで犬と交流することが可能。クラシックなディズニー映画に影響を受けたという美しい小庭で、未来永劫ふれあいタイムを過ごすことができる。本作は自らを「何百時間もかかり、プレイヤーの選択で分岐する」ゲーム群とあえて比することで、剛腕直球シンプルなデザインを強調している。本当に犬と触れ合う以外にすることは、ない。

『You Can Pet The Dog VR』というタイトルを聞けば、思い出さずにはいられない存在があるだろう。Twitterアカウント「Can You Pet the Dog?」だ。昨年、突如ネット上に現れ、さまざまなゲームに出演する犬をひたすら紹介してきた謎のアカウント。その際必ず「ゲーム内で犬と触れ合えるかどうか」の可否を一言添えており、あまりに目的不明なシュールさから人気を博してきた(関連記事)。

同アカウントの出現以来、ゲーム業界では「犬(あるいは動物)と触れ合える要素」を盛り込むことがちょっとしたブームとなる。『Enter the Gungeon』や『テラリア』ではわざわざ撫でられる機能を追加するアップデートを実施。ついには米国任天堂が、ゲームニュースにて「Games with Pettable Companions(撫でられるお供がいるゲーム)」という特集を組むまでになった(関連記事)。今やゲームにおいては「動物と触れ合える」要素があるだけでちょっとした話題性を作ることができ、マーケティングにおいて重要な販促要素となっている。

では『You Can Pet The Dog VR』が完全に「Can You Pet the Dog?」に便乗しただけの即席ゲームなのかというと、実情はやや違う。実は本作はRaconteurがリリースを予定している作品『DOGGONE』のスピンオフなのだ。同作は迷子になった犬を主役とした、パズル要素のあるアドベンチャー。2019年にKickstarterキャンペーンを立ち上げ失敗してしまったようだが、その後も開発が続いていたようだ。『You Can Pet The Dog VR』は“今後発売予定の”『DOGGONE』のオープニングシーンを切り取って制作されたと説明されている。したがって本作は「Can You Pet the Dog?」ありきの突貫工事ではなく、『DOGGONE』を宣伝するために同アカウントを意識したプリクエル作品だといえるだろう。ちなみに8月29日午前の時点では、まだ本家アカウントからの反応は返ってきていない模様。


『You Can Pet The Dog VR』はPC向けにSteamにて520円で販売中。ちなみに本作は色覚多様性にも配慮しており、設定を調整することで色覚をもたない人もプレイ可能となっている。