『フォートナイト』のEpic Gamesに対し、Appleが開発者アカウント削除警告。Epic Gamesは、Unreal Engineの開発にも支障が出てしまうと主張

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Epic Gamesは8月18日、Appleより開発者アカウントの削除およびiOS/MacOS向けのアプリ開発に必要なツールの提供停止に関する警告を受けたと発信した。Epic Gamesが8月28日までにAppleのガイドラインに応じない場合、これらの処分が下されるという。

Epic Gamesが、Appleのガイドライン上禁止されている「独自のアプリ内決済手段」を『フォートナイト』内に実装したことで(Apple指定の決済手段を使わず、30%の取引手数料を回避する試み)、Appleデベロッパープログラムのライセンス契約に違反したからだ。これは先日Epic GamesがAppleを提訴したことへの報復措置であると、Epic Gamesは不服を申し立てている。

処分対象となるのはEpic Gamesの全アカウント。つまり同社のゲームエンジンUnreal Engineを、サードパーティーのiOS/Macアプリ開発者向けに開発・サポートする上でも支障が出てくると、Epic Gamesは主張。結果としてiOS/Macとの互換性を失えば、Unreal Engineを利用している開発者が不利益を被るだけでなく、同ゲームエンジンの競争力が低下。Epic Gamesのビジネス、信頼、評判にも悪影響が及ぶと述べている。

AppleがEpic Gamesの全開発者アカウントを停止すれば、『フォートナイト』だけでなく同社が開発するUnreal Engineに関連したビジネスにも影響が及ぶ。すると訴訟の判決が出る前にEpic Games側が潰されてしまうため、裁判所によるAppleに対する差し止め命令が必要だと、Epic Gamesは主張。以下のツイートでは、Epic Gamesがカリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所にあてた書類へのPDFリンクが添えられている。

【補足 2020/08/24 21:23】
Appleによる通告があったのは8月14日であり(PDFリンク ページ9参照)、それを受けてEpic Gamesが裁判所に一時差し止め命令を求むドキュメントを一般公開したのが8月18日である。

Epic Gamesが運営する『フォートナイト』は8月14日、App Store/Google Playから削除された。両ストアのガイドラインで禁止されている「ストア取引手数料を回避したアプリ内決済機能」をゲリラ実装したからだ。そしてストア削除から間もなくして、Epic GamesはAppleおよびGoogleを相手どる訴状を公開。AppleとGoogleはアプリの配信およびアプリ内での決済手段について、独占的地位を乱用し、市場における健全な競争を阻止しているのだと、Epic Gamesは訴えた(関連記事)。

Appleに対する訴訟では、AppleがiOS端末におけるアプリ配信手段をApp Storeのみに制限していること。またアプリ内課金の決済手段をAppleが用意した決済機能に制限していることを指摘。そうした独占状態を築いた上で、30%という高い取引手数料を課しているため、iOS端末のユーザーおよびアプリ開発者が不利益を被っていると主張。スマートフォンは今やPCと同じように、人々の日常生活における必需品となっていることから、PCと同様、開発者による健全な競争を許容すべきなのだと、Epic Gamesは述べている。

現にiOSのような市場支配力を有していないMac製品については、アプリの配信および決済手段について制限が設けられていないとも指摘。PCおよびスマートフォンが持つ、日常生活における浸透性。Epic Gamesが指摘対象としていない、コンソールプラットフォームとの違いでもあるだろう。そしてEpic Gamesの一連のアクションを受けて、Apple側は、Epic Gamesを特例扱いするつもりはなく、App Storeのガイドラインはストアの安全性を維持するため、すべてのデベロッパーに適用されるものだと返答している。

Epic Gamesは、App Storeからのアプリ削除直後にApple批判動画を公開し、独占禁止法違反を主張する訴状を一般公開した。Appleにアプリを削除されることを見越して、ガイドライン違反と知りながら独自決済機能をゲリラ実装したものと考えられる。そして訴訟に踏み切ると同時に、「Appleのせいでゲームを遊べなくなる」のだと、抗議運動に参加するよう『フォートナイト』ユーザーを扇動。ユーザーが不利益を被るとわかった上でガイドラインを破り、そのユーザーを味方につけようとセンセーショナルな手段を取ったことから、Appleによる市場独占という論点とは別途、Epic Gamesの振る舞い方についてもメディアやユーザー間で議論が展開されるようになっていった。

なおAppleだけでなくGoogleも訴訟対象になっているが、Android端末ではアプリの配信手段がGoogle Playに制限されていないこともあって、Appleに対する訴状ほど詳細な訴えにはなっていない。ただ、Epic Gamesがスマートフォンメーカーと、『フォートナイト』アプリを端末にプリインストールしてもらう交渉を進めていたところ、Googleがストップをかけたこと。またYouTubeといったGoogleのサービスでAndroidアプリを宣伝するにはGoogle Playのみで配信している必要があることなど、Googleが独占的地位を用いて、競争を阻止するために動いていると主張している。


AppleやGoogleの反競争・市場独占に異議を唱えたのは、なにもEpic Gamesが初ではない。両社の反競争・市場独占を懸念する声は近年高まりつつある。GoogleがスマートフォンメーカーにGoogle製アプリのプリインストールを強制したことで、2018年にはEUの反トラスト法違反により罰金を課されたことも(EU)。2020年6月には、EUの欧州委員会がAppleに対する調査を開始すると発表。主にアプリ内課金(IAP)機能の強制利用や、代替決算手段の制限が懸念視されている。欧州だけでなく米国でも、司法省がテック大手の調査に力を入れていくつもりでいると報じられている(VentureBeat)。

Epic Gamesによる一連のアクションは、Appleに譲歩を迫る機運が高まってきている中での出来事であった。AppleのApple Musicと競合するSpotifyは、早々にEpic Games支持を表明(AppleInsider)。以前よりFacebook Gamingアプリの機能制限に関してApple批判姿勢を見せていたFacebookも、Epic Gamesの『フォートナイト』がストアから削除された日と同日、App Storeの30%取引手数料を批判している(CNBC)。

Facebookは8月14日、Facebookアプリ上でのオンラインイベント開催機能を発表。COVID-19の影響を受けて苦戦する小規模企業やクリエイターを支援すべく、同機能を通じた取引について、最低1年間、Facebookは手数料を取らないと約束。Android版アプリについては、Google側も手数料を取らない。だがApp Storeで配信されるiOS版アプリに関しては、Appleと交渉するも、30%の取引手数料を減らす、もしくはFacebook Payによる決済を許容してもらうことは叶わなかったと伝えている。

Image Credit: Facebook

そのためiOS版Facebookアプリのオンラインイベント機能では、決済前のページに「この決済の30%はAppleの取り分となります」と記載するという。ユーザーがイベント開催企業を支援するつもりで決済しても、その企業に全額が渡るわけではないと明記するのは、ユーザーにとって重要な情報だからである。ただ、Appleの姿勢に同意できなくとも、ルールを無視して別の決済手段を設けるつもりはないと、FacebookアプリのプレジデントであるFidji Simo氏はコメント(Fortune)。Epic Gamesのような強行突破を試みるつもりはないようだ。

Epic Gamesの事例が示すように、強行突破に踏み切ることで不利益を被るのはアプリのユーザー。その影響の大きさを承知の上で、独自決済手段の実装に踏み切ったからこそ、Epic Gamesのアクションは強烈なインパクトを残した。このままApple開発者アカウントおよび開発ツールの提供を停止されれば、iOS版『フォートナイト』のユーザーは、ゲームの継続プレイがさらに困難になる。またEpic Gamesが主張するところによれば、『フォートナイト』に限らず、Unreal Engineを利用する多数の開発者にも影響が及ぶ。はたして先に引き下がることになるのは、Epic GamesとAppleのどちらになるのだろうか。

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