『フォートナイト』運営元、AppleとGoogleを提訴へ。禁じられた「ストア手数料回避」販売のゲリラ実装により、App Store/Google Playからアプリを削除されたことを受けて

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Epic Gamesの『フォートナイト』が8月14日、App Store/Google Playから削除された。きっかけとなったのは、Epic Gamesが「ストア取引手数料を回避してのアプリ内課金」をゲリラ決行したこと。アプリ内コンテンツを、各ストアのアプリ内課金機能を使わずに販売することはガイドライン違反。すみやかに削除された形となる。

そしてストア削除から間もなくしてEpic Gamesは、AppleおよびGoogleの独占禁止法違反を主張する訴状を公開。またゲーム内イベントとして、Appleはビッグ・ブラザー、独裁者になってしまったと皮肉る映像を流した。ガイドライン違反であることをわかった上で、またストアから削除されることを見越して決済機能を実装し、追撃の準備を進めていたのだ。ストアの取引手数料、決済手段の強制、そしてストア提供企業の市場独占を巡る、ユーザーを巻き込んだ争いである。

ストア取引手数料を回避する決済手段をゲリラ実装

きっかけとなったのは、Epic Gamesが8月13日に発表した『フォートナイト』の「メガプライスダウン – 最大20%の永久割引」。全プラットフォームにて、同作のゲーム内通貨V-Bucksおよび現金でのオファーを最大20%オフにするという値引き施策だ。ただしiOS/Android版については、通常の支払い方法だとストア手数料30%がかかる都合上、値引きできないと主張。そこでストアを介さずEpic Gamesに直接支払う「Epicディレクトペイメント」を発表し、そちらの方法で購入すれば割引が適用されると伝えた。たとえばゲーム内通貨1000V-Bucksの場合、Apple StoreのIAPおよびGoogle PlayのIAB(アプリ内課金機能)を使えば9.99ドル、Epicディレクトペイメントを使えば7.99ドル。どちらの方法で支払いますかとユーザーにポップアップ表示するわけだ。

App Store/Google Playの支払いオプションを使用すると値引きが適用されないが、Epic Gamesは「AppleまたはGoogleが将来支払いにかかる手数料を引き下げた場合、Epicはその引き下げ分をお客様に還元します」と記している。30%という取引手数料を課している各ストアが悪いのだと、実際に課金機能を使用するユーザーにわかる形で主張することで、各ストアにプレッシャーをかけていた。

30%の取引手数料は不当との主張


Epic Gamesは2018年、従来のスタンダードよりも低い「取引手数料12%」を基本としたEpic Gamesストアを開設。同社CEOのTim Sweeney氏は、オープンプラットフォームが、決済プロセスやダウンロード帯域、顧客サービスなどのコストとして売り上げの30%を要求するのは不当であると、当時から訴えかけていた。そうした主張もあり、2019年、Google Playの取引手数料の引き下げについて問われたGoogleは、30%というロイヤリティの必要性、価値について説明している(関連記事)。

Epic Gamesが不当だと思っているとはいえ、その取引手数料を回避するために、App Store/Google Play上で提供しているアプリにて、アプリ内のコンテンツを、各ストアの支払いオプションを介さない形で販売するのはNG。App Store/Google Playともに、各ストアのガイドラインにのっとりアプリを削除するという、当然の帰結へと至った。

のちにAppleは、海外メディアThe Vergeを通じ、Epic Gamesを特例扱いするつもりはないとの声明を出している。ストアの安全性を維持するためにも、App Storeのガイドラインはすべてのデベロッパーに適用されると説明。またEpic Gamesはガイドラインを破るという明確な意図を持って、独自の決済機能を実装したのだと伝えている。Epic Gamesは、App Storeの規約とガイドラインに自ら同意した上で長年App Storeを利用し、各種ツールやテスト機能、供給機能を含む同ストアのエコシステムの恩恵を受けてきたとも主張。ガイドライン違反の問題解消および『フォートナイト』のストア復帰に向けてEpic Gamesとともに最大限努力すると述べている。

これに対しEpic Games CEOのTim Sweeney氏は、特例措置を望んでいるのではなく、オープンなプラットフォームの実現に向けて、全デベロッパーが等しく恩恵を受けられるようなポリシー変更を求めているのだと返している。



ガイドラインではどう定められているのか

具体的なApp Store/Google Playガイドライン違反箇所について、以下抜粋:

App StoreのReviewガイドライン

3.1.1 App内課金:
Appのコンテンツまたは機能(例:サブスクリプション、ゲーム内通貨、ゲームレベル、プレミアムコンテンツへのアクセス、フルバージョンの利用)は、App内課金を使用して解放する必要があります。コンテンツや機能を解放するため、ライセンスキー、拡張現実マーカー、QRコードなど、App独自の方法を用いることはできません。App内課金以外の方法で、ユーザーを何らかの購入に誘導するボタン、外部リンク、その他の機能をAppやメタデータに含めることはできません。

Google Play 収益化と広告お支払い

デベロッパーは、Google Play からダウンロードされたゲーム内でプロダクトを提供する場合や、ゲーム コンテンツへのアクセス権を提供する場合、支払い方法として Google Play アプリ内課金を使用しなければなりません。

こうした条件があることから、NetflixやKindleのように、取引手数料を回避するためアプリ内で課金機能を設けていないケースも多い。なおAppleのReviewガイドライン3.1.5(a)で「ユーザーがAppの外部で使用する商品やサービスをAppで購入できるようにする場合、そうした商品の支払いにはApp内課金以外(Apple Payやクレジットカードなど)の方法を使用する必要があります」と記されているように、ゲームや動画といった「アプリ内のコンテンツ」ではない、「アプリ外で使用する物理的商品やサービス」は例外とされる。そのためAmazonでの購入やUberなどは規定対象外。Google Playも同様、「物理的な商品のみの支払い」「そのアプリ以外で消費できるデジタル コンテンツに対する支払い」は例外として定めている。

『フォートナイト』の場合はそうした例外に当てはまらない、「アプリ内のコンテンツ」に関わる決済になるため、独自の取引手段を設けることは、ガイドライン上NGとなる。

Appleをビッグ・ブラザーとして描く


App Storeからの削除後にEpic Gamesが公開した上の映像は、Appleが1984年に公開したMacintosh用テレビCMのパロディ。元ネタとなるAppleのCMは、独裁者であるビッグ・ブラザーの演説が流れるテレスクリーンを、女性がハンマーを投げて破壊するというもの。CMの最後で「1984年1月24日、Apple ComputerはMacintoshを発表します。1984年が、小説“1984年”で描かれているような世界にはならない理由がわかるでしょう」とのナレーションが流れる。当時はAppleがIBMによる市場支配を打破するという意図が込められていた。

対しEpic Gamesが公開した「Nineteen Eighty-Fortnite」は、かつて支配者を批判する側だったAppleが、支配者の側にまわってしまったと揶揄する内容になっている。テレスクリーンに映っているのは腐ったリンゴのキャラクター。そのスクリーンを、『フォートナイト』のキャラクター「ブライトボンバー」がツルハシを投げて破壊する。映像の最後に流れるナレーションは、「Epic GamesはApp Storeの独占に異議を唱えました。報復として、Appleは10億のデバイスでFortniteをブロックしています。fn.gg/freefortniteへアクセスし、2020年を「1984」にしないための闘いに参加してください」。


ナレーションで流れたURLのリンク先ページでは、ユーザーに向けて、「#FreeFortnite」ハッシュタグを使い、SNS上での@AppStoreに対する抗議に参加してくださいと訴えかけている。Appleが30%もの取引手数料を課しているせいでゲーム内アイテムが高くなっているのだと、ストア手数料を回避した購入手段によりユーザーが値引きの恩恵を受けられないよう『フォートナイト』をブロックしたのだと、そしてAppleのせいで新しいチャプター2シーズン4を遊べないのだと(*)、Appleを明確な悪者として描くことで、ユーザーを味方につけての抗議運動に発展させようとしている。すべてのプレイヤーは、支払い方法に複数の選択肢が与えられるべきであり、それを妨げるAppleが悪いのだという主張である。

*App Storeからダウンロード済みのプレイヤーは今のところプレイできるが、アップデートが適用されないため、このままストアに復活しなければ、今後遊べなくなる見込み

Epic Gamesが、Epicディレクトペイメントを削除すればストアでの配信は戻るはず。そうすればプレイヤーはゲームを遊べる。それでもEpicディレクトペイメントを削除しない理由についてEpic Gamesは、「プレイヤーは、より効率的な購入オプションを選択することで出費を抑える権利を持っているのだと、私たちは信じています。Appleのルールのせいで、みなさまの全取引に30%ものストア税がかかり、また私たちのように直接購入のオプションを提供できるデベロッパーを苦しめています」と、先述したfn.gg/freefortniteのページにて答えている。

Appleに向けられる、独占禁止法違反の疑い


近年Appleに向けられている批判は、単にストアの取引手数料が高いという点だけではない。今年6月にEUの欧州委員会は、AppleのApp StoreとApple Payに独占禁止法違反のおそれがあるとして調査実施を発表。アプリ内課金(IAP)機能の強制利用や、代替決済手段の制限が問題視されている。続く7月には、AppleがAmazonのPrime Videoアプリ内動画レンタルを例外扱いし、30%ではなく15%の取引手数料を課すとの合意を結んでいたことが、明るみに出た(Bloomberg)。

また8月には、App Storeのガイドライン違反により、クラウドゲームサービスProject xCloudはiOS端末にてサービス提供できないと報じられた(関連記事)。クラウドゲームサービス上で提供されるゲームコンテンツを、個別に審査できないため、という理由であった。Epic Games CEOのTim Sweeney氏は、Appleの方針をかねてから批判しており、Twitter上で頻繁に発言している。

Appleに限らず、テック大手に対する風当たりは徐々にきつくなり、市場独占にメスを入れる機運は高まってきている(米国司法省もテック大手の反トラスト調査に力を入れるつもりであると報じられている。VentureBeat)。そうした状況だからこそ、Epic Gamesは勝算を見出したのだろう。追い風が吹いている中で、AppleやGoogle、そしてテック大手を調査する機関が無視できない事件を起こす。自らが抱える何億ものユーザーを扇動し、味方につけた上で。

なおこのたびEpic Gamesが提出した訴状(PDFリンク)では、Appleに対する損害賠償請求が含まれていない。あくまでも「アプリ配信市場の独占」と「アプリ内課金機能(IAP)の強制」という2つの分野を軸に、米国独占禁止法違反を訴えるものであり、モバイルアプリの配信にあたり公平な競争を求めている。Appleはアプリの配信およびアプリ内課金に関して法外な制限を設けているのだと主張。主に支払い手段を強制している点を、Epic Gamesは問題視している。

iOS端末のような市場支配力を有していないMacに関しては、『フォートナイト』をEpic Gamesストアにて配信することができるし、アプリ開発者はAppleの決済機能だけでなく独自またはサードパーティの決済機能を自由に使用し、ユーザーに提供できるようになっていると指摘。iOS端末においても、決済手段について同じような基準を採用すべきだと訴えている。
【UPDATE 2020/08/14 14:30】PDFのリンクを訂正。Macに関する主張を追記。
【UPDATE 2020/08/15 2:00】テック大手に対する風当たりがきつくなってきている点について加筆。

この支払い手段の強制(30%手数料の強制)によって、消費者は価格の上昇という不利益を被っていると説明。その証拠として、Epic GamesはEpicディレクトペイメントの実装によりアプリ内アイテムの価格を下げることができたと提示している。ここまで具体例付きの詳細な訴状が用意されていたことから、Epicディレクトペイメントは、ストア提供元をアンチ消費者企業として映し出すための、わかりやすい材料作りとして仕組まれたものだと捉えられる。

Googleも提訴対象


『フォートナイト』はApp StoreだけでなくGoogle Playからも削除されており、Googleに対しても、Appleと似た訴状を提出(The Verge)。なおアプリ配信手段がApp Storeに絞られているiOS端末と違い、Android端末ではGoogle Play以外のアプリ提供手段が残されているという違いがある。Android版『フォートナイト』は今でも、Google Playを介さないEpic Games appとSamsung Galaxy Storeからのダウンロードが可能だ。

もともとAndroid版の『フォートナイト』は公式サイトからの直接ダウンロードのみで配信されていたが、2020年4月になってGoogle Play上での配信を開始。当時のEpic Gamesは、Googleがビジネス上の措置を通して、Google Play外でダウンロード可能なソフトウェアを不利な立場に追い込んでいると語っていた(関連記事)。察するに、Android市場で戦っていくためにはGoogle Playで配信せざるをえなくなったのだろう。そうした背景もあり、Epic GamesはGoogleのスタンスにも納得は示していなかった。そして今回のストア削除を受け、Appleに対するものと同様、Epic Gamesが望む公平な競争の場を実現するための訴状が提出された。

Appleに対する訴状では、IBMの市場支配を批判していたAppleがいつしか市場を不当に支配する側にまわったと批判していた。一方のGoogleに対する訴状では、「Don’t Be Evil(邪悪になるな)」というモットーを掲げていたGoogleが、いつしか邪悪な企業に成り代わってしまったと記述している。市場を不当に独占し、ユーザーがモバイルデバイスを自由に使うことを妨げているのだと。Epic Gamesは、かつてGoogleが約束したオープンなAndroidエコシステムの実現を求めていると説明。たしかにGoogle Play以外でのアプリ配信手段はあるが、先述したようにGoogle Play以外での配信手段だと不利益を被るような措置をGoogleが取っているとして、事実上Google PlayがAndroidアプリ配信市場を独占しているのだと、Epic Gamesは主張している。

Epic Gamesは、Epic Gamesストアの運営によって証明しているように、自身でアプリの配信プラットフォームを作るだけの力を有している。また、自前の決済手段も用意できる。だがAppleとGoogleの現ポリシーでは、それらを健全な競争環境下で実行に移せない。アプリの配信と決済手段、この2つの分野におけるモノポリーを止めるというのが、Epic Games側が主張し、目指すところである。
【UPDATE 2020/08/14 14:45】対Google訴状について追記。

先述したように、すでにAppleはEUによる調査を受けていたりと、Epic Games側が支持を受けやすい環境ができあがっている。なおEUによる調査は、Spotifyによる訴えがきっかけとなっていた。Appleは30%の取引手数料を課すことにより、SpotifyはApple Musicよりも高い価格でサービスを提供せざるを得なくなっているという訴えだ。そしてそのSpotifyは、Epic Gamesのアクションを支持すると表明している(AppleInsider)。

企業からの支持を集めやすい状況下で、さらに世界中にいる『フォートナイト』ユーザーを巻き込み、消費者からの視線も無視できない形でApple、そしてGoogleに勝負を挑んだEpic Games。モバイル版『フォートナイト』および訴訟の行方に注目が集まる。

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