『ポケモン』ホウエン地方を『あつまれ どうぶつの森』で再現。努力の狂人が無人島にやってきた

Image Credit : 鈴木けんぞう / 任天堂

『あつまれ どうぶつの森(以下、あつ森)』のマイデザインで、ある別のゲームを再現した作品が話題を呼んでいる。そのゲームとは『ポケットモンスター ルビー・サファイア・エメラルド(以下、ポケモンRSE)』だ。ひとりのプレイヤーがゲームボーイアドバンスのドット絵で描かれた草むらや地面を、マイデザインのピクセルアートで忠実にコピー。出来上がった膨大なデザインを島じゅうの床に敷きつめることで、「ホウエン地方」の世界をそのまま『あつ森』で表現してみせた。その出来栄えは『ポケモン RSE』がSwitchに移植されたのではないかと見間違えるほどだ。制作にかかった時間はなんと13時間以上に及ぶという重量級のプロジェクト。その偉業を成し遂げた人物こそ、数々の『ポケモン』やり込みプレイで知られる実況者・鈴木けんぞう氏である。いったいその忍耐力はどのように維持されたのだろうか。

動画が投稿されたのは3月24日のこと。「【ポケモンRSE】野生のジグザグマが現れた!!!」と題したクリップには、どこか目の錯覚を疑うサムネイルが掲げられている。写っているのは、ある世代にはよく見慣れた『ポケモンRSE』のドット絵。しかしその上に立っているのは紛れもなく『あつ森』のまめきちである。鈴木氏はマイデザインを使い、『ポケモンRSE』に登場する地面や草むらなどのドット絵をリアルに再現。島じゅうの床に敷きつめ、まるでゲームボーイアドバンスのマップをそのまま切り取ってきたかのような景観を再現している。立体感のある段差や水辺なども完全にコピーされており、海の上をむらびとが走り回る場面は思わずバグかと見間違えるほどだ。

誰が見てもまごうことなき「ホウエン地方」を創り出すことに成功した鈴木氏は、しばし島の散策を楽しむ。クマの住民・たいへいたを見かけて「リングマだ!」、ドジョウを釣り上げて「ドジョッチだ」など、『どうぶつの森』のキャラクターや要素をポケモンに見立てて笑いを誘う。またマップだけでなく服装もホウエン仕様。ワンピースに赤と黒のデザインをほどこし、敵対組織マグマ団のリーダー・マツブサになりきっていた。

Image Credit : 鈴木けんぞう / 任天堂

懐かしいドット絵や軽妙なトークで思わずほっこりしてしまいそうな動画だが、その裏には並々ならぬ執念が秘められている。鈴木氏は本動画を投稿する2日前、「あつまれマボロシ島(どうぶつの森)」と題した実況プレイ生配信を実施。その配信時間は、分割された分も合わせると驚愕の13時間を誇る。配信内で、鈴木氏はすべてのドット絵素材を目コピで再現。開始当初は勇気凛々・意気揚々で作業していた同氏だったが、6時間目に突入しようかというころには疲労とストレスが蓄積。「『どうぶつの森』ってこんな腹立つゲームだっけ」と独りごちるのに対し、コメント欄には「これはどう森と呼べるのだろうか」「流石に寝ないと死ぬわ」などとツッコミ・心配が寄せられた。こうした努力を知る視聴者らは、バッサリとダイジェスト化された動画本編を観て「約1分半に収める動画の内容ではない」と困惑の声を挙げている。

鈴木氏はもともと、膨大な時間をかけた縛り・検証系動画で名を馳せる実況者だ。初投稿作品である「最初の草むらでレベル100にするポケモンルビー実況」は、ゲーム開始直後の町を出てすぐの草むらの中だけで全手持ちポケモンのレベルを100にする企画。1匹あたりにかかる時間は350〜500時間におよび、レベリングだけで約1年を要したこの企画は処女作にしてミリオン再生を突破した。また「色違い全国図鑑を作るポケモンサン実況」では、すべてのポケモンを色違いで捕獲するという気の遠くなるようなプロジェクトに挑戦している。

今回の企画について鈴木氏本人を直撃したところ、『どうぶつの森』シリーズのマイデザインを使った遊びは以前からネットで見かけて視野に入れていたそうだ。実際にトライしてみての感想を尋ねたところ、「進捗が目に見える作業なのであまり苦しくはありません」との回答。タフガイすぎる答えだが、ふだん色違い厳選や「1等が出るまでくじを引く」といった先の見えない作業と闘う鈴木氏ならではの精神力といえるだろう。

3月26日には島内すべての地面にデザインを貼り終えた鈴木氏。ホウエンの大地創造を成し遂げたせいか、マツブサ度も上がっている。今後もまだ明かせない企画を計画中とのことで、いったい何を達成するのか期待と心配が高まる一方だ。

弊誌別記事でも紹介したように、『あつ森』では世界中のプレイヤーが創造したマイデザインを味わえるのも大きな楽しみの1つ。今後もデザイナーたちが見せるクリエイティビティが界隈を賑わせていくことだろう。