自由な創造ゲームでも「PS4でマリオ」は許可されず。任天堂が『Dreams Universe』に対し権利侵害を申し入れる

 

SIEワールドワイド・スタジオのMedia Moleculeが手がけ、PS4向けに販売中のゲームクリエイティブプラットフォーム『Dreams Universe』。本作のクリエイト用ツールは自由度が極めて高く、シェアされているユーザー作成コンテンツの中には、実在のゲームを再現するようなものも見られる。たとえば『クラッシュ・バンディクー』や『ソニックアドベンチャー』『Portal』『メタルギアソリッド』など。クオリティの高い作品も多く、アーリーアクセス時から話題になっていた。そうしたなか、とあるユーザーが制作した「マリオ」が、著作権侵害であるとしてゲーム内から削除され話題となっている。

TwitterユーザーのPiece of Craft氏は3月21日、『Dreams Universe』内で制作したマリオのスクリーンショットを投稿。そこには、著作権登録された素材が含まれているためゲーム内から削除したとのメッセージが表示されていた。これを受けて、同氏自身がこのマリオをリミックスすることは依然可能だが、オリジナルをエディットすることはもうできず、ほかのプレイヤーとの共有も不可能となっているそうだ。

また別のツイートでは、ソニー・インタラクティブエンタテインメント欧州法人の法務部から、同氏のPlayStation Networkの登録メールアドレス宛に通知があり、任天堂からの抗議を受けたために取った措置であると記されていたという。

これまでRedditなどのコミュニティサイトでは、上に挙げたような再現系作品は著作権侵害と判断されるのかどうか定期的に話題に上っていた。本作のヘルプ&サポートページには「著作権の侵害について」というページが用意されており、他者の著作物を『Dreams Universe』に投稿した場合は、著作権侵害についての警告を受けることがあると記載。そのうえで、フェアユースあるいはフェアディーリングにあたると考えるならば異議を申し立てることが可能だとしている。

このように、開発元Media Moleculeは一旦は警告を出すものの、再現系作品に対する明確な立場は示していないことが分かる。一律に判断しにくい側面もあるのだろう。そのためユーザーとしてはどこか不安な気持ちが残り、コミュニティにて定期的に議論する流れとなっていたのかもしれない。

似たケースとしては、ゲーム内キャラクターなどを置き換えるModが挙げられる。たとえば「きかんしゃトーマス」は今やMod界隈ではおなじみの存在となっているが、こうしたModはフェアユースにあたるとの考えがあり、権利者からも黙認されることが多い。ただ、『Dreams Universe』にてゲームとして再現した場合は、引用の範囲を超えておりフェアユースとは認められない可能性がありそうだ。

もともと、任天堂は自社の著作物の管理について徹底していることで知られ、またマリオなどのキャラクターの他社使用に関しても厳しいレギュレーションをもって監修をおこなっている。今回マリオの取り下げ処分を受けたPiece of Craft氏は、『Dreams Universe』での制作過程をTwitchにて解説するためのものであると説明しており、それをもってフェアユースを主張したかったのかもしれない。しかし任天堂からすると、そうした用途であっても無視することはできないということなのだろう。

なおSIEは、任天堂からは複数のユーザー作成コンテンツについて申し立てを受けており、ケースバイケースで判断しながら、対象ユーザーに警告を発したのちコンテンツを削除する方針だそうだ(GamesIndustry.biz)。これをきっかけに他社も任天堂に追随することになるのか、それとも黙認を続けるのかどうか注目される。