『ファイナルファンタジーVII リメイク』は、どのように変化したのか。原作と体験版を、グラフィックと内容の両方で比較

本稿では2013年に発売された『ファイナルファンタジーVII インターナショナル for PC』日本語版をオリジナルグラフィックスモードに設定したものと、『FF7R』体験版を使用し、1か月後に発売を控えた本作がどのようにリメイクされているのか、グラフィックと内容両方の面でシーンを比較してみることにした。

スクウェア・エニックスが4月10日に発売予定の『ファイナルファンタジーVII リメイク/FINAL FANTASY VII REMAKE(以下、FF7R)』。これまでイベントでの展示やPVの公開など、情報の公開が行われてきたが、3月2日に体験版が配信されたことにより、「壱番魔晄炉爆破作戦」だけとはいえ大幅に進化したゲーム内容が誰でもすぐに体験できるようになった。

しかし、20年以上前に発売された長編RPGの序盤を、詳細に覚えているだろうか。少なくとも筆者の脳裏には、大まかなストーリーや、爆弾を仕掛けて脱出するシーンを含め、印象的な部分が残っている程度で、原作の詳細な内容は答えられない。

そこで、本稿では2013年に発売された『ファイナルファンタジーVII インターナショナル for PC』日本語版をオリジナルグラフィックスモードに設定したものと、『FF7R』体験版を使用し、1か月後に発売を控えた本作がどのようにリメイクされているのか、グラフィックと内容両方の面でシーンを比較してみることにした。なおその性質上、本稿には『ファイナルファンタジーVII(以下、FF7)』の序盤及び『FF7R』体験版のネタバレを大いに含んでいる。予めご了承いただきたい。

 

ミッドガルでの戦い

シーンの比較に入る前に、大まかな違いから触れていこう。原作である『FF7』は、スクウェアが開発し、1997年にPlayStation用として発売された作品だ。舞台となるのは、神羅カンパニーによって実用化された魔晄エネルギーにより、人々の暮らしが支えられている世界。魔晄炉が恩恵をもたらしている一方、魔晄炉のある土地は痩せていく傾向があり、こうした側面から神羅カンパニーに異を唱えるものも存在している。そんな反神羅の思想を持つ団体の一つが、バレットやティファの属するアバランチだ。

元は神羅の精鋭・ソルジャーだったと自称する主人公のクラウドは、傭兵としてアバランチの活動に加担。大都市ミッドガルにある8つの魔晄炉の1つ「壱番魔晄炉」の破壊作戦へ参加し、やがて星の命運を賭けた戦いに巻き込まれていく。

ポリゴンによる抽象的なグラフィックで世界を表現。マテリアルの成長要素などを採用した、アクティブタイムバトルの戦闘。当時の最先端の技術やアイデアを取り入れ、長大な物語をCD3枚組によるボリュームで描いた作品だった。改めてオリジナルをプレイしたが、『FF7R』の体験版に相当する、壱番魔晄炉破壊作戦から脱出後の爆破シーンまでのプレイ時間は約20分だった。結論からいうと、この20分間は、『FF7R』体験版では3倍の約1時間になっている。シーン単位でいってもかなり長くなっているということだ。

プレイ時間が大幅に増えている要因は、戦闘システムがアクション寄りに変更されたことや、グラフィックを含めたディテールの追加によるものだ。原作と比べて、各キャラクターの描写・シーンの追加が行われており、少なくとも体験版においては、掘り下げによってプレイ体験が大幅に拡張されたといえる。

 

拡張されたプレイ体験

 

では具体的にどのように変化しているのだろうか。オープニングシーンのラストから触れていこう。画像は原作ではバレットが手招きし、クラウドが列車の上から降りてくるシーンと、その直後のものだ。ポリゴンで描かれていた駅の風景が、最新の技術とディテールへのこだわりにより、カラーコーンや看板、床の汚れや凹凸まで表現したものに変わり、実在感が増している。それだけでなく、奥に見える赤い信号、画面ギリギリに映っている時計塔、駅の建物の造形などは、両者が同じ場所であることを示す。また、このシーンにおけるバレットのセリフは、共にクラウドが新参者であることを表しつつ、その後の展開へつなげるものだが、この時点からタイミング・セリフの内容が変化している。

原作では、ビッグスの「さすが、ソルジャー!でもよ、反神羅グループアバランチにソルジャーが参加するなんてすげえよな!」というテンション高めのセリフから始まる1シーン。『FF7R』体験版では、上記のジェシーのセリフからスタート。ビッグスが元ソルジャーの参加に肯定的な点は同じだが、リメイク版では盲目的に信用しているわけではなく、戦力として必要だから受け入れる姿勢へと変わっている。また、ビッグスとジェシーのデザインも、頭部の赤いハチマキなど原作の特徴を残しつつ、作戦中の反神羅組織らしい装備を追加し、ただ綺麗なだけではないリアルなキャラクターへと進化を遂げている。なお、元ソルジャーのクラウドらしいセリフも健在だ。

警備兵およびガードハウンドとの戦闘シーン。警備兵は、夜間警備用のスコープが追加されているほか、青を基調に一部プロテクターを着けた装備から、黒をベースにした神羅の兵隊らしい装いへと変わっている。首から口までを覆っていた黄色のスカーフらしきものは姿を消し、スコープが追加されたことで正面からでも顔が隠れそうだ。ガードハウンドは、原作の縦に長く黒いイメージをそのままに、全体のグラフィックにあわせたディテールが追加されている。ランダムエンカウント方式だった戦闘も、フィール上に存在する敵とシームレスにバトルが始まるようになっており、没入感が向上。また、魔晄炉侵入までにはマップが追加されていて、より詳細に侵入の工程が描かれていく。

 

上の画像は、ウェッジと別れ、魔晄炉内部へと侵入する通路のシーンだ。壁面の傷、倒れたカラーコーン、何らかのコード、柵上で赤く光るライトなど、この場所ならこういうものがあるだろうと言わんばかりのオブジェクトたちが大量に追加されている。その直後、バレットとクラウドの会話シーンでは、魔晄炉に来たことがあるのかバレットが尋ねる部分は同じであるものの、原作ではその後バレットが魔晄エネルギーについて語り始めていたのに対し、なかなか答えようとしないクラウドに苛立ちを見せる内容へと変化している。

エレベーター内のシーンは、原作ではバレットがクラウドに向かって星が死んでしまうと語り、ビジネスライクなクラウドの返答に背を向けて怒りを堪える場面だった。『FF7R』では、同様のクラウドの発言に対して距離を詰め、今にも掴みかかりそうな緊張感のある一瞬が描かれる。これらのシーンに限らず、『FF7R』では、バレットはクラウドに向かって、元ソルジャーである不信感以上の何かを感じさせるような振る舞いを見せる。原作でも仲の悪い設定だったが、全体を通してバレットは感情的になっており、険悪な2人の関係が描かれている。

そうしたバレットの感情的な言動は、ゲームプレイに彩りを加えている。特に感じられたのが、『FF7R』で強化された壱番魔晄炉のボス、ガードスコーピオン戦だ。ガードスコーピオンは、高めの耐久力とギミックの追加によってかなりの強敵になっており、苦戦を強いられる。そのため、戦闘中のセリフも状況に応じたものが多く用意されており、攻略法を尋ねて知っていたなら早く教えろと怒ったり、クラウドへの回復をしないといってみたり、険悪な2人が憎まれ口を叩きつつも、共通の敵へ向かって立ち向かっていく様子は微笑ましくすらあった。現時点では変更の意図はわからないが、体験版において良い効果をもたらしているのは確かだろう。

印象的な魔晄炉最深部は、原作のデザインを継承しつつ、一部の変更とディテールの追加が行われている。原作でも通路の下には水面が描かれ、魔晄の光がぼんやりと画面を緑色に照らしていた。『FF7R』体験版では、魔晄だまりがはっきりと、どこか禍々しさをともなって描かれ、魔晄炉最深部を不気味に染め上げている。同じく印象的なジェシーを助けるサブイベントは、脱出中の1シーンに変化。崩落の起こるシーンからしっかりと描かれ、共に脱出する展開や、バレットとの別行動もあわせて、爆発までの緊張感あるシーンを盛り上げるイベントになっている。ジェシーが脱出に四苦八苦する中、クラウドが超人的な身体能力で落ちていく足場から飛び移っていくシーンも追加されていた。

 

追加シーン

原作ではカットされていた駅の中。神羅建設の看板、列車の運行情報を表示した電光掲示板、路線図、改札や自動販売機に至るまで作り込まれている。駅に限らず、原作では描かれていなかったロケーションが数多く用意されている。
追加シーンの1つ。本作では、壱番魔晄炉爆破作戦の段階からハイデッカーとプレジデント神羅が登場し、何らかの企てを行っている。描写の追加によって、後の展開の印象も変わってくることだろう。

分作の1作目として、『FF7』の序盤、ミッドガル脱出までが収録される『FF7R』。公開されるスクリーンショットやPVからグラフィックへのこだわりが感じられる反面、ボリュームを不安視する声もあったが、グラフィックだけに留まらず、原作のゲームプレイを補強し、拡張する形で全体的に変更やディテールの追加が行われており、製品版への期待が高まる体験版だったといえる。体験版は、PlayStation Storeにて無料配信中。製品版『FF7R』は、4月10日にPlayStation 4向けとして発売予定だ。

Keiichi Yokoyama
Keiichi Yokoyama

なんでもやる雑食ゲーマー。作家性のある作品が好き。AUTOMATONでは国内インディーなどを担当します。

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