Steamレビューにて、「トピックのずれた不評」を評価から除外するシステム導入へ。低評価爆撃問題にテコ入れ

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Valveは、Steamにおけるユーザーレビューを再考し、新システムを導入する予定があることを発表した。その内容は、「トピずれの(論点のずれた)レビュー荒らしを特定し、レビュースコアから除外する」というもの。Steamでは、販売されているゲームに対しユーザーがレビューをすることが可能。レビュー内容は、ゲームプレイに関するものからバグに関するもの、ローカライズの有無やゲームの価格、サービスについての賛否まで幅広い。そうしたレビューにおける、論点のずれたレビューをスコアから除外するというのが今回の趣旨だろう。

Valveは以前より「プレイヤーがゲームのレビュースコアを下げる目的で、短期間に大量のレビューを投稿すること」をレビュー荒らしと定義し、問題視してきた。その対策の一環として、現在ではレビューの傾向をグラフ化し、全体のレビューと最近のレビューのセクションに分け、“なにかがあった”ことを可視できるような設計がなされている。たとえば先日『還願 Devotion』に中国の習近平主席を侮辱する描写が含まれていることが判明した際に、中国ユーザーが同ゲームのレビューに低評価爆撃をおこなった(関連記事)。この爆撃は『還願 Devotion』(現在販売停止中)だけに留まらず、開発元の前作『返校 Detention』にまで及んだ。同作のストアでは、そうした爆撃があったことをひと目でわかるようになっている。

ただし、レビューを見たユーザーが何かがあったことを把握できるようにはなったものの、こうしたレビュー荒らしの投稿は、ストアの右上に表示されるゲームのレビュースコアに反映される。対策はされど、レビュースコアを下げるという狙いは達成されている。そこで今回、論点のずれたレビュー荒らしを、スコアから除外するという決断がなされたわけだ。

具体的な手順はというと、Valveの構築したツールにより、Steam上のすべてのゲームにおける異常なレビューの動きをリアルタイムで検出。 検出がおこなわれたのち、Valve社内のチームが調査をおこなうというもの。調査チームが、異常な活動がトピックのずれたレビュー荒らしであることを確認した場合、その活動期間にマークを付けて開発者に通知し。 そして、その期間内のレビューは、レビュースコアの計算から除外されるという流れ。

つまり、ツールによる検知と人間による分析により、「トピずれ荒らしに対するスコア除外」が期間単位でおこなわれるのだろう。なおユーザーは、そうしたトピずれ荒らしのレビューを「除外しない」こともできる。すべての評価を含んだレビューを見ることも可能。チェックボックスよりオプションとして選ぶことができるようだ。

問題になるのは、やはり「どのレビューをトピックずれに含むか」。たとえばValveはDRMやEULAの変更などに関連する低評価レビューについては、トピずれに含めるという。その理由として「一般的なSteamプレイヤーはこうした事柄にそれほど興味を持っておらず、それを含めない方が、レビュースコアが正確になる」と説明している。そのほか含まれそうなケースとして、Valveはレビュー荒らしを定義する際に「開発者のネット上での発言や、他のプラットフォームのバージョンと Steam バージョンとの相違点に対する不満や、開発者の政治的信念に対する嫌悪感の表明」などを例としてあげている。Valveは「有用性のあるレビュー」を重要視していることから、前述した例は「トピずれ荒らし」として認定されると可能性は高い。ゲーム自体は高く評価されていながらも、中国人プレイヤーの爆撃によりレビューステータスが「ほぼ不評」に変化した前出の『還願 Devotion』は、販売が再開されたのち、スコア除外が適応されれば大きくゲームの評価が変わることになりそうだ。

ユーザーの反応はというと、コメント欄では「検閲である」とし、今回の決断に反発する声は非常に目立つ。そもそも「DRMやEULAの変更」についてのレビューはトピックずれではないと反論する声も多い。もちろん、「ゲームレビューとしての有用性」という基準は定められているものの、最終的な判断をくだすのはValveの調査チーム。「どのレビューをトピックずれであると含むか」というのは、そのチームの判断に委ねられることになる。Valveは最近特に審査面の曖昧さおよび不透明さから、「判断力」に問われるケースが多々ある(関連記事)。そんなValveのチームが「トピックずれ」についての判断をするとなれば、疑問視する声が出てくるのは自然であるだろう。

さらに低評価爆撃は、ユーザーがデベロッパーやパブリッシャーになにかを抗議する際に、非常に有用な場所であることはたびたび実証されてきた。対応を放置するとゲームの評価が下がるゆえに、見過ごすことができないのだ。政治的な主張にも利用されることも多々あるが、一方でこうした低評価爆撃は、価格や仕様に関するものなど、放置するとユーザーが不利益を被りかねない問題を提起するケースもある。一部地域にのみ、合理的な理由なしでゲームの高価格をつけるデベロッパーに対して、ユーザーがレビュー荒らしをすることに、正当性を感じる人もいるだろう。こうした抗議の場所が、部分的に失われることに危機感を覚えるユーザーがいるのも理解できる。

2017年10月に中国版『PUBG』に広告が導入されたことにより、低評価爆撃があったことを報じる弊誌のニュースには、「レビュー荒らし」という呼称がそもそも適切ではないというフィードバックも寄せられていた。「レビュー荒らし」という言葉も、単純に言葉だけでは内容を説明できない性質を持つ。

Steamレビューは、多くの試行錯誤を重ねて改良が進められただけに、インターネットにおけるユーザーレビューの場としては、有用なコンテンツのひとつになりつつある。そうしたSteamレビューが「トピックずれ」に影響されるケースが増えてきたとなれば、対策されるのは時間の問題。ともあれ、対応が非常に難しい問題でもある。Valveは「本機能に関しては現段階でも出荷する価値があると判断しました。 いつものように、ご意見や懸念などがあれば、以下のコメント欄でお知らせください。」という言葉で告知を締めているように、ここからこの機能が覆される可能性もある。もし意見などがあれば、コメント欄の議論に参加してみるといいだろう。

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