Steamのインディーゲーム開発者、不遇の時が続く。大型タイトルの優遇やトラフィックの激減を受けて、開発者から不満の声

Valveが12月1日に発表したSteam配信契約の変更に対し、一部インディー開発者より批判的な意見が寄せられている。また複数の開発者が、この2か月間でSteamのディスカバリー機能からのトラフィックが激減したことを報告。Valveがビッグタイトルを優遇することで、インディータイトルが割りを食っているのではないかと懸念視されている。

まずSteam配信契約の変更内容を振り返っておこう。これまでSteamでリリースされたゲームの収益分配率は一律でValve30%/パートナー70%となっていたが、2018年10月1日以降、Steamにおけるゲームの収益が1000万ドル(約11億円)に達すると、その後の収益に対するValveの取り分が25%に変更。さらに5000万ドル(約56億円)にまで達すると、それ以降の収益に対するValveの取り分が20%まで引き下げられる(収益には、ゲームパッケージ、DLC、ゲーム内販売、コミュニティマーケットプレースのゲーム料金が含まれる)。

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Valveはこの変更について、ビッグタイトルを優遇するための施策であると公言。最近のビッグタイトルおよび大手パブリッシャーによるSteam離れに対するテコ入れのひとつと考えられる。自社タイトルをOriginで配信しているElectronic Arts、Battle.netで独占配信されているPC版『Call of Duty: Black Ops 4』『Destiny 2』、Bethesda.netでのみ配信されているPC版『Fallout 76』などが脱Steamの一例である。すでにファンベースが確立しており、自前の配信プラットフォームを用意できる大手パブリッシャーは、ロイヤリティを抜かれない自社プラットフォームで販売した方が、旨味が多い。今回のロイヤリティ変更は、そうした大手のSteam離れを食い止めるためのインセンティブと言えるだろう。Steam全体の求心力を保つためにも、ヒットタイトルには残ってもらわなくてはならないというわけだ。

『Fallout 76』

 

インディー開発者の反発

そうしたビッグタイトルの優遇策に反発するインディー開発者の声も寄せられており、ミュージカルアクション『Wandersong』の開発者Greg Lobanov氏は、儲かるタイトルがより儲かる新しい仕組みについて、ロイヤリティ変更の恩恵を得られないそのほか多数の開発者への顔ビンタであり、本来はその真逆の仕組みになるべきではないかと語っている。

Steamの主張としては、ヒットタイトルとその巨大なオーディエンスがSteamに残ることで、ほかのタイトルも恩恵を得られるというロジックになっている。だがLobanov氏は、Steamのアルゴリズム上、人気のないタイトルは露出されないため、実際には小規模なタイトルにまで恩恵が回ってくることはないとコメント。今回のビッグタイトル優遇はゲームコミュニティやマーケットにとって健全なものではなく、『Wandersong』のようなニッチで実験的な作品にとって不利な内容であると語っている。

『Nuclear Throne』などで知られるVlambeerのRami Ismail氏も、インディー開発者の視点からValveの判断を否定的に捉えており、インディースタジオが他の配信先を探し始めるきっかけを与えてしまうと述べている。また、配信プラットフォーム同士の競争激化により大手メーカーを援助しなければいけないほどValveにとって事態は悪化してしまったのか、大手メーカーにとってSteamはそれほどまでに魅力のないプラットフォームになってしまったのかと嘆いている。

一方で、『West of Loathing』のデザイナーKevin Simmons氏のように、Steamが大手パブリッシャーを失うとSteamの利用者が減り、Steamでゲームを配信している開発者全員が損をすると理解を示す声もある(該当ツイート)。『Budget Cut』の開発者Freya Holmér氏はValveの判断に一定の理解を示しつつも、今のValveであればロイヤリティを一律で20%にまで下げてAAA級タイトルからインディータイトルまでまとめて支援することも不可能ではないだろうとコメント。とはいえ、部分的ながら開発者のレベニューシェアが上がったことを喜ぶべきだと語っている。

 

インディータイトルにてトラフィック激減

 またSteamでゲームを配信しているインディースタジオは別の問題にも直面している。Steamでは今年10月上旬に発生したディスカバリー機能の不具合により、一時的ながら現在の注目タイトルではなく、同じ有名タイトルばかりが続けてレコメンドされるような状態が続いていた。不具合はすぐに修正されたものの、その影響は今でも続いており、複数のインディー開発者よりトラフィックとセールスが大幅に下がっていると報告されている。

実際に影響を受けたと主張するGrey Alien GamesのJake Birkett氏がブログにて詳細を綴っている。Birkett氏いわく、不具合の発生以降、彼が手がけた作品の「Home Page」「Other Product Pages」からの流入が大幅に下がっており、後者に関しては複数あるサブカテゴリのうち「Discovery Queue」からの流入が激減。同スタジオが手がけたタイトルのひとつを例に出し、良い週には「Discovery Queue」からの流入が249あったのに対し、不具合発生後には同数値が32にまで減少したと主張している。トラフィック減にあわせて収入も半分以下にまで下がっているという。

Image Credit:Grey Alien Games

Birkett氏は同スタジオの複数タイトルにて同じ動きが見えること、他の開発者からも同様の報告があがっていることを踏まえ、「Discovery Queue」からの流入比率が高い小規模タイトルが打撃を受けていると述べている。なお同様の現象は、弊誌でも別途確認できている。

Birkett氏のブログ更新を受けて、『Maia』の開発者Simon Roth氏が、同じく10月のある時期を境にトラフィックが急減したことを報告。『NeuroVoider』の開発者Thomas Altenburger氏も、10月以降Steamでインディーゲームがプッシュされなくなり、彼の作品の収入が一気に75%もダウンしたと述べている。

トラフィックが下がった理由は明確ではなく、影響を受けた開発者からは複数の仮説が立てられている。インディー開発者Danny Day氏は、バグ修正とともにディスカバリー機能のアルゴリズムの履歴データが削除されたため、表示されるタイトルが変わってしまったのではないかと推測。ほかには、不具合云々は関係なくValveがアルゴリズムを変えたから表示されなくなったという説や、単純にAAA級タイトルのリリースが続く時期だからという説があげられている(ただし後者だけでは、急激なトラフィック減を説明できない)。

Steamは2017年のSteam Direct導入により低品質なタイトルの粗製濫造が目立ち、レッドオーシャン化が加速。開発者からの不満の声も多く聞こえてくるようになった。ゲームの山に簡単に埋もれてしまう現在のインディー市場において、Steamのディスカバリー機能に助けられてきた開発者も多いはず。そんな中、大型タイトルを優遇する施策や、ディスカバリー機能から得られるメリットの低下など、小規模タイトルにとっては苦しいニュースが続いている。PCゲームの配信プラットフォームとしてSteam以外の選択肢が増え、コンソールにおけるインディーゲーム市場が元気になる中、Valveはインディーゲームをどうケアしていくのだろうか。

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