アジアの壁に挑戦する欧米チームの奮闘。『LoL』世界大会準々決勝、軍配はどちらに


『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』2017年のプロシーン総決算となる世界大会「Worlds Championship 2017」もノックアウトステージに突入し、開催期間も2週間を残すのみとなった。準々決勝では韓国チーム同士の対決もあったが、なんといっても注目されたのは「アジアと欧米の差はどれだけ埋まったのか?」という点だろう。2013年以来ずっと世界王者の名をほしいままにする最強地域韓国と、韓国人選手やスタッフによる増強でそのすぐ後を追ってきた中国。韓国からは出場チーム全てが、中国からは出場3チーム中2チームがグループステージを突破して準々決勝へと進出している。そこへ挑む格好となったのが、北米のCloud9、ヨーロッパのFnaticとMisfitsだ。かくして死闘は繰り広げられた。例年になく熱い戦いの軌跡が刻まれた今年の準々決勝を、さっそく振り返っていこう。

LongZhu Gaming vs Samsung Galaxy

昨年と同じメンバーで再び決勝を目指すSSGのCrown選手。画像出典:LoL Esports Photos

LCK Summer Splitを制覇したLongZhu Gaming (LZ) と、昨年の雪辱を目指すSamsung Galaxy (SSG) 。韓国チーム同士が激突することになった準々決勝初日。LCKでの実績からLZ有利とみられたこのカード、しかし実際に機先を制したのはSSGサイドだった。チャンピオン選択の段階で、LZのBdd選手の得意チャンピオンを封じ、Khan選手に対してはカウンターとなるチャンピオンをCuVee選手が選択して、LZの得意とする「Khan選手がトップレーンからゲームの主導権を取る」ゲーム展開を不可能にしたのだ。序盤に大きな優位を作ることができないLZに対し、終盤のゲームコントロールに秀でるSSGは確実に勝ちを重ね、LZの反撃を一切許さずに3連勝。快勝でもって真っ先に四強への名乗りをあげた。LZはSSGのピック&バンに対して常に後手に回ってしまい、自分たちの得意とする構成でゲームに臨むことができず敗退となった。

お勧めの試合第3試合
SSGがダメ押しのポケットピックを見せた1戦。ジャングルを完全に制圧することでLZに挽回のチャンスを与えなかった。

SK Telecom T1 vs Misfits

敗れこそしたものの、「無敗の魔王」を窮地に追い詰めた恐るべきウサギたち。画像出典:LoL Esports Photos

過去3回の世界大会優勝をはじめとするあらゆる勝利によってその名を刻むSK Telecom T1 (SKT) と、結成1年目での世界大会出場を果たした欧州の気鋭Misfits (MSF) が準々決勝2日目に激突した。過去の実績の差もあり、98%の人がSKTの勝利を予想したこのカードだが、SKTと全視聴者を驚愕に叩き込んだのは欧州からやってきたウサギのチームだった。イギリスではウサギといえば聖杯探索に赴いた円卓の騎士を一撃で葬るほどの危険な生き物である。そのことをMSFは全世界に向けて見せつけてくれた。第1試合こそ驚くほどあっさりとSKTに勝ちを譲ったものの、第2試合・第3試合と立て続けにSKTに対して勝利を収めたのだ。彼らが隠し持っていた牙は、「アイバーンやカルマを選択してサポート以外にアーデントセンサーを託し、ボットレーンは序盤からキルレーンにする」という戦略だった。今大会のボットレーンはアーデントセンサーがあまりに強力なことから、アーデントセンサーの完成を最優先とし、そこまではあまりリスクを取らない戦い方が主流となっている。しかしMSFはIgNar選手がブリッツクランクやレオナ(IgNar選手が彼女を公式試合で使うのは2015年以来!)といった「仕掛ける」サポートを用いて最序盤からSKTのボットレーンを攻め立ててゲームの主導権を奪い、そのまま勝利をもぎ取ったのだ。しかしSKTの適応力は非常に高く、第4試合以降はMSFからトリスターナを取り上げて序盤の有利を取らせず、5試合目をなんとか勝利して準決勝へと進むことができた。とはいえ、第5試合はエルダードラゴンのスティールが奇跡的に成功したところからの逆転であり、勝利を収めた選手たちの表情は硬かった。今まで少なからぬチームが世界大会でSKTに挑んだが、最もSKTを追い詰めたのは今大会の主流となっていた戦略から踏み込んで自分たちのアイディアで挑んだMSFだったといえるだろう。

お勧めの試合第3試合
まさかのレオナ、まさかの「戦いの律動」採用でボットレーンの主導権を一気に奪うIgNar選手とHans Sama選手の決断が輝く一戦。

Royal Never Give Up vs Fnatic

現役最古参の一人に数えられるsOAZ選手。今大会でもベテランの凄味を見せてくれた。 画像出典:LoL Esports Photos

過去2回世界大会の決勝戦で韓国チームに敗れ、悲願の優勝を目指すRoyal Never Give Up (RNG) と、Season 1世界大会優勝チームにして欧州の名門であるFnatic (FNC) が戦ったのが準々決勝3日目。FNCは第1試合・第2試合と悪くない形を作りながら勝ちきれずに敗北する苦しい展開が続いた。後のない第3試合でこそトリスターナを確保し、さらにsOAZ選手がナーを選択してトップレーンを支配し、さらには常に敵の背後を脅かすプレイで勝利をもぎ取った。しかし第4試合は一瞬の集団戦から逆転負けを喫してRNGの前に敗退し、アジアの壁を越えての四強入りとはならなかった。一方のRNGはSeason 3の世界大会決勝戦以来の因縁の相手であるSKTと戦うことが決定した。Uzi選手にとっては、優勝を目指す過程で避けられない敵だ。今大会における彼のプレイは非常に素晴らしいものがあり、またチームの戦略も未だに全てを出し切ってはいないと思われることから準決勝での死闘が予想される結果となった。

お勧めの試合第3試合
sOAZ選手がその代名詞ともいえるバックドアプレイを見せた一戦。欧州における伝説の一人であることを証明してみせた。

Team WE vs Cloud9

チームの火力を担うMystic選手。決勝、そして優勝へとチームを運べるだろうか 画像出典:LoL Esports Photos

LPL Spring Splitを制覇しながら夏の不調で第三シードとなったTeam WE (WE) と、結成以来毎年世界大会に出場しベスト8に残っているCloud9 (C9) が上海への最後のチケットを賭けた戦いに挑んだ。四つに組んだ第1試合を54分の長丁場の末にWEが制すると、C9はさっそく切り札を投入。トップレーンのImpact選手がシンジドを選択肢して対面の957選手を封じることに成功し、さらにトップ側の視界コントロールを得て試合の主導権を手繰りよせ勝利した。第3試合も同様の戦略で勝利して王手をかけたC9。だが第4試合はC9のカギとなっていたトリスターナとシンジドをWEがバンして自分たちのゲームを作り、2勝2敗とイーブンに戻す。最後の戦いとなった第5試合では、WEがグラガス・ガリオ・ジャンナと強力な交戦拒否能力を持ったチャンピオンでコグ=マウを死守するチーム構成で中盤以降のC9を圧倒し、上海への切符をもぎ取った。C9は欧米圏最後のチームとして善戦したが、Season 1以来の北米ベスト4入りを果たすことはできなかった。

お勧めの試合第2試合
C9が秘密兵器としてシンジドを投入した試合。Impact選手とContractz選手によるお手本のような視界コントロールが見られる。

Bo5形式とチームの強さ

準々決勝以降のノックアウトステージは全て3本先取のBo5形式で行われる。複数回戦うことが前提となるこの形式では、短時間の間にいかに敵の戦略に対応し自分たちの強さをぶつけられるかが問われる。SSGは初戦からLZの長所であるトップレーンのKhan選手の封じ込めを徹底し、SKTやWEは2敗した後は的確に相手チームの中核となっていたチャンピオンをバンして自分たちの土俵で戦うことで巻き返しに成功している。

また、各選手が試合で使えるチャンピオンの種類、いわゆる「チャンピオンプール」の影響も大きい。特に世界大会の環境で強力なコグ=マウやガリオを使えるかどうかの影響がピック&バンの自由度に現れている。たとえばFnaticのADCであるRekkless選手は2014年を最後にコグ=マウをほとんど公式試合で使用しておらず、第4試合でコグ=マウがオープンな状況でも他のピックを優先していた。RNGは2回目のバンフェーズでもADCを徹底して潰すことでFNCの選択肢を奪うことに成功している。ベスト4まで絞られた各チームではあるが、「引き出しの広さ」は僅差の戦いにおいて最後の一手となるだろう。特にチームの要となるミッドレーンの各選手は注目に値するはずだ。レーン戦を完全にこなしてWEの戦略を支えるXiye選手、卓絶した努力家として知られ昨年の雪辱に燃えるCrown選手、LPLでも有数の攻撃的なスタイルで知られるXiaohu選手、そして「無敗の魔王」ことFaker選手。彼らの激突ももうすぐだ。

準決勝は日本時間10月28・29日の16時30分より配信予定。第1対戦は「SK Telecom T1 vs Royal Never Give Up」、翌日の第2対戦は「Team WE vs Samsung Galaxy」となっている。奇しくも双方が中韓対決となった組み合わせだが、準々決勝での白熱した戦いぶりを見るに、今年勝ち上がっているチーム間には本当にわずかな実力差しかない。王座への階段をたった一段登るにも、全力を振り絞らねばならないだろう。

[執筆協力:ユラガワ]