世界大会に挑むマイナー地域たちの前哨戦。『LoL』プレイインステージ第1週


2017シーズンを締めくくる世界大会が中国の武漢でいよいよスタートした。昨年まで「その他」地域のチームで行われていたワイルドカード枠を争う大会が本大会に統合されたことで、今年から参加チームが大幅に増加した世界大会。今年は世界各地から24チームが集まって世界最強を目指して戦っている。現在は韓国を除いた4大リーグの第3シードおよびその他地域の8チームを合わせた12チームによるプレイイングループステージが終了し、グループステージへ向けたノックアウトステージが目前となっている。本稿では各グループの注目するに値する結果について紹介していく。

グループA
1位:Team WE(4勝0敗)
2位:Lyon Gaming(2勝2敗)
3位:Gambit Esports(0勝4敗)

なんといってもグループAを席捲したのはTeam WEだ。このチームは群雄割拠の中国リーグにおいても長い歴史を誇る古豪であり、2017 Spring Splitを制覇したタイトルホルダーでもある。Summer Splitはプレイオフ準決勝でRNGに敗れたため4位に終わっているが、レギュラーシーズンの成績はEdward Gamingに並ぶ結果で終えており、プレイイン参加チームとしては破格の成績を残して参戦している。グループAではWEがその実力をいかんなく発揮し、Lyon GaminやGambit Esportsの仕掛けをことごとく受けた上で勝利してみせた。そんなWEに対して果敢に挑んで見せたのが北ラテンアメリカ地域において絶対的な王者であるLyon Gamingだ。ゲーム終盤こそWEの巧みさに膝を屈したものの、序盤から果敢な攻撃を幾度も仕掛け、地元チームの目論見を挫いてリードを作る場面を何度も見せた。その勢いでCIS地域オールスターと呼ばれたGambit Esportsに快勝し2位を確保した。Gambit Esportsは地域を代表する名選手をずらりと並べ、EUでも活躍したベテランを加えたチームだったが、連携や中盤の展開力が十分ではなく、結果を残すことができなかった。

ロシアのオールスターとも呼び声高かったGambit Esportsだが、敗退決定後に実はドラフトやコミュニケーションに問題を抱えていたことが明かされた。画像出典:LoL Esports Photos
グループB
1位:Cloud9(4勝0敗)
2位:Team oNe eSports(2勝3敗)タイブレーク勝利
3位:Dire Wolves(1勝4敗)

グループB勝ち抜けを狙うTeam oNe eSports、そしてDire Wolvesの前に立ちふさがったのがCloud9(C9)だ。現在のC9は2013年世界大会王者でもあるImpact選手や、欧米きってのミッドレーナ―として知られるJensen選手、北米で絶大な支持を誇るADCのSneaky選手をまとめ上げたチームとなっている。結成以来世界大会出場を逃したことが無いというこのチームに対し、挑戦者となったoNeとDWだが、C9との対戦では自分たちのゲームを展開できず2敗、互いの対戦を1勝1敗で分けてタイブレークを戦うこととなった。ここでDWがoNeに得意なチーム構成を許してしまい敗北、最終的に2位でグループステージを抜けたのはTeam oNe eSportsとなった。このグループステージにおいてC9は従来のミッドを支えるJensen選手からではなく、ジャングルのContractz選手をかなり重視したゲームの組み立てに注力して新しい形を見せつつも、2015年の世界大会のように新しい戦略を真っ先に披露することは慎重に避けているようにも見えた。

カメラに向かってポーズをとるoNeのトップレーナーVVvert選手。初日全敗を喫したものの、2日目はタイブレーク戦を含め全勝と奮起し、若い力を見せつけた。画像出典:LoL Esports Photos
グループC
1位:Fnatic(3勝1敗)
2位:Young Generation(2勝2敗)
3位:Kaos Latin Gamers(1勝3敗)

グループBと同様に、世界大会の出場経験が豊富な強豪に立ち向かう構図となったのがグループCだ。Fnaticは第一回世界大会を制覇した実績を持ち、世界中にファンのいるヨーロッパの強豪チーム。そこに挑むのが南ラテンアメリカのKaso Latin Gamers(KLG)と東南アジアでも抜きんでた実力を誇るベトナムからやってきたYoung Generationという形になった。Fnaticはチームの中心であるADCのRekkles選手を中心としたゲームを作り、時にはそれを強行するような動きも見せていた。そこを付け込む形でYoung Generationが4日目の第6試合で劇的な勝利をもぎ取り、グループ2位を獲得している。現在のFnaticは各ポジションに新たなタレントを発掘しており、必要ならばさまざまな戦略をとることも可能だったはずだが、そこを単一のスタイルに絞ったのはやはり、グループステージ以降の戦いを見据えて手の内を知られることを嫌ったと考えられるだろう。

ヨーロッパの伝統あるチーム、Fnaticの人気は中国でも絶大なようだ。応援ボードやチームロゴフェイスペイントで応援する観客の姿も見られた。画像出典:LoL Esports Photos
グループD
1位:1907 Fenerbahçe Espor(4勝1敗)タイブレーク勝利
2位:Hong Kong Attitude(3勝2敗)
3位:Rampage(0勝4敗)

5大リーグの中で今年から第3シードの枠を得た台湾リーグ(台湾・香港・マカオ)から参戦のHong Kong Attitude(HKA)、五大リーグに最も近いといわれるトルコリーグから、昇格したシーズンに一気に世界へと躍進した1907 Fenerbahçe Espor(FB)。そしてLJLを3スプリット連続優勝しているRampageが激突したのがこのグループDだ。このグループは明らかにとびぬけて強いチームがおらず、どう転ぶかわからない「死のグループ」と呼ばれながらの開幕となった。実際にフタを開けてみると、安定した強さを発揮するHKAとここ一番の勝負に強いFBが死闘を繰り広げる文字通りの死のリーグとなった。このグループは2位で抜けるとグループA・B・Cの1位チームと当たることになるため、WE・Fnatic・C9のうち1チームとの激突が避けられない。その意味でもグループDは1位突破の価値が非常に重いグループだったのだ。この死のグループにおいて、都合3度の直接対決を経て最終的な勝利をもぎ取ったのはFBだった。ビザの問題から臨時のジャングルを採用しているとは思えないほど、巧みな連携と果敢な判断でわずかな可能性をもぎ取るシーンが目立ったFB。特にADCのPadden選手はゲームの流れを決定づける重要な瞬間において完全な仕事をこなし、チームの勝利に大きく貢献していた。日本から参戦したRampageは、中盤から終盤を重視した編成でゲームに臨み、いくつかの試合で狙い通りのゲームメイクを行うことができたものの、そこからリードを作り上げることができずに試合を落とす結果に終わってしまった。

日本代表としてWorlds出場を果たしたRampageだが、全敗という苦い結果をもって舞台を去ることとなってしまった。画像出典:LoL Esports Photos

 

総評

プレイイングループステージは、やはり五大リーグのチームが高い水準でゲームをコントロールする場面が目立つ結果となった。WE・C9・Fnatic・HKAはいずれもレーンでの戦いはもちろん、ローテーションやオブジェクトへの寄せ・交換の判断で相手チームに対して優位に立ち、序盤に多少のビハインドがあってもそれを覆して勝利を収めていた。そういった中で上位チームに対して一矢報いる、あるいは見せ場をいくつも作ったチームは序盤から主導権争いを積極的にしかけ、リスクを負ってでも勝負に出ていたチームだ。格上チームに食らいついてみせたLyonや、グループDの1位をHKAからもぎ取ったFBはその好例と言えるだろう。大胆なゲームプラン、リスクを正確に判断する能力、世界大会という極限の状況下でイメージ通りの戦略を実行する技術と連携。そういったチームの地力を強く試される場がこのプレイイングループステージだった。とはいえまだまだ戦いは続く。各グループの上位2チームはプレイインノックアウトステージで勝利しなければグループステージへ参加できないのだ。韓国からの3チームを含めた、いうなれば「本戦」への切符はまだ誰の手にもたらされるのかわからない。グループステージへの切符は、9月27・28日に行われるBo5(3本先取)対決で誰の手に渡るのかが決まる。古豪が前評判通りの強さを発揮するのか?挑戦者がシンデレラストーリーの幕を開けるのか? まだまだ続く世界大会から目が離せない。

プレイインノックアウトステージ日程(日本時間)
9月28日12時~:Cloud9(グループB・1位) vs. Lyon Gaming(グループA・2位)
9月28日16時~:Fnatic(グループC・1位) vs. Hong Kong Attitude(グループD・2位)
9月29日12時~:1907 Fenerbahçe Espor(グループD・1位) vs. Team oNe eSports(グループB・2位)
9月29日16時~:Team WE(グループA・1位) vs. Young Generation(グループC・2位)
 
[執筆協力:ユラガワ]