Riot Gamesは5月1日、『League of Legends』(以下、LoL)に向けてパッチ14.9を配信し、同社の独自チート対策システム「Riot Vanguard」(以下、Vanguard)を導入した。この導入に伴って、一部ユーザーからVanguardが原因ではないかとする不具合などが報告された。そうした声に対し、Riot Gamesは、Vanguardはスパイウェアではなく、またハードウェアを“文鎮化”させた報告もない、との声明を出した。
Vanguardは、Riot Gamesが独自に提供しているゲームセキュリティソフトで、チート対策ツールだ。これはゲームの起動にあわせPC上に常駐するクライアントと、カーネルモードのドライバが併用されており、同社の手がける基本プレイ無料FPS『VALORANT』にて初めて導入された。
『LoL』では、キーの入力や相手のスキルにあわせた反応をツールや外部のプログラムを使用しておこなう「スクリプティング」を中心とした不正行為が散見されており、問題となっていた。Riot Gamesは今年YouTubeに公開した動画で、こうした行為への取り締まり、そして対策を継続していたものの、現行版では時代遅れになっていたとした。そのため、チート対策ツールとして『LoL』にVanguardを導入すると決定。『VALORANT』ではリリース当初から導入され、チート使用者検出に一定の成果をあげていたことから、同様の効果を期待しての決定だったとのこと。
このVanguardについては、同ツールがカーネルレベル、つまりCPUやGPUなどまでアクセスし動作することから、『VALORANT』における実装時点から「個人情報が収集される」「スパイウェアではないか」といった懸念が一部ユーザーから寄せられていた。チート対策とはいえ、PCを起動した瞬間から常駐し、バックグラウンドで動きつづけているという状態に忌避感を抱いているユーザーもいるようだ。
今回のパッチ14.9での『LoL』への本実装では、そうした懸念が再燃。また導入にあたって不具合が発生し、ハードウェアが動かなくなった、いわゆる“文鎮化(end up bricked)”に遭遇したとの報告も寄せられ、海外掲示板Reddit上でも大きな話題となった。
こうしたユーザーの声に対し、Riot GamesはReddit上に声明を発表した。パッチ14.9の配信以降、Vanguardに関する問題を報告したプレイヤーは0.03%未満で、報告された例もほぼ一般的なエラーコードだったと内訳を公開。Vanguardを導入したことによる不具合は、ほとんどが古いハードウェアとの互換性の問題や、導入して有効化する際に、ハードウェア側の設定をミスしたことによるものだとしている。またVanguardに対する「BIOSの設定を勝手に変更している」といった疑惑も否定し、もしトラブルがあった際にはサポートまで連絡してほしいと案内した。
また「スクリーンショットを不正に取得している」といった疑惑についても説明がおこなわれている。公式発表によると、本来のゲームプレイでは見えないものまで見えるようになるESPハックの疑いがあった際に、ゲームクライアント部分のスクリーンショットを取得しているそうだ。これはチート対策ツールとしては普通の動作で、ほかのチート対策ツールも同様の手段が取られているといい、Vanguardに特有のものではないとのことだ。
今回『LoL』上に新たに導入されたVanguardはカーネルレベルでの監視や、起動時における常駐を必要としており、『VALORANT』での導入時と同じく一部ユーザーの不安に繋がっていた模様。またVanguardの導入にあたっては、TPM 2.0の有効化が必要となる。その設定に際して、ユーザー側が設定を間違ってしまい、そのことで「Vanguardが原因で不具合が起こった」と認識された例もあるようだ。
いずれにせよ、一部ユーザーから寄せられた“Vanguard由来の問題”について、今回Riot Gamesが直接声明を発表し、さまざまな疑惑を否定したかたちだ。Redditにおける投稿では、すでにVanguardが成果を上げはじめているとされており、『LoL』でもRiot Gamesが意図したように問題なく機能しているようだ。また数週間後から数か月後には外部発表向けのレポートも公開されるとのこと。試合15回に1回はチート行為者がいるとされた『LoL』の“チート事情”についてどの程度改善されるのか、導入後の結果も気になるところだ。