Nintendo Switch新作釣りゲーム『ぼくと釣り日記』は、『牧場物語』『川のぬし釣り』開発者が携わるが全然違うゲーム。「釣る過程」を楽しむスローライフゲーム

トイボックス株式会社の代表取締役社長を務め、本作の開発に携わる和田康宏氏にインタビューを実施した。

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イマジニアは10月8日、本格フィッシングゲーム『ぼくと釣り日記』を発売予定だ。対応プラットフォームはNintendo Switch/Nintendo Switch 2。価格は税込6578円。

『ぼくと釣り日記』は、さまざまな釣り場で魚の生息域を読み、狙った魚を釣り上げることを目指す本格的な釣りゲームだ。プレイヤーは、ある日不思議な夢を見た青年となり、あやかしの仲間とともに、世界にかけられた色が失われる「のろい」を解く“釣り冒険”へと臨むことになる。本作に収録されている魚は100種類以上で、身近な魚もいればのろいの影響を受けた幻想的な怪魚も登場するという。釣りたい魚の生息域を見つけて適した釣り具を選択し、さまざまな魚を釣り上げていく。

弊誌は、本作の開発元であるトイボックス株式会社の代表取締役社長を務め、『ぼくと釣り日記』の開発に携わる和田康宏氏にインタビューを実施した。どんな釣りゲームなのか、スローライフはどんなものなのかなど、本作について伺った。

人が作らないものを作りたいタイプのクリエイター

――自己紹介をお願いします。

和田康宏(以下、和田)氏:
トイボックスの和田康宏と申します。元々はゲーム会社のパック・イン・ビデオでプロデューサーとして、海外のファミコン向けゲームソフトのローカライズから始まっていろいろなことをやりつつ、スーパーファミコンの『牧場物語』を手がけておりました。それ以外にも『川のぬし釣り』やほかのゲームの開発に少し関わることもありましたが、基本的にはずっと『牧場物語』シリーズを続けていて、直接的に作ったと言える『牧場物語 わくわくアニマルマーチ』を最後に、後継にバトンを渡しました。

その後はマーベラス時代にプロデュースで関わったグラスホッパー・マニファクチュアに籍を置かせていただいて、マネジメントのような仕事をしたんですが、やっぱりもの作りをしたいという思いが強かったので、現在の自分の会社であるトイボックスを立ち上げました。そして、『なつもん!20世紀の夏休み』では『ぼくのなつやすみ』の綾部和さんがクリエイティブ部分を、僕は開発をちゃんとコントロールするという役割でお手伝いをしていました。

――和田さんは自分をどのようなクリエイターだと思いますか。

和田氏:
誰もやっていないアイデアを形にするクリエイター……でしょうか。でも、僕は世の中にいる本物の、ガチガチのクリエイターさんとお付き合いがありまして、そういう人たちと肩を並べられるクリエイターかと言われると……、ちょっと怪しいかもしれません……(笑)

アイデアがあって、その企画の概要を作って、開発と一緒に意見を出し合いながら作っています。もちろんプロジェクトによって関わり方は違いますが、どちらかというと人が作らないものを作りたいタイプですね。たとえば『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』は人気があるから、自分もあんなRPGを作りたいと思う人もいるとは思いますが、僕は自分では作らない。『ドラゴンクエスト』も『ファイナルファンタジー』もプレイヤーとして楽しませていただきます、と。既存の物を追いかけても仕方がないなという感覚が自分の中にあるんですよ。

世の中にあまりないようなゲームを作ったら、遊びたい人がきっといるはずだ、みたいな発想ですね。そもそも僕がニッチな人間というか、隙間を狙っているようなイメージなんでしょうね。

『ぼくと釣り日記』は“魚との出会い”を探すゲームに

――『ぼくと釣り日記』はどのような経緯で立ち上がったんでしょうか。

和田氏:
本作はそもそもイマジニアさんから、今のマーケットに釣りのゲームが少ないという話があったんです。いろいろなゲームのミニゲームとして釣りが入っていたり、アプリゲームのようなカジュアルなものはあるんですけど、釣りをメインにしたゲームが少ないと。で、イマジニアさんから何か釣りのゲームを作れないかという話を受けてプロジェクトが立ち上がりました。僕は本格的に釣りゲームをたくさん作っていたわけではないですが、『川のぬし釣り』や『フィッシュアイズ』に関わっていたので、アイデアを出して始まったプロジェクトです。

――そこからすぐに今発表されている『ぼくと釣り日記』の基礎ができたんでしょうか。

和田氏:
最初にパッと思いついたのは、釣り版の『グランツーリスモ』みたいなゲームでした。要は、世界中の釣り場で世界中の道具を使って、世界中の魚を釣るという王道を作るのが一番世界中の人に喜ばれるんじゃないかなと考えたんです。ただ、Steamとかでそういうゲームがすでにあるんですよ。しかも、たっぷりコストを掛けて作られているので、そういうのと真っ向に勝負するのは難しいかもしれないな、と。

でも、だからといってカジュアルなミニゲームやアプリゲームの釣りを作るんだったら、別に僕が作らなくてもいい。じゃあ、『ぼくと釣り日記』はアドベンチャーゲームにしようと。僕だったら「独特な世界観の中で、釣りは楽しくて、さらにいろいろなお話があって、その先を進んでいくとどうなるか」と体験できるものにしようと。そういう釣りゲームってあまり世の中に存在していないなと思いました。作り始めて今に至ります。

――ストーリーに重きを置いていることが、本作のほかの釣りゲームと異なる特徴となる部分なんでしょうか。

和田氏:
物語や世界観が楽しめるゲームであることと、これまでの釣りゲームと違う釣り体験ができるゲーム、そのふたつが従来の釣りゲームとは異なる部分になると思います。世界観や物語が釣りゲームとしては珍しいぐらいに主張していますし、魚を釣るにしても魚を探すことにも重きを置いていて、魚との出会いを探すゲームになっています。

ゲームで楽しめる釣りによくあるのが、魚影が見えて、そこに糸を垂らして釣ってみるシステムですね。でも、『ぼくと釣り日記』ではいろいろな情報を元に「あの辺にこの魚がいそうだな」と当たりをつけて、さらにどんな仕掛けが必要なのか、どんな餌が良いのか、それを模索しながら釣りを進めていくものになっています。とはいえ、ゲーム中にはコンパクトに魚の情報を集約している図鑑があるので、何もないところから魚を探すよりは遊びやすくなっていると思います。

あとは、釣りそのものが気持ち良い、あるいは楽しい、ということも重視しています。それは魚を探すところから始まる、釣り上げるまでの過程ですね。ゲームの中のミニゲームとして釣りが存在する場合って、たとえば何匹釣って来いというクエストや、バフ効果のある食べ物が必要だから釣るという、報酬のためにやるものと感じる人も少なくないと思うんです。

でも『ぼくと釣り日記』の釣りは、釣ること自体がそもそも気持ち良いし、次にこの魚が釣りたいとプレイヤーが自発的に考えてくれるような、そんなゲームにしたいと思って作っています。釣り自体が楽しいことで、ちゃんとそれが目的になっているわけです。

――たしかに、釣るまでの一連の過程を楽しませるというのはいいですね。釣る場所や魚について考える時間。

和田氏:
イマジニアさんからお話があったとき、先方にすごく釣りにこだわりのある方がいらっしゃって。やっぱり実際の釣りって魚がどこにいるのか、そこにいないのかもわからないし、いろいろな知識でどこにいるかを予想しながらも、ほとんど失敗しちゃうんですよ。早朝から釣りに行っても1匹も釣れずにボウズで帰るようなこともありますし。

でも、まったく釣れなかったからつまらないのかというと、そんなことはないんですね。事前にいろいろな用意をして、いざ釣りにいって坊主でも、それも釣り体験のひとつなんですよ。そんな釣り体験の中で狙ったとおりに釣れたり、予想外の魚が釣れたり、そんなカタルシスもあって。それこそが釣りだよねという中で、じゃあそういうゲームを作ってみましょうかと。

とはいえ、『ぼくと釣り日記』はゲームなので、釣れないで終わってしまうとゲームにならないんです。いくら過程が楽しくても、ゲームは限られた制約の中でカタルシスを生み出すものなので。そこで釣りそのものはアクションっぽく、わかりやすくして、小さな快感を味わえるようにしています。

たとえば『ぷよぷよ』で3連鎖、4連鎖ができたときの感じというか、『LINE:ディズニー ツムツム』で長く繋げられたときとか、パズルゲームってそういう気持ち良さが延々と続くじゃないですか。しかも、延々と続くけどその気持ち良さは飽きない気持ち良さなんですよ。だから、僕としては細かく気持ち良いことはゲームの核になり得ると思っています。

なので、まずは釣りのアクション部分をちゃんと気持ち良くしないといけないというのが根本にありますね。すごくシンプルなんだけど、上手くできるとちょっと気持ち良いんです。脳汁が1ミリぐらい出るくらいですが、繰り返しても成り立つようになっていると思います。

――本作のテーマに「スローライフ」もありますが、具体的にはどういった部分になりますか。

和田氏:
スローライフって、たとえば『牧場物語』とか、『どうぶつの森』とか『ぽこ あ ポケモン』とかを想起されると思いますが、『ぼくと釣り日記』はそういった生活的なスローライフではないですね。僕としては、ゲームの中のスローライフというよりも、プレイヤーとゲームの関わり方がスローライフという感じだと思っています。

プレイヤーは本作と好きに関わっていいですよと。どんどん魚を釣って急いで遊んでもいいですし、ゆっくりのんびりと魚を釣ってもいいですし。そういった意味での、スローライフというか自由という感じですね。なので、スローライフと言えばスローライフ的な感覚はありますが、生活シムではないのでその点はお伝えしておきたいところです。後で「これじゃなかった……」と思われるのは、僕としては心苦しいので。あと、本作にも日記があるんですが……。

――『なつもん!20世紀の夏休み』にもあったような日記ですよね。

和田氏:
そうです。プレイヤーは本作に自由に関わってもらっていいんですが、自由過ぎるともうゲームをやらなくなってしまうのではないかという、そういう感覚がちょっとありまして。で、日記にはリアルタイムのタイムスタンプが押されるんですね。同時にセーブデータには昨日30分遊びましたとか、ここ1週間遊んでいませんとか、一昨日は4、5時間遊びましたとか記録されるんですが、こういうのって習慣になる可能性があるかなと。あるいはちょっと気になる、心に引っかかる要素になるんじゃないかなっていう願いを込めています。あ、今日やっていないと気づいて、ちょっと遊ぼうと思ってもらえるかなと。

そうしてちょっと遊んだら話が進んで、気になるからまた遊ぼうと思ってくれたり、図鑑や達成度も同時に記録されるので、それを埋めたいと思ってもらったり、『ぼくと釣り日記』のスローライフの中でも遊ぼうという、プレイヤーのモチベーションになってほしいと思っている機能ですね。

――本作は釣りをメインに据えられていらっしゃいますが、ストーリーと釣りはどれくらいの比率になっているんでしょうか。

和田氏:
3割がお話で、7割が釣りといったところですかね。釣りゲームの楽しさって、釣ること以外に魚拓を集めたり、水槽で魚が飾れたりして、それがだんだん増えていくところだと思っていて、そこがこのゲームを長く続けられる大きな要素だと思います。で、世界観やお話の部分はそれを補助するものだと思うんです。なんかこの世界が好きだなとか、またちょっと遊びたいなとか思ってもらえる要素ですね。

『ぼくと釣り日記』は『川のぬし釣り』とは違うゲーム

――和田さんは『川のぬし釣り』シリーズに関わってきています。『川のぬし釣り3』ではプロデューサーをされていらっしゃいましたが、あの作品は今振り返るとどんな作品でしたか。

和田氏:
『川のぬし釣り』はお話もあるし、フィールドを歩き回って動物と戦うし、『川のぬし釣り3』では「うぉっちモード」で魚を育てられるし、いろいろあるゲームでした。ただ、元々『川のぬし釣り』と『川のぬし釣り2』って有田和博さんという『川のぬし釣り』の父みたいな人がほとんど個人に近い感じで作っていたものなんです。

で、ゲームボーイの人気が復活して勢いが増してきた頃に、『川のぬし釣り』をゲームボーイ向けにどうやって落とし込もうかというところから始まったのが『川のぬし釣り3』なんですね。

でも、『川のぬし釣り』はやっぱり僕の作品ではなくて有田さんの作品なんですよ。釣りの要素に昔風のRPG要素も強く存在しているゲームです。でも、『ぼくと釣り日記』はワールドマップから釣り場に飛ぶシステムで、敵との戦闘もレベルアップもないですし、『川のぬし釣り』とはかなり違う、僕なりの釣りゲームになっています。

――『ぼくと釣り日記』は釣り場に飛ぶシステムとのことですが、飛んだ先の釣り場の中は自由に歩けるようになっていますよね。

和田氏:
そうですね。やっぱり決まったポイントしか狙えないのは嫌なので、ポイントを探すために移動できるようになっています。僕は歩くことってゲームの中で結構大事な要素だと思っていて、歩くことでたまにアイテムを見つけたり、物語が進んだり、フィールドの存在は本作にとってもかなり大事なものになっています。水場が広くあって、それを隅々まで探す必要があって、たとえば木が倒れているとか大きな岩があるとか、いろいろなヒントがあるんですが、それを頼りにして魚を探すのも楽しめると思います。

――本作のジャンルは釣りアクションRPGです。探索という意味でのRPG的な要素がありそうですね。ほかにRPG的な要素はあるんでしょうか。

和田氏:
魚を釣って、お話が進んで次のマップが出てきて、そこではまた新しい道具を手に入れて釣らないといけない魚がいてみたいな、そういうレベルデザイン的な部分はRPG的と言えるかもしれませんね。

でも、多くの人が想像する『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』のようなRPGとは明らかに違いますので、僕はあまりRPGと表現したくはないなと。なぜかというと、このゲームを遊んでほしい人にちゃんと届いてほしいんですよ。ちゃんと届いて、こういうゲームだというのが最初から伝わっていれば、「このゲームを遊んで良かったな」と思ってもらいたいです。

――本作には100種類以上の魚が登場しますが、すべて本作のためにモデリングされているのでしょうか。

和田氏:
もちろんです。なるべく亜種みたいなものは減らしたくて、たとえばキンブナ、ギンブナみたいな魚も中にはあるんですが、そういうのばかりにはしたくないなと。それぞれの魚にある程度バックグラウンドだったり、ストーリーだったりがあった方がいいと思っていて、登場する108種類の魚すべてとはいきませんでしたが、それぞれの魚にその魚なりの個性をもたせるということは開発する上でお願いしましたね。ほかのミニゲーム的な釣りと差別化したい気持ちもあったので、108種類の魚にそれぞれちゃんとモデリングしています。

ちなみに、今回は舞台が淡水なので基本的に淡水魚が登場するんですが、日本にいる淡水魚ってそれこそ亜種みたいなものも含めるとたくさんいるんですが、形が大きく違う魚って実はあまりいないんです。で、さらに皆さんが知っていそうなものとなると100種類もないんですよ。

――ちなみに、本作にはユニークなぬしも登場しますが全108種類の魚のうち、何種類ぐらいになるんでしょうか。

和田氏:
いわゆるのろわれた魚は30種類近くでしょうか。本作は、まつやまいぐささんというイラストレーターがキャラクターデザインを担当してくださっていて、ゲーム中の1枚絵もご本人が描いているんです。主人公だけでも100近く描いてもらいましたが、彼がノリノリで100種類ぐらい変な魚を描いてきてくれて(笑)その中の20種類以上を採用していますね。

――まつやまいぐささんと言えば『牧場物語』シリーズでもお馴染みの方ですよね。

和田氏:
ええ、そうです。仕事以外でも付き合いがあるんですが、ここ10年ぐらい前からずっと絵本が作りたいという話をしていて、僕に話を書けと言ってきていて。で、実は『ぼくと釣り日記』のあやかしの世界観もその中のひとつなんですよね。で、それを絵本じゃなくて、ゲームにするから絵を描いてくれという流れでお願いしています。

日頃の喧騒を忘れて、楽しんでほしい

――本作はNintendo SwitchとNintendo Switch 2向けにリリースされますが、それぞれに体験の違いはありますか。

和田氏:
シンプルに言うとNintendo Switch 2の方が高解像度版で絵がきれい、さらにロードが早いことがゲーム体験の違いで一番大きいところじゃないでしょうか。Nintendo Switchでは30fpsを維持するためにぼかしている部分があるんですが、Nintendo Switch 2は解像度を上げているので見え方がかなり違うと思います。ちなみに、ゲームのシステムや要素に差はありません。

――ほかに『ぼくと釣り日記』のこだわりポイントはありますか。

和田氏:
やっぱりまつやまいぐささんが一番大変な思いをしていますので、そこは推したいポイントですね。今まで彼とやってきた仕事は、キャラクターデザインや設定画を描いてもらって、それをモデリングしてモーションを付けたり、ウインドウの中のしゃべる顔を描いたりしてもらっていたんですが、今回はすべての絵をまつやまさんに描いてもらい、描いてもらったものをそのままゲームに使っているので、かなりの作業量をお願いしていて、かなり力が入っていますね。

直接ゲームとは関係ないかもしれませんが……、そうやって描かれたものによる表現が、このゲームのすごく大事な味のひとつになっています。あとは登場するあやかしもすごく愛着が湧くようなキャラクターになっていて、だからこそ釣りをより前向きに楽しんでいける作りになっているのではないでしょうか。

――本作をどんな人にプレイしてほしいですか。

和田氏:
日頃の喧騒を忘れてゆったり楽しみたい方にプレイしてほしいですね。あと、ほかにイメージしていたターゲットがひとつあって、親子で遊んでほしいなと思っています。親が子供に安心して遊んでいいよと言えるゲームだと思いますし、子供が遊んでいるのを見ていたら、親も面白そう、ちょっと自分も遊んでみようとなるような、そんなゲームになるといいなとイメージして作っています。本作にしかない世界観があって、1ミリずつ脳汁が出るゲームが楽しめると思いますので、発売までお待ちください。

――ありがとうございました。

ぼくと釣り日記』は、Nintendo Switch/Nintendo Switch 2向けに10月8日に発売予定。

[執筆・編集:Koutaro Sato]
[聞き手・編集:Ayuo Kawase]

© Imagineer Co., Ltd. / TOYBOX Inc.

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