『エルデンリング』パリィ使い方講座~応用・技術編。パリィの仕組みを分析、フレーム数で見るパリィと派生戦技の性能

 

『エルデンリング』発売から約1か月が経った。もうクリアしたプレイヤーも、遊び始めたばかりの方もいることだろう。本稿では、狭間の地での冒険をまだまだ楽しむ褪せ人たちに、「パリィ」の魅力と使い方について、前後編の2回に分けてお伝えしたい。今回は「応用・技術編」と銘打ち、後編をお届けする。なお、本稿には本作中盤以降で登場するであろう戦技名も含まれるため、閲覧の際にはご注意されたい。


先ごろ公開した「パリィ使い方講座~実践・基礎編」では、前後編の前編としてパリィの概要についてお伝えした。パリィの使い方のコツや使える相手をざっくりと知りたい方は、そちらを参照されたい。後編となる本稿では、さらに『エルデンリング』のパリィの仕組みに踏み込み、各武器・戦技の検証結果やパリィメカニズムの考察などを中心にお届けしていく。

『エルデンリング』のパリィメカニズム考


『エルデンリング』のパリィの内部実装の詳細については、ユーザー側からは推し量るほかない。そこで参考になるのが、ユーザーレベルでの分析が円熟している、フロム・ソフトウェア過去作『DARK SOULS III』に関するデータだ。パリィは『ダークソウル』シリーズに共通する要素。その流れを汲む『エルデンリング』でも、実装にあたっては似通った設計が受け継がれている可能性は高い。

たとえば、YouTuber/Mod製作者のAmir氏は、YouTube上に『DARK SOULS III』の内部実装についての動画を公開。同動画は『DARK SOULS III』対人戦におけるメカニズムを解説している。『エルデンリング』の対敵NPC戦においても、パリィは類似のシステム、あるいは設計思想にて実装されていると考えられる。つまり、過去作の実装を知ることで、『エルデンリング』のパリィシステムをある程度探れるわけだ。

「パリィ判定」と「パられ判定」

ここからは、パリィ発動の際に発生する判定を「パリィ判定」と記述する。パリィを受けるプレイヤー側に発生する被パリィ判定については、わかりやすさ重視で「パられ判定」と呼称したい。Amir氏によれば、パリィの成功は、このパリィ判定とパられ判定が重なった際に発生する。まず、『DARK SOULS III』におけるパリィ判定は、パリィ者の目の前に円形状に展開する。一方で、パリィを受けるプレイヤー側は、剣を振るなどの攻撃モーションの出始めに一瞬の間、パられ判定が発生する。このパられ判定は、武器の攻撃モーション持続時間のうちごく一部。攻撃開始時のほんの数瞬のパられ判定を、パリィ判定が引っ掛けると、パリィが成功・発生するわけだ。

そして逆に捉えれば、攻撃モーションの大部分は、出始めを除いて「パリィ不可」なわけである。たとえば、リーチの長い大剣をパリィする場合を考えてみてほしい。敵が大剣を振りかぶってから、こちらに剣の切っ先が到達するまでには、それなりに長い時間剣が空を切ることになる。そしてパられ判定の発生は、基本的に攻撃の出始めの一瞬。空を切る剣がプレイヤーにゆっくり到達する間に、パられ判定が消失している可能性があるわけだ。つまり、遠くからパリィしようとしても、そもそも敵の攻撃がパリィ不可に変化している可能性が生まれてしまうのである。

こうした現象を予防するためには、敵に接近して、一瞬のパられ判定を確実にパリィ判定で捉える必要がある。パリィ講座記事前編では「敵に接近して、手を狙うつもりでパリィした方がよい」と伝えた。このアドバイスは、そうした一連のパリィ仕様に基づいて提唱したのである。

また、興味深い点としてAmir氏は「攻撃をおこなう“手”のモデルそのものに、パられ判定が発生する」との報告もしている。これは『DARK SOULS III』の対人戦におけるメカニズムであり、『エルデンリング』の対敵NPC戦にも同様のシステムがあるかは不明だ。しかし、パリィの不発を防ぐために同様のメカニズムがあってもおかしくはない。またいずれにせよ、接近した方がパリィが成功しやすいのは確かなのだ。

バックラーが優秀な理由

筆者は前編では、パリィをする盾として「バックラー」をおすすめした。その理由について説明したい。結論からいえば、バックラーの戦技「バックラーパリィ」が、パリィ判定の発生の速さ・持続時間共にトップクラスに優秀だからである。海外の本作コミュニティでは、ユーザーによるパリィの検証が進んでいる。ユーザーであるSeboy666氏の投稿などを発端に、議論およびデータ分析が加速。本作における盾・武器ごとのパリィ性能がフレーム数レベルで解き明かされている最中なのだ。そうしたデータを筆者が『エルデンリング』ゲーム内にて追試したところ、ほぼ一致するデータが得られた。

筆者の追試検証については、フレームレート60fpsほぼ張り付きの環境にて、60fpsにて画面を録画。その動画を動画編集ツールにて分析する手法でおこなった。入力を受け付けて静止状態からキャラの左手が動き出す瞬間を「1フレーム目」に設定。スタミナが減少したフレームを「パリィ判定発生フレーム」として、敵の攻撃を弾き返したパリィエフェクトが画面上にあらわれたフレームを「パリィ成功フレーム」としてカウントした。なお、筆者環境(PC版)においては、ボタン入力受け付け後、あらゆるアクションのモーション発生までに3フレーム前後のインターバルが見受けられた。実際にプレイする上では、全パリィにおいて、+3フレームほど入力からの判定発生が遅くなるであろう点に留意されたい。


まず、バックラーについては8フレーム目からパリィ判定が発生しているようだ。筆者の検証では、パリィ成功フレームは最速で9フレーム目から確認できた。内部的なインターバルがあるためか、200回ほどの試行のうちで8フレーム目での弾き返しエフェクト発生は確認できなかった。しかしいずれにせよ、表示上のスタミナ減少とパリィ判定発生は同一フレームないしはおおよそ一致していると考えられる。

そして、バックラーによるパリィ成功フレームの最遅は20フレーム目。インターバルを加味しても11フレーム、つまり約0.165秒ほどは確実に持続している計算だ。コミュニティによる検証では12フレームの持続との報告も出ており、近似した数値である。短い時間ではあるものの、本作のパリィのなかでは優秀な数値だ。なお、コミュニティ検証では小盾類は11フレーム持続するパリィ判定をもっているとされ、こちらも優秀である。ただ、小盾のパリィ判定発生については、筆者検証手法では10フレーム目であり、コミュニティ検証では11フレーム目とされる。いずれにせよ、バックラーパリィより若干遅い。僅差ではあるので、自身の感じ方に応じて使い分けるのもよいだろう。

悲しみのセスタス


一方で、発生・持続共によくない性能と見られるのが拳武器「セスタス」である。過去作に慣れ親しんだ方は、意外に思われるかもしれない。というのも、『DARK SOULS III』では、セスタスによるパリィは最速タイの発生速度を誇っていたからだ。しかし残念ながら本作では、判定発生が13フレーム目からと小盾に大きく水を開けられている。さらにパリィ判定持続時間は5フレームほどと見られ、かなり短い。また、全部を厳密に検証したわけではないものの、拳武器はいずれも同様の性能と見られる。

また、筆者検証では「パリィ後の隙」の大きさも感じた。つまり、パリィを失敗した際に、次のアクションを繰り出せるまでがやや長いと見られるのだ。大まかながらフレームでいうと、バックラーよりおおよそ10フレームほど“後隙”が大きいようだ。この点は思いのほか影響が大きく、特にディレイに騙された際など、セスタスでは回避や再パリィが間に合わず食らってしまうケースが目立った。本作では、パリィは小盾に任せた方が良さそうだ。しかし、あえてセスタスパリィを使いこなす楽しみ方もできるだろう。また、中盾もパリィ判定発生・持続共におおよそ拳武器と同じで、かなり厳しい性能となっている。


なお、ダガー類のコミュニティ検証では、パリィ判定の発生は13フレーム目からとされ、パリィ判定は9フレーム持続するとのこと。筆者検証でもこの結果を裏付けるデータが取れた。また、意外なことにパリングダガーとパリィ戦技をつけたほかのダガーでは、有意な変化は見られなかった。筆者が見落としている可能性もあるものの、ダガーパリィがお好みの場合は、お好きな短剣にパリィをセットしてよいようだ。

優秀な性能の特殊パリィ戦技たち

続いて、パリィの特殊な派生戦技についての検証結果をお伝えしたい。まず、一部で人気の戦技である黄金パリィは、極めて優秀なデータを見せてくれた。黄金パリィは判定発生が8フレーム目とトップタイ。さらに、コミュニティ検証では14フレームの持続時間があるとされ、バックラーパリィを凌駕している。これらは筆者検証でも近似するデータが得られた。

また、何よりの強みはその「パリィ判定の広さ」である。通常のパリィは判定が狭い。それゆえに、パられ判定を確実に捉えるため接近する必要があるのはお伝えした通りだ。しかし、黄金パリィはその見た目に劣らぬ広範囲のパリィ判定を発生させる。このため、ある程度距離をとって安全に立ち回りながらのパリィが可能。FP消費はあるものの微量であり、まさに破格の性能だ。入手時期が中盤以降となるのが唯一のネックだろう。黄金パリィは、王都外廊の大階段のスカラベから手に入る。

そして、飛び道具の反射を可能にする「嵐の壁」および、魔術や祈祷に対処できる「カーリアの返報」「トープスの力場」などもパリィとして十分利用できる性能だ。カーリアの返報は特に優秀とされ、黄金パリィに迫る発生速度と持続時間の報告があり、筆者検証でも矛盾しないデータが得られた。しかし、余談ながらカーリアの返報は現在バグが発見されており、別の利用価値を見出すユーザーの方が多いかもしれない。


嵐の壁とトープスの力場については、嵐の壁の方が判定発生・持続共にやや優秀と見られる。トープスの力場についてはパリィ判定発生が12~13フレーム目からと遅めなものの、筆者検証では8フレームはパリィ判定が持続している。中盾などに装着すれば、パリィの上位互換としても利用できるわけだ。

さらに広がるパリィ戦術

特殊パリィ戦技について伝えておきたいのは、それらの戦技は「適用する盾の種類によって性能がほとんど変化しない」という点だ。盾の種別によって、持続フレームが1,2フレーム変わってくるとのコミュニティ報告もあがってはいるが、誤差の範囲ともいえる。つまり、防御性能の優秀な「真鍮の盾」に黄金パリィを与え、防御とパリィ性能を両立することも可能。確実にパリィを狙える攻撃以外は防御し、安全にパリィを取りに行く戦術もアリなわけである。なお、ダガー・拳・大盾には特殊パリィ戦技は付けられないことを、念のためお伝えしておく。

また、防御とパリィを併用する際のちょっとしたテクニックとしては、「ガードしたままパリィ」がある。ガードボタンは離さず押しっぱなしにしたまま、戦技ボタンを押してパリィを発動させるわけだ。ガードを固めた状態からパリィ終了後、すかさずガードに戻ってくれるため、安全性を高められる。過去作経験者などでは、自然に身についてしまった方も多いかもしれない。そして、敵の攻撃のなかには、コンビネーションの初撃は対処しづらく、2撃目はパリィしやすいパターンもある。そうした場合にもガードとパリィのコンビネーションは威力を発揮してくれるだろう。

パリィは楽しい


前後編の2回にわたりお贈りしてきた「パリィ使い方講座」。今回の後編では、技術的な側面からパリィについて紐解いた。実際にパリィを使える相手や練習法などを知りたい方は、前編「パリィ使い方講座~実践・基礎編」を参照されたい。

パリィは、個性豊かで強力な戦技が揃う『エルデンリング』においては、地味な存在かもしれない。ローリングやガードカウンターの方が扱いやすく、活躍できる場所も多いかもしれない。しかし、それ自体で独特のメカニックをもつパリィは、使いこなした際に大きな喜びをプレイヤーに届けてくれる。興味をもたれた方は、是非お好きなパリィを使って、戦いに臨んでみてほしい。本稿によって、あなたの『エルデンリング』体験が、より豊かになれば幸いである。