DMCA虚偽申請によるAUTOMATONツイッターアカウント凍結事件から早1年。同様の被害報告が相次ぐ昨今の動向を受け、当時の状況を振り返る

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弊サイトAUTOMATONのツイッターアカウントが一時凍結されたのは、2019年4月25日のこと。早1年が経とうとしている。虚偽のDMCA(デジタルミレニアム著作権法)侵害申告の被害を受け、2019年4月25日22時ごろから5月8日0時過ぎまでの12日間、弊サイトのツイッターアカウントが使用できなくなっていた。著作権者の名義を無断使用した第三者による、虚偽の著作権侵害申請。いとも容易く実行できる、営業妨害。その被害は2020年になった今でも後を絶たない。ツイッターに限らず、YouTubeやTwitchなどさまざまなプラットフォームで虚偽申請による被害者が生まれている。また被害者による体験談や、加害者によるハウトゥーブログも増えつつある。本稿ではそうした流れを受け、1年前に弊サイトで起きた事件をひとつの事例として振り返るとともに、DMCA申請の仕組み、虚偽申請の問題点、そして異議申し立てのリスクについて触れていく。

  1. DMCA侵害申請とは

DMCAは、米国著作権法の一部を改訂する法律。デジタルコンテンツに関する著作権侵害が確認できた場合、サービス・プロバイダーに対して著作権侵害の申し立てをすることで当該コンテンツを削除できる。

  1. DMCA侵害申請が提出されると、当該コンテンツが即時非公開となる

サービス・プロバイダーには「無過失責任」が適用されるため、著作権侵害の可能性があるコンテンツに対応しなかった場合、責任を問われる可能性がある。ゆえにツイッター社は、DMCA侵害申請が提出された時点で、実際に著作権侵害に該当するか判断する前に、ひとまず当該コンテンツを即時非公開にしている。いわゆるノーティス・アンド・テイクダウンである。

弊サイトの例で言うと、何者かがツイッターに対し、AUTOMATONアカウントのツイートを対象としたDMCA侵害申請を提出。それを受けてツイッターは、一次対応として当該ツイートを即時非公開にした。

  1. DMCA侵害申請が重なると、アカウントが凍結される
*アカウント凍結当時の画像

ツイッターは独自の基準に則り、DMCA侵害申請件数が重なった場合、対象アカウントを凍結している。弊サイトの一件でも、同時に複数のDMCA侵害申請が提出されたため、ツイッターは自身の対応フローにもとづきAUTOMATONのツイッターアカウントを凍結した。

「著作権に関する問題が複数報告された場合、Twitterは、違反を繰り返すアカウントへの警告のためにアカウントをロックするか他の措置を取る場合があります」
「Twitterの著作権侵害を繰り返すユーザーに関するポリシーに基づいてユーザーのアカウントを凍結することがあります」
ツイッター「著作権に関するポリシー」より)

  1. 弊サイト事例におけるDMCA侵害申請内容

今回のDMCA侵害申請は、「任天堂株式会社」「コナミホールディングス株式会社」「カルチャーブレーン株式会社」という3つの名義を使用したものであった。いずれも、AUTOMATONツイッターアカウントの投稿内容について、「弊社の知的財産である◯◯に関する権利物を無許可で使用」しているという同一フォーマットの文面。同じ日に連続して申請されたことから、同一人物による犯行である可能性が考えられる。

  1. 申請内容の正誤確認

任天堂名義の申請に関しては、申請者・著作権者(※)の名前が、同社「社長」という肩書きとともに記載されていたが、実際の同社の役職者情報と一致しておらず、虚偽申請であることがわかった。さらにコナミホールディングス名義の申請者・著作権者も、任天堂名義の申請者・著作権者と同一名称になっていた。

申請者:DMCA侵害申請を行った者。著作権者:申請対象となるコンテンツの著作権者

カルチャーブレーンは、有限会社カルチャーブレーンエクセルの前身であり、現在は存在しない。またカルチャーブレーンは本来前株表記であり、「カルチャーブレーン株式会社」という企業名も誤りである。そのほかの申請情報にも誤りが確認できた。そもそも、申請対象となったツイートおよびツイートに記載していたリンク先ページは、カルチャーブレーンとは無関係のニュース記事ばかりであった。

カルチャーブレーン名義での申請対象となった記事は以下のとおり:

・「任天堂」E3 2015プレスカンファレンスにおける最新情報(記事リンク
・日活がおくるニンテンドー3DS向け横スクロール型ホラーゲーム『CREEPING TERROR』が配信開始(記事リンク
・ネズミが「移動要塞」を駆り、砂漠の先にある黄金郷をめざす『サバクのネズミ団!』3DS向けに配信開始(記事リンク

  1. 各社への事実確認

事件発生当時、AUTOMATON編集部から上記3社にコンタクトを試みたところ、任天堂とKONAMI広報担当より、DMCA侵害申請は行っていないとの回答を得られた。つまり、関係のない第三者が、企業の名義を無断使用してDMCA侵害申請を行ったのだ。2019年4月26日といえば、ゴールデンウィーク前の最後の平日。迅速に対応いただけたおかげで、スムーズに次の対応へと進めることができた。ゴールデンウィークの最中に発生していれば、事実確認にさらなる時間を要していたことだろう。

以下は各社からの返答内容の抜粋である:

任天堂:
「弊社がこのような名義等で申請を行うことはなく、弊社自身が行った申請ではないことは間違いありません」

KONAMI広報担当
「侵害申請につきましては、コナミホールディングスから行ったものではなく、知的財産部門に、該当する氏名の在籍実績はございません」

なおカルチャーブレーンに対しても、DMCA侵害申請に記載されていた連絡先にメールを送信したが、偽アドレスの可能性が高く、返事は得られなかった。

  1. DMCA侵害申請に対する異議申し立て方法

事実確認を経て、虚偽のDMCA侵害申請であることが確定したため、AUTOMATON編集部からツイッターに対し、異議申し立てを行なった。

ツイッターは「米国著作権法第512条 第g項」にもとづき、反対通知/異議申し立てを受け付けている。DMCA侵害ではないと確信している場合は、DMCA通知メールに直接返信、もしくは通知メールに記載されている専用メールアドレスに連絡することで反対通知/異議申し立てを行える。これにより米国連邦裁判所の管轄を承諾した上での法的手続きが開始される。

具体的には、異議申し立てを行うと、ツイッターからDMCA侵害申請者に、異議申し立ての内容が通知される。それから10営業日以内に、著作権権利者から「裁判所命令を請求する」という通知を受け取らなければ、ツイッターは削除したコンテンツを「再掲載したり、表示制限を解除したりする場合がある」。

  1. ツイッター日本支社は不干渉

アカウント凍結後の4月26日、AUTOMATON編集部はTwitter Japan社を訪問した。明らかな虚偽申請であり、早期解決に向けて他にできることがないか確認するためだ。なおTwitter Japanは電話番号を公開していないため、アポなし訪問となった。

担当者にオフィスビル受付の電話越しに確認したところ、Twitter Japanには、ツイッターのプラットフォーム運営・管理に関する権限がないため、対応はできないとの回答が返ってきた。ユーザー対応をサポート窓口に統一するため、Twitter Japanは干渉しないスタンスを取っている。つまり、異議申し立てを行うにあたり、Twitter Japanを訪問することに意味はない。徒労に終わるだけだ。

  1. アカウント解凍まで約12日、ツイート再公開まで約1か月

最終的にアカウント凍結が解除されたのは、2019年5月8日0時過ぎ。解除理由は「無効なDCMA削除請求申請」。凍結から約12日後の出来事であった。ただし、当該ツイートはしばらく非公開のままであり、全ツイートが復活したのは、異議申し立ての送信から約1か月が経過した2019年5月27日である。

  1. アカウント凍結による被害

AUTOMATONは商業メディア。ツイッターからのトラフィックが激減すると、PV減ならびに広告収入減につながる。単純にユーザー露出が減るため、凍結が長引けば長引くほど、メディアとしての競争力が失われていく。また「DMCA侵害者」というレッテルがつくことで、読者および弊社取引先の信頼低下にもつながる。そのほか取引先への事情説明、弁護士相談(およびその費用)などの対応も発生。経済的・信頼的な損失を被った。

弊サイトの事例において特筆すべきは、任天堂やコナミホールディングスという、国内大手企業を勝手に名乗って申請している点だろう。どのような名義で申請されたのかは、データベースで公開されているので、誰でも確認できる。つまり「〇〇社が、悪評を封じるためにDMCA侵害申請を濫用している」といった風評被害につながり得る。被害が弊サイトだけにおさまらないという意味でも、極めて悪質な行為と言える。

  1. 企業・個人のDMCA関連事例

弊サイトの一件に限らず、DMCA侵害申請の悪用事例は増えつつある。企業が運営するアカウントとしては、2018年に起きた『艦隊これくしょん -艦これ-』公式アカウントの凍結騒動が有名だろう。大手企業でも、虚偽申請の被害を受ける可能性があることに変わりはない。ただ『艦これ』の事例では、「悪質な悪戯/業務妨害行為である旨を関係各社と即時共有し、同日復活」とあるように、早期解除を実現していた。

また2020年2月に入ってからは、森哲平氏、山口貴士氏、赤木智弘氏、幾谷正氏、イナモトリュウシ氏、北守氏、Simon_Sin氏、フェミイ氏と、ツイッター上の個人アカウントが、次々とアカウント凍結措置を受けていった(関連ツイート)。

同件については後日、虚偽のDMCA侵害申請者より匿名の謝罪文が掲載された(Simplenote)。「自身に関わりのあったある事柄に対して、ある方の言動が気に入らなかった」ことが、虚偽申請を行った動機として挙げられている。他者のアカウントを封じる容易さを示す事例でもある。犯行者は罪悪感に苛まれ、「罪の意識と、法で裁かれる恐怖についに耐えられなくなり」自らの犯行を認めることになったようだ。

同じゲームメディアで起きた事例で言うと、今年3月海外メディアのNiche Gamerが、虚偽のDMCA侵害申請によりツイッターアカウントが凍結されたと報告していた。こちらのケースでは、アカウント凍結から約4日で復旧を果たしている。

もちろん、虚偽のDMCA侵害申請はツイッター固有の問題ではない。2020年2月には、米国の民主党大統領候補討論会を視聴していたTwitchストリーマー数人が、「Praxis Political Legal」という架空団体のDMCA侵害申請によりアカウントを一時停止された(PCGamesN)。こちらはTwitchによる調査の結果、虚偽の申請であることが特定できたとして、各アカウントは復旧を果たしている。

  1. ツイッターは虚偽申請を止められないのか

ツイッターの通常フローどおりに進めると、アカウント凍結解除まで10営業日以上かかる。本心としては、虚偽申請であると考えられる証拠がつかめた場合には早期解決に向けて柔軟に対応してほしいところ。とはいえ、ツイッター社には毎日世界中のユーザーから大量の問い合わせが寄せられており、それらがツイッターサポートというひとつの窓口に集約されている。カスタマーサポート業務として考えると、個別対応を最小限に抑えないと到底さばききれないことは想像にたやすい。「この申請は100%虚偽である」とうかつに判断して訴訟リスクを負うわけにもいかない。可能な限り通常フローどおり対処するのが無難なのだ。ツイッターは法律上求められているとおりに動いているのであって、個別対応する義務はない。

とはいえ、虚偽申請が簡単に行えてしまうシステムには改善の余地があるだろう。著作権の権利者である証明がいらず、誰でも匿名化した状態で申請できてしまう現状の仕組みを変えない限り、根本解決には至らない。ツイッターに改善する義務がないとはいえ、虚偽申請が横行すればプラットフォーム提供社としてのイメージ低下にもつながりうる。虚偽申請しにくい仕組みをつくることは、是非とも検討してほしいところだ。

被害者としては、虚偽申請であるとわかった際、速やかに異議申し立ての連絡をするしかない(弊社の場合、念には念をということで、日本語と英語の両パターンで申し立てを行った)。なおツイッターサポートは「セキュリティ上の理由から、メールの添付ファイルをすべて削除する措置」を取っているため、必要な情報はすべてメール本文に入れるよう注意が必要だ。

  1. DMCA虚偽申請に適用される罰則

DMCA虚偽申請は、米国著作権法第512条第f項の「不実の表示」に該当する。不実の表示を行なった者は、「ツイッターまたはツイッターサービスのユーザーに生じたあらゆる損害(経費と弁護士費用を含む)を賠償する責任」を負う。また業務妨害を理由に損害賠償を請求したり、偽計業務妨害罪にあたるとして刑事告訴することも可能

  1. DMCA侵害申請者を特定し得るのか

本人の特定に向けて各所への情報開示請求を進めるとなると、弁護士費用が100万円を超える場合もある。ゆえに資金面での余裕がないと、個人で対応するのは難しいだろう。

また匿名通信システムTorや匿名プロキシの利用により本人特定が困難となる場合もある。Torはインターネット上の安全な通信を目的とする一方、犯罪者による違法行為に使われるケースも多い。ただしTorブラウザは脆弱性と無縁ではない。規模の大きい話ではあるが、ユーロポールを含む複数国の機関の協力のもと決行されたOperation Onymous/Operation Hyperionにより、Torを経由した違法サイトの摘発に至ったこともある(VICE)。これはDMCA虚偽申請よりも格段にスケールの大きい話ではあるが、IPアドレス以外の情報をもとに個人特定に至るケースもあり、匿名性を100%守り切れるわけではない。

なお2019年には、YouTubeが、同サイトで虚偽の著作権侵害申請を行ったユーザーを起訴する事例が発生した(The Verge)。こちらは虚偽申請者がコンテンツクリエイターを脅迫し、金銭の支払いを要求していたことから本人の特定に至っている。YouTubeとしては、システムの不正利用を防止するために努めていくとコメントしつつも、今後同類の不正行為を探知・防止できるとは限らないと説明していた。

  1. 異議申し立てを行うリスク

弊社の調査によると、今回の虚偽申請は常習犯による犯行である可能性が高い。また大手企業がDMCA虚偽申請時の名義として使われるケースは初めてではなく、過去にも「オレ的ゲーム速報JIN」「はちま寄稿」「IT速報」といったまとめサイトがアカウント凍結措置を受けてきた。AUTOMATONの場合、アカウント凍結が解除された翌月にも、新たなDMCA虚偽申請による被害を受けている。

こうした虚偽申請に対して、被害者が異議申し立てを行う際には、氏名や住所といった情報を申請者に開示しなくてはならない。上述したまとめサイトでの事例には、運営者の氏名・メールアドレスを取得し、掲示板サイトにさらすことが目的であったと思われるケースも散見される。

AUTOMATONは株式会社アクティブゲーミングメディアが運営しており、法人名義で異議申し立てを行える。よって個人情報がさらされるリスクはない。だが個人で運営しているアカウントの場合、異議申し立てにより、悪意ある第三者に個人情報を開示することになってしまう。異議申し立て自体がリスキーな手続きなのだ。同様の被害を受けた方は、代理人を探すなど、個人情報をさらすリスクを回避するための方法を考えるべきだろう。

  1. 終わりに

虚偽申請であるとの確証を得ていながら、ツイッターに対して催促メールを送るしか為す術がない。そうしたやるせなさが溜まる12日間であった。しかしながら弊誌アカウント凍結後には、読者の皆様からのあたたかい応援メッセージのほか、複数の業界関係者から「他人事ではない」とのコメントをいただけた。それらは当時の編集部にとって貴重な励みとなり、無事に惨事を乗り越えることができた。

虚偽のDMCA侵害申請によるアカウント凍結は、いつでも、誰にでも、何度でも起こり得る問題だ。本稿では事件の振り返りをかねて、DMCAの仕組みおよびそれに付随する情報、虚偽申請の被害を受けたときの対応方法やリスクについて記述してきた。これらが読者の皆様にとって有益な情報に、そして同様の被害にあった方々にとっての参考資料になれば幸いである。

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