『Heavy Bullets』 / 未完成のローグライクFPS

 

巧遅拙速。プレイ開始後4時間段階での感想をお届けするのが[4 Hours Impression]です。第5回はSteamで5月16日にリリースされたアーリーアクセス中の『Heavy Bullets』。最近Steamで10%OFFクーポンがばらまかれていたので名前だけは知っているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。価格は8.49ドル、5月23日まではさらに15%引きキャンペーン中です。

さて、本作にユーザーがつけたタグでおもなものは「インディー」「FPS」そして「ローグライク」です。

 


"ローグライクFPS"

 

『Heavy Bullets』はいくつかの特徴があります。まずはいわゆるローグライクと呼ばれる作品定番の、(一定のパーツを組み合わせる形での)ランダム自動生成 のマップを探索する点。アイテムを回収または購入する点。事実上の"成長"要素もあります。ライフ・通貨・インベントリもあり。これにて「ローグライク」 と称するにはひとまず足りるでしょう。

FPSパートで面白いのは、銃弾1発の価値がきわめて高いところにあります。発砲した弾丸は敵やオブジェクトへのヒットの成否にかかわらず、床に落 ちます。プレイヤーはそれを回収することで残弾を増やせるという仕組み(現実的でない! というツッコミをここで入れるのは定型です)。ですから見境なしに撃ちまくり、しかも弾を拾わなければあっという間に手持ちのリボルバーはカラになりま す。丁寧に撃ち、丁寧に弾拾いをする。そんな立ち回りが基本になります。なお、リロードボタンは御多分にもれずRキーなのですが、「1回の押下で1発のみ 装填」というシステムからは地味ながらも心地よさを感じるところ。

初期装備の爆弾のほか、ダンジョンの各所にランダムで落ちているアイテムを入手したり、"自動販売機"でアイテムを購入したりできます。後者はかな りバランスが厳しく、そこらじゅうに自販機があるわりに購入資金を確保するのはままならないでしょう。カネは基本的に敵を倒すことで手に入ります。

 

自販機。ただし高価。
自販機。ただし高価。

 


アブストラクトアートスタイル

 

「最近この手のものが増えた」と言ってしまうと身も蓋もないのですが、見ての通りのタッチです。こういう無機質で硬質でありながらビビッドな絵を見ると、私はなにかにつけ『killer7』を比較しハードルを手前勝手にハードルを上げてるクセがあります。まあ、さすがにグラスホッパー・マニファクチュア奇跡の一作と比べるというのは不平等にもほどがあるかもしれませんが、『Heavy Bullets』はまあまあいい線を行っている……かもしれません。

サウンドはいかにもアーリーアクセスらしく質素というか、いかにもな未完成感がただよっています。BGMはあってなきがごとし、SEも手で数え られるほどしかありません。ただ、BGMはともかくとしてSEは本作を最低限表現する水準になんとか到達しています。撃って拾って楽しい音、タイトルにあ る「Bullets」を表すにあたりぎりぎり及第点です。

 

手抜きではない。 頑張りを感じる部類。
手抜きではない。

頑張りを感じる部類。

 


アーリーアクセスだからしかたがないとはいえ

 

「アーリーアクセスは功罪どちらも大きすぎる」。弊誌ライターの言です。しかるに、「アーリーアクセスだから」でたいていの"罪"は容認するべきかもしれません。それでも『Heavy Bullets』には若干危険なところがあります。

まず、説明不足がすぎるという点。過剰に入念なチュートリアルを嫌う短気なゲーマーは私を含めて少なくありませんが、いくらなんでも本作は投げやり です。FPS慣れしていてもオプションのキーコンフィグで操作を確認する必要がありますし、そもそもSteamのタグをふくめた説明文をきちんと読み込ん でいなければ本作が「ローグライク」であるということにすら気づけないまま始めることになってしまうでしょう(まあ脊髄反射とクーポンだけでゲームを買っ たりしなければだいじょうぶなはずですが)。

そして、肝心要のゲーム部分のバランスが練りこまれているとはいえない点。こちらのほうがクリティカルで、せっかくのローグライクFPSのフレーム ワークが活かしきられていません。無論、「運を実力で引き寄せる」がローグライクの本質であり、多少ピーキーな味付けは必然なのですが、それでも何事も限 度というものがあります。また、ゲーム自体もそのシビアさと裏腹に若干単調です。

個人的に厳しいのは、マップがないところ。自動生成で構成される蛋白なビジュアルはプレイヤーを高確率で迷走させます。次のフロアへ進むための階段 を探すにしても、ぐるぐると同じところを堂々めぐりになることがままあります。私が気づいていないだけでマップ表示アイテムなんかがあるのかもしれません が、いずれにせよ最初からオートマッピング機能はつけておくのが"ローグライク"のスジというものではないでしょうか。

また、インディーゲームにそこまで求めるのは酷かもしれませんが、酔います。「個人的な意見です」とエクスキューズしたうえで、やはりFOVの設定 や微妙なユレの演出のON/OFFはつけていただきたいものです。この手のリプレイ性が高いゲームであればこそ、そういった細かい気配りがあるかないかで 印象はずいぶん変わります。

 

操作説明はOPTIONから。 男らしいといえば男らしいのだが。
操作説明はOPTIONから。

男らしいといえば男らしいのだが。

 

 


ポテンシャル買いとしては「アリ」

 

けっしてめずらしくなくはない「FPSとローグライク」の組み合わせを試みたという点、そして現時点での完成度をかんがみるに、本作を1000円で 期待買いするのはありえます。どこまで発展するかわからない、開発者が事実上遁走するリスクがある……すなわち、アーリーアクセスの"罪"の部分がどう動 くかは未知数なものの、そういうネガティブな見方をしなければ『Heavy Bullets』から潜在性を感じるのは道理です。

ただし気をつけてください。繰り返しますが本作は未完成です。

 

今一歩。 ハードルが高い? アーリーアクセスとはいえゲームはゲーム、 そして買い物は買い物なのだから。
今一歩。

ハードルが高い?

アーリーアクセスとはいえゲームはゲーム、

そして買い物は買い物なのだから。