元『ウィッチャー』開発者らの新作RPG『The Blood of Dawnwalker』はとにかく自由で、感情を揺さぶる。善悪にも“決められたレール”にも縛られない物語、その設計を訊く

本稿では、Rebel Wolvesが手がける『The Blood of Dawnwalker』のシステム、物語の設計思想などについて、ナラティブディレクターを務めるJakub Szamałek氏にインタビューを実施した。

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バンダイナムコエンターテインメントは9月3日、オープンワールドアクションRPG『The Blood of Dawnwalker』を発売する。元CD PROJEKT REDの開発者が集うRebel Wolvesが手がけることで注目を集めているタイトルだ。本稿では、本作の開発者に向けて実施したインタビューの内容を紹介。“自由すぎる”物語設計などについて訊いた。

『The Blood of Dawnwalker』の舞台となる14世紀のヨーロッパでは、血塗られた紛争が大地を覆い、生き残った者たちを黒死病が蝕んでいる。主人公コーエンの村は、そんな“綻び”を絶好の機会と捉える吸血鬼によって支配されていた。彼らは奪われてきた自由と力を取り戻すため牙を剥く。そんな状況下でコーエンは、昼は人間、夜は吸血鬼として生きるDAWNWALKER(ドーンウォーカー)として、運命に抗うことになる。

広大なオープンワールドのマップには、緑豊かな森林や平原、危険な沼地、険しい山々などの環境があり、中世らしい集落や忘れ去られた遺跡などが点在。プレイヤーはこの世界を探索しながら、自由にクエストをこなしていく。コーエンの家族は30日後に命の危機が迫るといい、特定の行動をおこなうたびに時は進んでいく。自身の力をつけ、行く先々での課題などを解決しつつ、吸血鬼に対峙するわけだ。

本作を手がけるのはRebel Wolves。ポーランドを拠点として2022年に設立されたゲーム開発スタジオだ。同スタジオを率いるのはKonrad Tomaszkiewicz氏。同氏はかつてCD PROJEKT REDに在籍しており、『ウィッチャー3 ワイルドハント』のゲームディレクターや、『サイバーパンク2077』のプロダクション責任者/セカンドディレクターなどの要職を務めた人物だ。

今回、Rebel Wolvesに在籍し、ナラティブディレクターを務めるJakub Szamałek氏にインタビューを実施する機会に恵まれた。本稿では同氏に、開発にあたってのこだわりや、本作の設定を決めた経緯などを伺った。

――Jakub Szamałekさんの簡単な自己紹介をお願いします。

Jakub Szamałek氏(以下、Jakub氏):
Rebel WolvesのJakub Szamałekです。過去には『ウィッチャー3』『サイバーパンク2077』『奪われし玉座:ウィッチャーテイルズ』などでライターを務めました。

――本作はRebel Wolvesのスタジオデビュー作となっています。『ウィッチャー3』『サイバーパンク2077』などに携わった方も多いと思いますが、新作『The Blood of Dawnwalker』で重点的にこだわった部分はありますか?

Jakub氏:
ファンタジー作品といえば、ヒーローがドラゴンと戦うような「ヒーローもの」というシチュエーションが多いと思います。ただ個人的には「感情」が大事だと思っていますので、本作には感情を呼び起こし、共感できるような存在を作りあげるために、家族/家庭といった描写を盛り込んでいます。

主人公コーエンの生まれ育った環境がキャラクターの背景としてしっかりと組みあがるよう、そしてその家族にもちゃんと背景を持たせ、共感できるような存在を作りあげたかったという想いがありました。

もちろんゲーム的に壮大な描写がおこなわれる瞬間もたくさんあります。しかし、時間をかけてゆっくりとゲーム内の世界を紹介してみたかったという想いもあり、日常、つまり家族などの描写は盛り込んでいます。

――「感情」へのこだわりにはどんな狙いがあるのでしょうか?

Jakub氏:
プレイヤーの喜びや悲しみ、怒りといった感情を思い起こさせることができればいいなと考えています。

そして、本作においては、自分の生まれ育ってきたうえでの関係、今まで読んだ本、そうした自分の背景も、ストーリーテリングの一部になっています。私たちは、プレイヤーを「一緒にゲームを作り上げる」体験に招待したい。“積み木のブロック”をプレイヤーに提供し、それを組み立ててもらって、ストーリーが組み上がるというかたちでゲームを作りあげています。

――本作のシステムについては、30日間という“時間制限”を設け、ストーリークエストのように小目標的な必須クエストがないという点が特徴的です。こうしたゲームスタイルは開発のどの段階で導入を決断したのでしょうか?

Jakub氏:
実は結構初期から考えていて、ゲーム開発の前から持ち上がっていた計画ではあります。ストーリークエストがあると、プレイヤーは“制限”をされていると感じるのではと考えていたので、その「見えない壁」から解放したかったのです。また「30日」と「30の夜」というシステムはゲームに緊急性を持たせる意味がありました。

こうしたシステムを導入するのはもちろんリスクもありましたし、すごく難しいことでした。ただジョン・F・ケネディも言った通り、「我々は月に行くことを選択する」、つまり難しいからこそ挑戦してみたのです。リスキーな試みでしたが、挑戦自体に満足していますし、試みがうまくいくと良いなと思っています。

――本作に登場するキャラクターは個性が豊かなように思います。開発チームとして、キャラクターを作るにあたって意識したことや、お気に入りのキャラクターがいれば教えてください。

Jakub氏:
ゲームにおけるストーリーの始まりとしては、「一般的な普通の家庭あるいはひと際幸せな家庭に突如悪いことが起こったので、解決のために旅に出る」というようなものが挙げられるでしょうか。ですがそうしたものは空想的で、あまり現実に即していないような気がしていました。

ですので、キャラクターのそれぞれの背景をきちんと見せることは意識しました。たとえば父親のピーターがなぜ今の状態になっているのか。母親のエスメはどうしてこのようになってしまったのか。それぞれの背景を、ストーリーを通して見せることによってキャラクター性を表現しています。

お気に入りのキャラクターは薬師のアンカですね。あとは神父のフローリンもとてもいいキャラクターだと思っています。フローリンについては、プレイしていただくと、表向きの彼だけでなく、「裏側」もちゃんと見えてきます。

――感情を呼び起こし、共感できるようなキャラクター造形をおこなっているとのことですが、そうした中で、舞台を現代ではなくあえて中世にした理由を教えてください。

Jakub氏:
舞台は14世紀の中世で、実際の歴史をモチーフにしたゲームですが、あくまで「歴史ファンタジー」であり実際のその時代には即しない部分もあります。たとえばキャラクターの話し方自体はより我々の時代に近いものです。

そして、私自身考古学を少々かじっていますが、やはりどんな時代でも何かしらの共通点は存在しています。その(家族や家庭などの)共通点は、現代の我々でも共感しやすい部分になるのかと思います。ただ、文化的背景の違いは加味していく必要はありました。

また、なぜ14世紀を舞台にしたかというと、とても大変な時代だったからです。14世紀のヨーロッパでは黒死病(ペスト)が流行し、長期の戦争もありました。宗教的にも激動の時代です。小氷期もありましたね。そんな大変な時代の中に台頭する吸血鬼を取り扱うというのは、時代背景としてもちょうど良いと思い、この時代に決めました。

――本作について、「Summer Game Fest 2026」で公開されたトレイラー以外にも、現代と思しき時代でのトレイラーも公開されていました。こちらについて、中世が舞台となった本作の作中で、時代を跨ぐことはあるのでしょうか?

Jakub氏:
以前「The Dawnwalker Saga」として紹介した映像のことですが、『The Blood of Dawnwalker』は単体の作品で終わるものではありません。これから先、時を越え時代を跨ぎ、壮大な物語が展開されることをお伝えしたかったわけです。

――本作を制作するにあたって、影響を受けた作品や神話、文化はあるでしょうか。

Jakub氏:
長くなりますが、お時間は大丈夫ですか(笑)

一同:
(笑)

Jakub氏:
冗談です(笑)まず影響を受けたゲームですが、インスピレーション元には、『Fallout』『Fallout 2』など昔のCRPGがあります。これらはプロローグが終わった後にものすごく大きな世界が広がっていて、「自由なんだ」という気持ちにさせてくれました。それに触発されたんだと思います。

また中世の描写については、私たち自身もいろんなリサーチをして、ゲームの中に入れています。たとえば沼地に行くクエストで訪れる遺跡に絵が置かれているのですが、これは実在した絵をモチーフにしています。こうしたものは各所に入れています。

ほかにも、本作のインスピレーション元には、テレビシリーズの「Midnight Mass(邦題:真夜中のミサ)」があります。吸血鬼を取り扱った映画作品などはいろいろありますが、「真夜中のミサ」のような、吸血鬼と信仰、あるいは「血を飲ませる」といったような関係については、強い刺激を受けました。

――吸血鬼は本作の主人公でもありますが、本作ならではの吸血鬼のイメージとして取り入れたものがあれば教えてください。

Jakub氏:
吸血鬼という題材は、多くの人が好きになるだろうし、大衆へのアピールもできると考えました。一方で、「吸血鬼」というテーマを扱った作品はたくさんあります。その中で、私が思う、本作ならではの吸血鬼のアイデンティティは「歯」にあります。

たとえば、カボチャに歯をつければジャック・オー・ランタンになる。ほかにもドラゴンの歯にまつわる王(カドモス)がいたり、トゥースフェアリーの伝承など、吸血鬼に関わらず「歯」に関連する伝承/伝説はさまざまあります。そうしたものからの影響を受けて、歯に関するものを『The Blood of Dawnwalker』には入れています。詳しくは言えませんが、本作で歯は「悪の種」のように作用しています。

――本作では家族愛や尊厳など、普遍的なものを描いていますが、一方でゲーム内では「動物の血を啜る(※)」といった後ろ暗いことまで可能です。どんな意図があるのでしょうか?

※本作では動物や人間の血を吸うと一定量体力が回復する

Jakub氏:
(動物の血を啜ることなどについて)悪の「甘い誘い」を表現したかったというのがあります。他の作品でよく見られるのは、ゲーム内で善悪がはっきりしていて、悪を選ぶに足る理由が用意されている選択肢です。一方私たちが実現したかったのは、片方に天使、片方に悪魔がいる、というような、「甘い囁き」のような誘惑を表現したくて、意図的にゲーム内に入れました。

――NPCとの会話における選択肢でも、突如「飢え」に屈する、吸血衝動に呑まれるものが出現することも印象的でした。こちらの仕様も開発の初期から導入を決めていたのでしょうか?

Jakub氏:
もちろん、吸血という行為自体は、吸血鬼特有のものなので、初めから導入されていました。しかし会話のダイアログに吸血欲が突如として顔を覗かせる仕組みについては、後から追加しました。このシステムを追加することで、夜に会話するNPCは死ぬ可能性が生まれた、というわけです。後で追加したので、いろいろと変更しなければなりませんでしたが。

――オープンワールドアクションRPGというと競合するタイトルも多いかと思います。そうした中で、『The Blood of Dawnwalker』の、「RPG」としての独自の魅力を教えてください。

Jakub氏:
本作は「自由度」を押し出しています。ここまでプレイヤーに自由を与えているゲームはなかなかないと思います。ストーリーに好きなようにインタラクトでき、独自の歩みができる点が、魅力だと考えています。

よくあるたとえ話として、「RPGは列車に乗るようなもの」というのがあるかと思います。行き先を決めて、路線を選び、線を辿っていく、一連の流れですね。一方で私たちのゲームは「車に乗るようなもの」であると考えています。物語、行き先を決めるハンドルを握るのは他ならぬプレイヤーであるということです。

――ゲームのPRでは、インフルエンサーやKOL(Key Opinion Leader)に遊んでもらうというのが1つの大きな手段かと思います。制作にあたって、そうした要素を意識した箇所などはありますか?

Jakub氏:
本作において、選択によって物語は変わっていくので、それぞれのプレイヤーが体験する内容はまったく違うものになると思います。なのでゲームを動画や配信で見ている方も、自分でプレイしたくなるようなゲームになっているはずです。

また、選択においてはジレンマが生じ、決断を求められるシーンもあります。「この人はどんな反応をするんだろう」と気になることもあるかもしれません。さらに配信でその“回答”について、配信者とコメントでコミュニケーションも取れるのではないかと思います。

――Rebel Wolvesは2022年の開設時に約90人規模のスタッフと伝えられていましたが、現在は約160人規模で開発されていると伺いました。これは、ゲーム制作における目的を実現するためにメンバーが増えたのでしょうか。

Jakub氏:
できるだけ小規模でいたかったのは確かです。ただゲームの質を確保するために、160人のスタッフはどうしても必要な人数でした。具体的には140人ほどが開発に直接携わっていて、残り20人がマーケティングに関わっているかたちです。開発を担当しているかどうかに関わらず、全員重要な役割を担っています。

――『The Blood of Dawnwalker』を心待ちにしている日本のユーザーに向けてメッセージをお願いします。

Jakub氏:
過去に日本に来たことがあり、日本のゲームもプレイしたことがあります。日本語がもっと話せれば、と思うこともあるくらいです。今回、そんな日本のプレイヤーにプレイしていただけることは光栄ですし、楽しみにしています。『The Blood of Dawnwalker』はお金を儲けるよりはむしろ私たちの「愛の結晶」とも言うべき作品ですので、ぜひプレイしていただければと思っています。

――ありがとうございました。

『The Blood of Dawnwalker』は、PC(Steam/Microsoft Store)/PS5/Xbox Series X|S向けに9月3日発売予定だ。

©2026 Rebel Wolves Sp. z o.o. All rights reserved. The Blood of Dawnwalker™,Rebel Wolves and their respective logos are trademarks of Rebel Wolves Sp. z o.o.©2026 Bandai Namco Entertainment Europe S.A.S. Bandai Namco logo is a trademark of Bandai Namco Holdings Inc. All rights reserved.

ゲーム内スクリーンショット等は現在開発中のバージョンのものです。
そのため、今後のアップデートにより内容が変更・修正される可能性がございます。
特に日本地域で発売予定のCERO Z版においては、流血表現や四肢欠損などの描写が調整・変更される可能性が高い点、あらかじめご了承ください。

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Kosuke Takenaka
Kosuke Takenaka

ジャンルを問わず遊びますが、ホラーは苦手で、毎度飛び上がっています。プレイだけでなく観戦も大好きで、モニターにかじりつく日々です。

記事本文: 2010