『スターオーシャン セカンドストーリー R』先行プレイ感想。徹底的に現代向けに最適化され再構築された星の海の物語

 

筆者が『スターオーシャン セカンドストーリー』を初めて遊んだのはPSP版。約15年前のことだ。オリジナル版が発売されたのは約25年前となる。そうした長い時を越え、再び壮大な愛と勇気のRPGが蘇る。『STAR OCEAN THE SECOND STORY R』(スターオーシャン セカンドストーリー R)として現代にリメイクされたのだ。このたび作品の一部を先行してプレイする機会に恵まれたため、現時点で判明しているコンテンツの内容を紹介していきたい。

『スターオーシャン セカンドストーリー R』はアクションRPG『スターオーシャン セカンドストーリー』のリメイク作品である。対応プラットフォームはPC(Steam)/PlayStation4/PlayStation5/Nintendo Switchとなっている。価格は6578円(税込)。プレイヤーはクロード、もしくはレナとして、たくさんの仲間とともに星の海を旅していく。本作は通常版のほか、各種特典が封入された特装版の発売が予定されている。詳しくは公式サイトをチェックしてほしい。



徹底された現代向けシステムアレンジ


筆者が最初にプレイすることになったのはラスガス山脈の攻略だ。これはアシュトンというキャラクターに憑依した2匹の龍を祓う、という物語における1幕である。主人公一派は退魔の儀式に必要な魔鳥の涙を求め、山脈にある魔鳥ジーネの巣を目指すことになる。「そういやアシュトンは樽が異様に好きだったな」と当時を思い出しながらゲームを開始してみれば、まず視界に飛び込んできたのは、2Dのドット絵と奥行きある3Dがまるで最初からそうであるように融合した本作のアートワークであった。

中でも驚異的なのはライティングの技術である。ドット絵の影と道端に生える草葉の影が同じように動いている。キャラクターのドット絵に影が頭蓋を意識した立体的な形で覆いかぶさっている。これによって2D と3D が自然な形で接続され、「どこか懐かしくもリッチ」な興味深いビジュアル表現が成立している。スクウェア・エニックスはかねてより「HD-2D」という、ドット絵をベースに、3Dの視覚効果を用いた背景美術を用いる映像表現を開拓し続けているが、本作における映像表現はそれと趣がまったく異なっている。「HD-2D」がよりノスタルジーの喚起に重きをおいている表現だとするなら、本作は古き良き雰囲気と現代的な表現の折衷案と言えるだろう。


美しい風景を眺めながら歩みを進めると、紫色をしたモヤの塊が道をうろついているのが目に入る。本作は「シンボルエンカウント制」を採用しており、言い換えれば、ザコ敵と戦わなくても良くなっている。本作はオリジナル版の時点で、数多くのPA(プライベートアクション)という仲間との個別イベントが存在したり、仲間との親密度を通じた膨大な量のエンディングが用意されているなど、周回プレイを前提としたゲームデザインが組まれていることを特徴としている。

また現代の風潮として、可処分時間の取り合いを避けた「プレイ時間が少なくなる」作りもまた尊ばれる傾向にある。そのため、本作には現代風のリメイクを行うにあたって、ゲームプレイの高速化を狙った施策が数多く盛り込まれている。シンボルエンカウント制の導入もその1つだ。この他にも、イベントシーンを早送り、スキップすることができたり、戦闘中に発動した技の演出をカットすることもできる。そして同時に、これら演出がカットされても映像として違和感が生まれないよう、キャラクターのモーションが調整されているのが素晴らしい。


リメイク版に施された工夫はこれだけではない。本作では新しい戦闘システムとしてブレイクシステムが導入されている。これは敵キャラに設定されたシールド値をすべて削りきることで動きを一定時間止め、被ダメージを増加させるシステムである。対多数戦の場合は、リーダーエネミーに設定された敵をブレイクさせることで、付近の敵をまとめてブレイクすることができる。この「プレイヤーが明確に有利になる状況を生み出す」システムは、「わかりやすく気持ちよさを得る」ことができ、近年においてスクウェア・エニックスが発売してきたRPGタイトルの数多くにさまざまな形で導入されている仕組みでもある。現代的なリメイクを施すにあたり、ふさわしい施策と言えるだろう。


さらにこのシステムは戦略を拡充する上でも役に立っている。キャラクターの必殺技には「HP」特化型、「バランス」型、「ブレイク」特化型の特性が割り振られており、状況によって使い分ける面白さや、パーティの吟味がより楽しくなることだろう。必殺技はワンボタンで簡単に発動できるようになっているほか、同じボタンを連打することで、あらかじめ設定した順番「リンクコンボ」で必殺技を繰り出すことができる。

このほか、戦闘中に溜まる「アサルトゲージ」を消費することで、メインではなく控えに設定したメンバーが必殺技の追撃を行う「アサルトアクション」の導入や、戦闘中に操作キャラを切り替えることなく紋章術を発動できるように仕様が変更されている。先述した演出のスキップも合わせ、戦闘のテンポが大きく改善されており、周回プレイに伴う負担を減らしている。このように分かりやすく、テンポが良くなった戦闘をこなしつつ筆者は無事山頂に到達した。魔鳥ジーネも難なく討伐。この後に発生する劇中の展開に思いを馳せながら試遊体験の第1フェーズは終了した。


第2フェーズはホフマン遺跡の探索だ。本作ではダンジョンの内容が「ダンジョン中にあるスイッチを特定の順番で押すことで壁が爆破される」迷路に変貌している。ちなみに、戦闘中に突っ込んでくるトロッコのギミックが復活している。ホフマン遺跡の探索は攻略の難易度が少し高めに設定されており、敵はリーダーエネミーを中心とした大人数で攻め込んでくることが増えている。そのため、積極的にリーダーエネミーをブレイクすることで「ブレイクのチェイン」を行い集団をまとめて行動不能にしたり、回復アイテムやトロッコのギミックを活用しなければ数の暴力に押し負けるようになっていた。これによってシンボルエンカウント制による「戦わない選択」も有効に機能していた。

本作独自の施策が単にゲームの高速化を目指したものではなく、戦略という観点から面白さを拡充するものであることを改めて認識することになった体験だった。なお、筆者は普通にダンジョンで迷ってしまい、ボスに到達する事なく20分の制限時間を使い果たした。製品版をプレイしたあかつきには、ちゃんと攻略を果たしたいところだ。


今回の試遊体験は主に戦闘システムに関する内容のお披露目という側面が強かったが、本作にはこれ以外にもさまざまな要素が追加されている。それはステータス画面のシリーズごとの立ち絵、キャラクターボイスの変更であったり、新しい収集要素である釣りが追加されたり。素材を使用してアイテムを生成できるアイテムクリエイションではファクターという特殊効果を付与することが可能になり、キャラクタービルドの幅が広がっている。ちょっとした息抜きになるミニゲームも更に充実しているという。

総じて、筆者のインプレッションとしては、ただ「懐かしさ」だけを強調するために作品を復活させたのではなく、若いゲーマーやシリーズを知らないプレイヤーの窓口として機能するよう、現代の世情に合わせ原点を再構築したゲームという印象を受けた。まさにリメイクという言葉が似合う内容になっていた。「このクオリティで1もリメイクしてほしい」と筆者がこぼしたところ、「ユーザーの皆様に望んでいただけるなら挑戦してみたい」とはスクウェア・エニックスの弁である。発売日が待ち遠しい限りだ。

『スターオーシャン セカンドストーリー R』は、PS4/PS5/Nintendo Switch/PC(Steam)向けに11月2日(Steam版のみ11月3日)発売予定だ。

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