TGS2018『キャサリン・フルボディ』体験レポート。悪夢はより見目麗しく、性格は丸くなって帰ってきた


今月9月20日~9月23日にかけて開催されている東京ゲームショウ2018(以下、TGS2018)。その中にあるSEGAブース内アトラスコーナー、そしてソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下SIE)のブースでは、7年前にアトラスより発売された、パズルアクション・アドベンチャー『キャサリン』をパワーアップさせる作品『キャサリン・フルボディ』の国内発プレイアブル展示が行われている。かつて悪夢の虜となった1人間としてこの状況は見逃せない。早速試遊してきたので、そのレポートをお送りしよう。

『キャサリン・フルボディ』は、先述したとおり2011年にアトラスより発売されたパズルアクション・アドベンチャー『キャサリン』をパワーアップさせる作品。発売日は2019年2月14日。対応プラットフォームはPlayStation 4とPlayStation Vitaだ。物語のあらすじはこうだ。“5年来の恋人であるキャサリン”との関係に悩む優柔不断の32歳男性ヴィンセントは、とあるきっかけから”小悪魔めいた理想の女性であるキャサリン”と出会い、誘われるがままに一夜の過ちを犯してしまう。酒に酔った勢いとはいえ浮気を後悔するヴィンセント。それ以来彼は毎晩、最近街で噂になっているという「羊の姿でひたすらに壁を登り続ける悪夢」にうなされることとなる。

本作はリメイク元と比較してグラフィックが美しく一新されたのはもちろん、新たな要素として、“第3のキャサリン”リンが追加。彼女?を交えた新たなる物語が本編を通して展開されていく。また、ディレクターの後藤氏曰く“どんな遊び方も許容する”ためのさまざまなゲームシステムも追加されている。これについては後述する。

今回筆者が試遊したTGS特別試遊バージョンでは、本編で言うちょうど中盤の物語における一幕を体験できる。また、ゲームプレイを通して”どんな遊び方も許容する“さまざまなゲームシステムの一端も確認することができた。ちなみに、筆者はSIEのブースで本試遊版を体験したが、待機列の回転率を上げるためであろう、最初からゲームの難易度は決定されていた(おそらく本作で新規に追加された「Safety」)。もうひとつの試遊会場であるセガブースでは、自身の腕前に合わせて難易度を変更可能なほか、本試遊体験とは別に”2人での対戦モード”の試遊も行われている。腕に自身のある方は、セガブースでの体験をおすすめしたい。

蟻を使ったタイポグラフィの演出など、旧来のものより一層おどろおどろしさを増したOP映像から筆者の試遊体験は始まった。女性ボーカルが追加され大幅なアレンジのかかったテーマ曲は、艶やかなゲームの雰囲気を引き立てる。姿のみえない男女の声の重なりが、どちらのヒロインに傾くともしれないヴィンセントの現状と、正体不明な第3のキャサリンの姿を想起させる。新OP映像が終わると、早速本編には無かったアニメーションの新規カットが画面に顔を見せる。第3のキャサリンであるリンと、ヴィンセントの出会いに関する部分のようだ。本作ではさまざまな部分が旧作からより美しく変化したが、アニメーションもその例外ではない。綺麗になったなぁ。

アニメパートが終わるとすぐにゲームプレイはパズルアクションの段階へと移行する。物語の赴くままに踊り場へ出向いてみると、7年前と変わらぬ顔ぶれに混じって透き通る水色をしたピアノを弾くリンの姿がみえた。思わず近くに寄って声をかけてみるが、特にイベントは発生しなかった。製品版では悪夢の中でのリンとの接触が、物語において何らかの影響を与えることはあるのだろうか。

告解室で7年前とは異なる質問を受けた後、これまた7年前とは異なる内容のパズルが筆者をお出迎え。襲ってくるイメージこそ旧来の内容と共通していたものの、パズルそのものは非常に簡単な内容にデザインされていた。更にあの強烈なビームは一切撃ってこない親切仕様である。ちなみに、操作感に関しては旧作とは殆ど変わってはいなかった。

こんな難易度…旧作の裏ステージをクリアするほどにやりこんだ自分には温すぎる…だが私は1ゲーマーである前にライターなのだ…読者に向けてためになる情報をお届けするのが使命…

しょうもないプライドをへし曲げながら、本作にて追加された新機能を確かめるべく、とりあえず迫りくる敵の魔の手に向けて突っ込んでみた。即座にミンチになるヴィンセント。だがその事実は一瞬のうちになかったこととなり、状況は死の直前まで巻き戻っていた。これが本作において追加された、死ぬと1手巻き戻せる「自動UNDO」機能だ。しかし無限復活できるというわけではなく、その場で1手戻せる“手動”UNDOと合わせて、一度のパズル内で使用できる回数がステージ毎に規定されている。限界を越えて失敗したらもちろんゲームオーバーだ。ちなみにゲームオーバーになると、ステージの最初からではなくゲームオーバーになった地点からプレイを再開できる。この機能も本作に新たに追加されたシステムの一つである。

「前作やりこんだんですよ」なんて待ち時間にスタッフさんと談笑しなければよかった……1人かってに恥辱に塗れていた私はいつの間にかゲームをクリアできるかできないかの窮地に立たされていた。あえて“LOVE IS OVER”へと突き進んでいるのだから当たり前である。こうなりゃヤケだ。もう何も怖くない。覚悟を決めた後、本作に新たに追加された機能「オートプレイ」を試してみた。数秒、ほんの数秒だけ。自動的にヴィンセントをゴールへと運んでくれるオートプレイ機能は、使用した後自分でいつ止めるかを判断できる。ステージの最初から最後まで使うのもよし、途中で詰まった区間のみ使用するのもよしだ。

紆余曲折を経てヴィンセントが無事ゴールへとたどり着くと、旧作には無かった新規アニメーションが流れて筆者の試遊体験は終了。心の内で独り孤独な戦いを終えた身体に、“腐れ縁のキャサリン”の学生時代が描かれた映像はご褒美以外の何物でもなかった。

今回の試遊体験では新しくなった『キャサリン』のより”丸くなった”面を中心に体験することができた。もし”キツイ一面”をご所望ということであれば、先述した通りSIEブースではなく、セガブースでの体験をおすすめする。7年前に世界を虜にした悪夢は、その魅力を一層のものにして、今再び我々の前に現れようとしている。発売日が待ち遠しくて仕方ない。