いちゲームデザイナーから見た「工夫がすごい」と思ったボス戦、どんなの?『ヨッシーアイランド』などから具体的な面白かった例をピックアップ

具体的に筆者から見て優れた設計になっていると考えられるボスを見ていこう。

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こんにちは。ゲームデザイナーのヌヌヌだ。普段はゲーム会社でゲームデザインの仕事をしている。その傍らで寄稿するコラムである。

前回はボスの意義と役割において説明した。端的にいうと、ボスはゲームデザイン上のさまざまな役割を果たすということだ。ここからは、具体的に筆者から見て優れた設計になっていると考えられるボスを見ていこう。

『ヨッシーアイランド』の「ビッグけめくじ」

『ヨッシーアイランド』はマリオではなくヨッシーを主役とした2D横スクロールアクションゲームだ。つい最近も『ヨッシーとフカシギの図鑑』が発売されるなど、姿形を変えつつ続いている長寿シリーズである。

原点ともいえる『ヨッシーアイランド』のワールド5に登場するボスが「ビッグけめくじ」だ。道中に登場する雑魚敵である「けめくじ」が巨大化した姿で、要するに巨大ななめくじ、そして透けた体から見える心臓には毛が生えている。

「ビッグけめくじ」はボス戦の開始直後からゆっくりと画面右から左に向かってずりずりとすり寄ってくる。ヨッシーがその巨体に触れてもダメージを受けないが、画面の左端は奈落になっており、ボスに押し出されたら落下する仕組みになっている。つまり、突き落とされる前に相手を倒さなければいけない「体を使った制限時間」になっている。

その弾力に満ちた巨体をどう倒すのか。これまでのコースで学んできた「タマゴ投げ」、これを心臓付近めがけて繰り返すことで、体をへこませて心臓に直接タマゴを当てればダメージを与えることができる。計4回ダメージを与えると見事ボスを撃破、なかなか緊張感のあるボス戦になっている。

「ビッグけめくじ」が優れているのは、まず「巨大さ」が挙げられる。巨大であれば「強い」「怖い」と感じられ、ボスの威厳が伝わる。次に「次第にすり寄ってくる」ことと「最終的には土俵際に追い詰められ、落とされる」ことだ。じっくりと、しかし着実に迫ってくる死は強い緊張感を生む。制限時間が緊張感を生むのはもはや常識的なゲームデザイン手法ではあるが、それが数字ではなく「なんとなくしか把握できない敵の位置」であることに意味がある。曖昧さはプレイヤーの想像力を刺激し、想像力は焦りと恐怖に繋がる。

そして「タマゴ投げ」の成果を確認する場であることも優れている。ワールド5にきて「学習確認」をやらせるのは若干「いまさら感」がでるところだが、迫りくる巨体と、うまく心臓付近めがけて正確に投げ続ける「焦りと正確さ」の組み合わせが一層緊張感を煽る。サッカーのPK戦のように、「失敗できない」というプレッシャーを演出することで単なる「学習確認」にアレンジを加えている。

また、当時も今も「ボスの体を削って心臓をさらけ出す」ボス戦はななかどうして斬新だ。「今までにない」感覚はゲーム全体でも新鮮さを感じて楽しいし、他のゲームと比べても目新しいので興奮する。こういう時に「買ってよかった」と思えるものだ。

『ホロウナイト:シルクソング』の「第四の合唱者」

『ホロウナイト:シルクソング』序盤のボスである「第四の合唱者」は楽しく戦える傑作のボスだと思う。

「第四の合唱者」は溶岩地帯に出現する巨大な4本の腕を持つ人造(虫造?)兵器だ。「第四の合唱者」は、登場演出からしてうまい。初めて目にしたとき、崩れ落ちた残骸として登場する。とはいえ、明らかに怪しい。いつか戦うことになりそうだと想像するが、その先には貴重なアイテムを手に入れるためのクエストが待っており、そのうちに忘れてしまう。

アイテムを手に入れて残骸のそばを通り過ぎようとしたとき、「第四の合唱者」が登場する。「やっぱり!」と驚くのもつかの間、巨大なボスとの戦闘が始まる。お約束の展開だが、お約束だからこそ目にするとニヤリと嬉しくなる。

「第四の合唱者」が優れている点は複数ある。まずは例によって巨大であること。ボスが巨大であることはそれだけで評価できる。そして4本の腕を持つこと。異形であることも評価ポイントだ。当然見た目ばかりが優れているのではなく、戦い方も評価できる点は多い。

ボスは4本の腕それぞれに役割を持つ。上2本の腕は「たたきつけ攻撃」を、中段の腕は横方向への「なぎ払い攻撃」を繰り出してくる。そして、画面から見て左側の腕なら攻撃は左側に集中し、右側の腕なら右側に集中するというように、腕と位置と攻撃位置・方向が一致している。

さらに、攻撃が発動する瞬間にはその腕がキラリと光る。いわゆる「予兆エフェクト」で、これによってプレイヤーは次の行動を知ることができる。「上の左側の腕が光った、左側へのたたきつけだ」「中段の右側の腕が光った、右から左へのなぎ払いだ」というように、比較的容易にボスの行動が読めるようになっている。

この「はたあげゲーム」のような攻撃と回避の連続がリズミカルで心地よい。死の緊張感がありつつも難易度が高くないため、絶妙の「俺うまい感」を生み出すことに成功している。もちろんボスである以上簡単すぎるのは面白くないため、地面が崩れて溶岩が露出したり、ボスが天井を叩いて落石を発生させたり、後半になると攻撃速度が上がるなど緊張感を盛り上げる変化も用意されている。

しかし、基本の難易度が低い設計になっているので、ボス行動が変化・増加していっても「目まぐるしい忙しさ」を感じるだけで「難しい!」という辛い気持ちにならないようになっている。「第四の合唱者」は「技量確認」型のボスだが、その場での学習難易度を下げることで「新鮮な驚きとともに楽しく戦える」優れたボスになっている。

『ワンダと巨象』の13番目の巨像

『ワンダと巨像』は主人公の青年が、目覚めぬ少女のために未知の世界を旅し、各地に眠る巨象を倒していくアクションゲームだ。巨象には「弱点部位」が存在するが、圧倒的に巨大なため攻撃が届かない。ダメージを与えるためには巨象の体毛に掴まり、弱点までよじ登り、しがみつきながら剣で突き刺す必要がある。

『ワンダと巨像』のボスは基本的には「技量確認」型に分類される。基礎的なルールは先に述べた通りだが、ボスの姿や弱点まで到達するルートは「行ってみてやってみて学ぶ」スタイルになっている。

多数の優れたボスが登場する今作において、筆者がとくに好んでいるのは第13番目の巨像「空を漂う巨大な軌跡」、通称「ヘビ」である。

ヘビといっても空を飛ぶヘビであり、どちらかというと竜に近い。このボスが優れている点はプレイヤーがボスに望むもの、とくに『ワンダと巨像』というゲームに望む(であろう)すべてを兼ね備えている点だ。

ボスは当然巨大だ。それも今までで一番巨大かもしれない。ボスは地上にいないため、飛び乗るためには「腹部の浮袋」を破壊する必要がある。そのためには愛馬「アグロ」で砂漠を駆け、さらに弓を構えて正確に射貫く。浮袋を破壊し、ボスが低空へと降り立ったらアグロから飛び移る。ボスの巨大な体に飛び移ったらようやく弱点部位を探し、剣で突く。弱点部位はダメージとともに場所が移動するので、落下しないように巨体の上を駆けながら探し、発見し、そして再び剣で突く。

このように、第13の巨像「ヘビ」はこれまで培ったプレイテクニックを総動員しなければ倒せない。他のボスが「技量確認」型なのに対し、13番目の巨像は「学習確認」型の要素も併せ持っている。プレイヤーの理解と技量の両方を問う戦いは、手に汗握る心地よい緊張感を生む。

さらに優れているのは、出会いから撃破までの流れが物語の起承転結のように自然かつダイナミックで「このゲームならではの唯一無二の体験」を提供してくれている点だ。

ボスとの戦いは「物語性」を感じられると一層感情を刺激する。ゲームというメディアは「プレイヤーが介入することで変化・進行する」構造になっている。ゲームを車とするならば、運転手であるプレイヤーが操作しなければ始まらない。

そして、プレイヤーはただ変化を楽しむだけでなく「自分の力で世界を変えていく」ことを楽しんでいる。「変わること」だけでなく「変えること」を楽しんでいるわけだ。優れたボス戦は「この難局を自分の力で制している、変えている」という感覚を与えてくれる。劇的な状況に立ち向かうとき、プレイヤーはゲームの中の住人となり、戦いの中に「物語性」を見出す。

なお、「物語性」を存分に味わわせてくれるボスとしては『エースコンバット5』や『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』のラスボスが当てはまるだろう(『エースコンバット5』はラスボスというよりはラストミッションというほうが適切だが)。


『ドンキーコングバナンザ』のヴォイドコング

『ドンキーコングバナンザ』はドンキーコングシリーズの最新作だ。どんな地形も破壊できる圧倒的パワーを持つドンキーコングと、アドバイザーとして優秀な少女ポリーンのバディが、自らの野望のために地下世界をめちゃくちゃにするヴォイドコングとその一味に立ち向かうストーリーになっている。

『バナンザ』のゲームデザインはCEDEC2026の講演でも紹介されたように「破壊」を軸にしている。進行不能を防ぐための一部の地形を除いて、目の前の地形はすべて破壊することができる。イメージとしては『マインクラフト』や『テラリア』を思い浮かべてほしい。とにかく破壊、いつでもどこでも破壊できる。

ストーリー上の宿敵であるヴォイドコングと戦うまでに幾多のボスが登場するが、当然ボスも「破壊」を中心として構成されている。ボスのコアを守る「装甲」があり、それを直接殴るか、岩などを投擲することで「破壊」して、露出したコアや本体をタコ殴りにして撃破する流れが多い。もちろんすべてのボスが同様の構成ではないが、とりわけヴォイドコングはストーリー上の重要キャラだけあって力の入ったボスバトルになっている。

ドンキーコングの能力が「破壊」だとすれば、ヴォイドコングの力は「創造」になる。単に遠距離攻撃をしかけてくるのではなく「地形を創造して」攻撃をしかけてくる。これまでドンキーコングが自由に破壊してきた地形がめきめきと生まれてくる様子は、まるでプレイヤーのゲームプレイが逆再生されたかのような、圧倒的な力を感じることができる。ヒーローと悪役の能力が対比された構成になっているのも憎い演出だ。

そもそも『ドンキーコング バナンザ』はボクセル技術(ピクセルの立体版)のテックデモ的な側面を持つ。クオリティの高いゲーム構成だけでなく、ボクセル技術の凄さを体感できることがウリの1つになっている。ドンキーコングはそのうち「破壊」の技術を、ヴォイドコングは「創造」の技術を見せてくれる。本作が持つ独自性と魅力を別の観点から描いているわけだ。

このように、ヴォイドコングは「技術的な凄さ」「通常のゲームプレイを逆手に取ったアイデア」など、プレイヤーの常識をことごとく覆して今作ならではの体験を随所に盛り込んだ優れたボスになっている。また、ヴォイドコングの「創造」に対抗する手段は「破壊」であり、これは普段のゲームプレイの延長にある。「学習確認」型のボスとして、「創造」という目新しい要素に対して慣れ親しんだ操作で対応できるように配慮されている。


おわりに

今回の記事ではボスの役割と魅力について分析してみた。冒頭に述べたように多くのゲームにはそれぞれ個性的なボスが用意されている。今回は取り上げなかったがRPGやシューティングゲームといったジャンルにも魅力的で思い出深いボスがいるだろう。

本記事を通してボスの面白さの理由や秘密について議論が盛り上がれば筆者としても嬉しい。

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ゲームデザイン星人ヌヌヌ
ゲームデザイン星人ヌヌヌ

ゲームという惑星に降り立ってからというもの四六時中ゲームデザインについて考えているナゾの宇宙人。今日も「ヌヌヌ」と何か考えているらしい。

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