『League of Legends』世界大会、グループステージ折り返しとなる第一週の流れを振り返る

 

白熱した戦いが繰り広げられている『League of Legends』の世界大会「World Championship 2015」も一週目が終了。現時点で各チームともに3試合を終え、グループステージの試合数の半分まで進んだということになる。

期待されたとおりの素晴らしい試合もあれば、予想を覆す驚くべき結果を出し続けるチームもあった。本稿ではまずPatch 5.18のメタゲームを概観し、ぜひとも見るべき試合をピックアップ。Week 1の結果を振り返る。

 

Patch 5.18のメタゲーム

Juggernaut の猛進

今大会は、「Juggernaut」と呼ばれるチャンピオン群の強力なバージョンが使用される。特に焦点となったのはDariusとMordekaiserだ。

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DariusはTopレーンで用いられるタフな戦士であり、攻撃力にも優れている。このバージョンでのTopレーンは「キャリータンクメタ」という言葉が象徴するように、ゲームを牽引しつつ、集団戦で前線を支えるタンクとしての役割も果たすことが求められる。サモナースペル「Teleport」を持つことが必須となっているTopレーナーは、チームメイトが視界を取っている場所であればどこにでも行くことができるため、ゲーム全体に与える影響が大きい。このため、試合序盤から集中してTopを狙うという戦略もあり、これまで華々しい活躍を繰り広げてきた有名プロ選手たちもしばしば苦戦を強いられている。

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一方MordekaiserはPatch 5.16でのリメイク以来、2体のチャンピオンを配置するBotレーンで猛威を振るっており、以来デュオレーンではなくソロレーンで活躍できるような調整が加えられてきた。しかし相変わらず強力なプッシュ能力とサステインがあるため、デュオレーンでは脅威になり続けており、特に赤チームにとってはBanがほぼ必須のチャンピオンとなっている。マップの配置上、ドラゴンを確保しやすい青チームがMordekaiserをPickすると、もともとDragonのコントロールがつらい赤チームにとっては、非常に不利な試合展開を強いられるためだ。

Midレーンの多様性

Patch 5.18で最もチャンピオンの多様性に富んでいるのが、Midレーンだ。大きな弱体化を施されたにもかかわらず、Azirは未だに強力なMidチャンピオンとして認識されている。Botレーンに試合終盤で大きなダメージを叩き出すが機動力等に欠けるADCチャンピオンを置く構成で、ADCを守るためによく使われるLuluもPickされる。Orianna、Victor、Ekkoといった面々も、ダメージ出力とゾーニングに長けるチャンピオンたちだ。Patch 5.18はこれまで競技シーンで使われたことのない環境だという点も相まって、Midレーンには見たことのないようなチャンピオンが顔を出す可能性も高い。

筆者おすすめの試合

以上のメタを踏まえて、Worlds第一週で見るべき試合を以下に挙げておく(時系列順)。リンク先は全てYouTube。

1日目
Fnatic vs Invictus Gaming(グループB)
Cloud9 vs AHQ e-Sports Club(グループB)

2日目
LGD gaming vs Origen(グループD)
Flash Wolves vs KOO Tigers(グループA)

3日目
Edward Gaming vs SK Telecom T1(グループC)
Invictus Gaming vs Cloud9(グループB)

4日目
KT Rolster vs Origen(グループD)
Cloud9 vs Fnatic(グループB)

 

各グループの状況

※以下の内容には試合結果を含んでいるため、結果を見たくない向きはご注意を。

Week 1終了時の各チームの勝敗数とグループ内順位。画像参照:
Week 1終了時の各チームの勝敗数とグループ内順位。画像参照: @lolesports

グループA

参加チーム:Counter Logic Gaming(CLG)、Flash Wolves(FW)、KOO Tigers(KOO)、paiN Gaming(PNG)

KOOとCLGが2勝1敗。またPNGもFWに対して逆転劇を見せており、それぞれ1勝2敗となっている。このグループについては事前の評判から大きく外れたところは無いように思われる。長い雌伏の末にWorldsへとたどり着いたCLGも、その実力が本物であること証明している。

グループB

参加チーム:Fnatic(FNC)、invictus Gaming(IG)、ahq e-Sports Club(AHQ)、Cloud9(C9)

果たしてだれがこの結果を予想できただろうか。北米のSummer Splitにおいて不振にあえいでいたC9が無敗のままトップを走り、残りの3チームが1勝2敗で固まるという状況になっているのがこのグループBだ。いずれのチームも相手の弱点を突き、己の問題を克服し、現バージョンの性質を正しく読み切って戦わなければグループ突破が危うい状態である。後半戦は予想だにしなかった厳しい展開となりそうだ。

グループC

参加チーム:SK Telecom T1(SKT)、H2k、Edward Gaming(EDG)、Bangkok Titans(BKT)

今年5月のMid-Season Invitational決勝戦の再現となるSKT対EDGというカードがグループステージ段階で実現したことから、話題になったこのグループ。こちらもおおよそ事前予想どおりの結果になっていると言えるだろう。SKTがトップを走り、EDGがそれを追う展開となっている。EDGは今大会において予想外の失速を見せている中国勢の中で、唯一安定したパフォーマンスを見せているチームだ。このグループについては大きな波乱はなさそうだ。

グループD

参加チーム:LGD Gaming(LGD)、KT Rolster(KT)、Team SoloMid(TSM)、Origen(OG)

中国勢の失速とヨーロッパの隆盛という意味で、このグループは華々しい展開を見せていると言えるだろう。OGはベテランのxPeke選手(Mid)を中心に新しい戦略や予想外のPickを持ち込み、3戦全勝という結果をもって首位を走っている。韓国のKTもOGにこそ土を付けられたが、韓国勢の一角としての実力を遺憾なく発揮できていると言えるだろう。一方で全く想定されなかった事態に見舞われているのがLGDである。Worlds開始前に挙げられた世界のトッププレイヤー20人に、メンバーが3人もノミネートされていたこのチームは、1勝もできないままにグループステージ前半を終えることになってしまった。

Origen vs LGDで、試合を決めた華々しい集団戦の分析動画。

 

注目ポイント

画像参照: Riot esports Flickr
画像参照: Riot esports Flickr

Cloud9──魔法の解けないシンデレラ

かつての栄光は見る影もなく、不動のMidだったHai選手の引退以来長い低迷にあったC9。しかし、彼らはSummer Split終盤におけるHai選手の復帰(ポジションをJungleへと変更)以降、奇跡のような快進撃で北米での3チーム目の出場枠を獲得してWorld Championshipへと乗り込んできた。

まさか彼らの魔法がここまで続くと予想していた人々(もちろん、根っからのC9ファンは別だ)がいただろうか?

Origen──帰ってきた英雄

Origenは今年初頭に元FnaticのxPeke選手が中心となって立ち上げたチーム。全く新しいチームにもかかわらず、春のChallengerシーンをトップで駆け抜け、EU LCSにはSummer Splitから参加、Playoffで古巣のFnaticとWorlds出場権を賭けた戦いを繰り広げた。

新興のチームながらもxPeke選手(Mid)、SoaZ選手(Top)はFnatic所属時代にWorlds参戦経験のあるベテランであり、Amazing選手(Jungle)、Mithy選手(Support)もLCSを戦い抜いた経験のあるプレイヤー。Niels選手(ADC)はルーキーではあるものの「新人の皮をかぶったベテラン」とチームメイトに評されている。

そんなOrigenが今回のWorldsでどこまでやれるのかという点は、欧米のLCSファンにとって注目のポイントだった。Worlds開始前にヘッドコーチが入れ替わったりといった波乱もあったものの、結果はご覧のとおりである。Patch 5.18のメタをよく理解しているOrigenの戦いには、今後も期待せざるをえない。

中国チームの失速

今大会、中国からはEdward Gaming、Invictus Gaming、LGD Gamingという3つのチームが出場している。昨年のWorldsは決勝戦が中韓対決になってしまったことをはじめとして、「アジアに歯が立たない欧米」という図が成り立っていた。だがWeek 1が終了した現在、EDG以外の中国チームの戦績は精彩に欠ける結果となってしまっている。これには様々な分析があるが、IGやLGDの試合を見ていると、Pick & Banの内容や、試合中の「大きな視点の意志決定」で劣っているように見える。これはもちろん、欧米のチームが出身地域にかかわらず腕の良い選手をスカウトし、運営組織やコーチングの改善に1年間尽力した結果とも言えるだろう。だが、練習試合を軽視する姿勢や、コンディション管理の不徹底など、中国チームの組織運営面の弱さが聞こえてきているのも事実だ。とはいえ中国チームも現状をそのまま見過ごしはしないだろう。Week 2での巻き返しが期待される。

Worlds第一週ハイライトシーン集

新しい戦略

現バージョンは、これまで競技シーンで使われたことのない環境だという点が、現状に対して非常に大きな影響を与えている。各チームごとに現バージョンに対する視点が違うため、様々なチャンピオンがPickされ、あるいは以前から見られる選択であってもアレンジが加えられているケースが散見されている。特にOrigenのPickはSummer Splitの頃には見られなかった戦略を採用しており、各チームに予想外の一撃を与えることに成功しているようだ。

Worldsでのメタが結果に与える影響について、OrigenのJungleを担うAmazing選手は、「多様性のある(現バージョンの)メタにより、多くのチームはゲームが難しくなったと感じるはずだ。この点については(リスクを排し強いチャンピオンや動きでゲームを進める)韓国のチームの考え方や理解も正しくはないということでもある。だから、過去2年間のように韓国が圧勝する形で優勝することはないだろう」と語っている。

現時点でも、TopとMidの両方がサモナースペルにTeleportを持つ「ダブルテレポート」構成が見いだされており、ゲームへの影響力が大きいTopへの対処と絡めて試合をどのように進めていくのか、フィールド全体を見据えた組み立てにおいて優れた側が勝利するというのが今大会の潮流に見える。

まだグループステージも半分の過程。ここで全ての手札を切っていては、ノックアウトステージ進出後の勝敗すら怪しいと考えるチームは多いだろう。むろん、それにはまずグループステージを勝ち抜かなくてはならないのだが。例年もっとも番狂わせの多いグループステージ、後半戦は日本時間で10月8日21時から配信開始。

RiotTwillig氏の投稿によると、公式結果予想大会「Pick’em」には世界中から約225万人が参加中。しかしこれまでの順位予想を当てているのはその中でもたった137人とのこと。韓国リーグの実況解説者MonteCristo氏のPick’emも大爆発。なお筆者のPick’emも大絶賛爆発中なのは言うまでもない。

[執筆協力: ユラガワ@Wired-Lynx]