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クラファンで1億円集めるも“自然消滅”したと思われた『Project Phoenix』、突如「7年ぶり近況報告」で沈黙破る。充実開発体制で、2031年完成に向けて再始動
『Project Phoenix』を手がけるCreative Intelligence Artsは7月7日、同作のKickstarterキャンペーンページにて最新の活動報告をおこなった。

『Project Phoenix』を手がけるCreative Intelligence Arts(以下、CIA)は7月7日、同作のKickstarterキャンペーンページにて最新の活動報告をおこなった。『Project Phoenix』に関する情報が公式から発表されるのは実に7年ぶりのことであり、現在の進捗状況やこれまで沈黙を続けた理由が説明されるとともに、今後の方針についても綴られている。この突然の報告に、完成を諦めていた支援者たちからは驚きの声が上がっている。海外メディアVGCなどが伝えている。
クラウドファンディングの成功と漂う暗雲
『Project Phoenix』はファンタジー世界を舞台にしたストラテジー要素を備えるJRPGだ。2013年にKickstarterでクラウドファンディングキャンペーンを実施し、最低目標額の10万ドルを達成後、最終的に約102万ドル(当時のレートで約1億1000万円)を集めた。支援者の数は1万5800人にも及ぶ。当初はPC/PlayStation VITA/PlayStation 4/モバイル向けに、2015年中期の発売を予定していた。なお、日本発のビデオゲームとしてはKickstarter初のキャンペーンだったという。

本作のクリエイターとしてはさまざまな著名なスタッフが携わっている。プロデューサーおよびディレクターはプロのヴァイオリニストである由良浩明氏が務める。同氏は『Diablo3』『戦場のヴァルキュリア』などさまざまな作品で録音・音響監督を担当した人物であり、本プロジェクトの責任者となっている。またシナリオには小説家の榎木洋子氏、そして作曲には『ファイナルファンタジーシリーズ』で知られる植松伸夫氏を迎えている。
こうした実績豊かなスタッフに反して10万ドルという低い予算設定については、スタッフは無給で働いており、報酬は売上に対する一定割合のロイヤリティで賄われるためとCIAは説明していた。キャンペーンはあくまで外注が必要な3Dモデルの制作費用だとし、そのため資金不足でプロジェクトが失敗することはないと伝えていた。
ところが本作の開発は2014年頃から難航し始める。延期が繰り返され、当初の発売予定だった2015年には、最低でもあと2年半もの開発期間が必要だと伝えられた。発売は少なくとも2018年以降にずれ込むことが明らかになり、くわえて返金は受け付けないという対応も発表され、支援者からは非難の声が相次いだ(関連記事)。

なお開発が延期している理由として、メインプログラマーのDavid Clark氏が、当時並行して参加していた『オリとくらやみの森』の開発が長引いたことで、本作の開発にあまり参加できなくなってしまったことが理由として挙げられていた。またプロジェクトから複数の離脱者がおり、その赤字を由良浩明氏が補填していることも語られていた。ところが2018年になってもゲームは完成せず、2019年のキャンペーン報告を最後にCIAは一切の活動報告を絶ってしまう。
沈黙やぶる7年ぶりの報告
そして最後の報告から7年が過ぎた2026年7月7日、「Breaking the silence(沈黙を破る)」とするアップデート報告が、突如Kickstarterキャンペーンページで公開された。この投稿では、まず由良氏はこれまでの沈黙の責任は自身にあるとしたうえで、現在の『Project Phoenix』が置かれている状況を詳らかに説明している。また、あわせて米メディアVGCでは由良氏へのインタビューがおこなわれており、本作の開発が停滞した理由についても語られている。
まず由良氏は長らく沈黙を続けていた理由として、新たに紹介する価値のあるものができあがるまでは活動報告はしないと決めていたと説明しつつ、それは誤った判断であり、少しずつでもプロジェクトが進んでいることを支援者に報告すべきだったと謝罪した。そして、開発が滞ってしまった最大の理由として、スタッフの予定外の離脱を挙げている。
由良氏が「天才」と評するプログラマーのDavid Clark氏を当初メインプログラマーとして据えることを予定していたが、同氏は最終的に『オリとくらやみの森』の続編『Ori and the Will of the Wisps』を制作するためにMoon Studiosへと移籍してしまったという。レベニューシェアとして破格の条件で同氏を雇うことを想定していたため、この離脱は『Project Phoenix』にとって致命傷となったそうだ。Clark氏と同等レベルのスタッフを雇うのにはキャンペーンの支援金では到底足りなくなってしまったのだという。そして2015年には事実上資金が底をついてしまったそうだ。

そして資金難に直面した由良氏は新たな資金源の確保に乗り出す。2014年にアニメーション企画「Under The Dog」を、2016年にはウォーシミュレーションゲーム『タイニーメタル』のクラウドファンディングキャンペーンをKickstarterで実施した(関連記事)。『Project Phoenix』の開発が滞っているにもかかわらず、それとは関係のないプロジェクトを次々と発表する由良氏には、本作の支援者から批判の声があがったという。ただし由良氏によれば、本作の開発を続行するためには、他の作品の収益から資金を得るしか選択肢はなかったのだという。
さらに由良氏が『タイニーメタル』の制作の際に立ち上げたスタジオ、AREA 35の元スタッフから、『Project Phoenix』の支援金が『タイニーメタル』の開発に用いられていたとする資金流用疑惑が告発される騒動も発生。しかし由良氏は、こうした主張は事実無根だとして法的措置に踏み切り、最終的に双方は和解。告発は2018年に謝罪文とともに撤回されている。由良氏は、 資金は常に『Project Phoenix』へと流れておりその逆はないと説明している。
それでも『タイニーメタル』の発表などを巡る支援者からの不信は根深く、由良氏への批判は収まらなかったそうだ。こうした反応を受けて、CIAは2019年を最後に一切の活動報告を停止したとのこと。その目的は自身や関係者への個人攻撃を沈静化させるためだったと説明しながらも、由良氏は今回支援者にはプロジェクトの進捗を報告する義務があったと反省を述べている。
これからの『Project Phoenix』
そして最新のアップデートでは、現在の開発体制についても説明している。植松伸夫氏といったコアメンバーは今も引き続き『Project Phoenix』に参画しており、くわえて優秀なクリエイターが多数加わったと報告している。あわせて海外メディアVGCを通して、植松伸夫氏による新たなメインテーマや最新のプロトタイプ映像も公開された。
現在、由良氏が代表を務めるAREA 35には30名を超えるフルチームが所属しており、『Project Phoenix』の開発に向けてかつてないほどよい環境が整っているという。また、開発資金はKickstarterの残金ではなく、すべて由良氏のスタジオの資金から賄われているそうだ。一部のコアメンバーに依存しプロジェクトが瓦解してしまった過去を反省し、“フルチーム”での堅実な開発を進める方針だという。『タイニーメタル』で築いた知見や人材を活かし、当初の計画時よりも良い環境で制作を進められているとアピールしている。
ただし、守れない発売日を約束することはもうしたくないとして、発売日を明言することは避けた。ゲームの完成予定としては、2031年末となる見込みを伝えている。したがって発売日は少なくともそれ以降になるのだろう。『Project Phoenix』が日の目を見るのはまだ当分先のこととなりそうだ。
クラウドファンディングは、ゲーム開発の資金調達手段として広く活用されているものの、開発が長期化し、発売までたどり着けないケースも少なくない。今年1月には、YouTuberのなるにぃ氏がクラウドファンディングキャンペーンを実施した『誓いノ淵』にて、ディレクターが突如離脱し、開発状況さえ確認できないという危機的な状況が報告されていた(関連記事)。『Project Phoenix』については、長期にわたる沈黙から“自然消滅”したのではないかとの不安も付きまとっていたなか、突然の最新報告が寄せられたことで支援者からは驚きの反応が広がっている。

由良氏は最新の報告で、『Project Phoenix』を立ち上げた当初は、これほどの規模のゲーム制作に何が必要なのか完全には理解していなかったと振り返りつつ、その後スタジオを運営しゲームを世に送り出す経験を通じて、開発に必要なものが理解できるようになったと説明している。幾度となく開発延期を繰り返し、ついには20年に近い異例の長期プロジェクトとなった『Project Phoenix』。はたして不死鳥のごとく灰の中から復活を遂げるのか、その完成を見守りたいところだ。
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