人気脱出シューター『ARC Raiders』には「犯罪学者や心理学者」も興味津々らしい。リスクもあるのに平和プレイに行きつくゲーマー心理
開発チームも想定しなかったほど協力的なプレイスタイルを好むユーザーが多いという。

Embark Studiosが手がける『ARC Raiders』では、開発チームも想定しなかったほど協力的なプレイスタイルを好むユーザーが多いという。こうした状況には、科学者たちも関心を寄せているようだ。
『ARC Raiders』はPvPvE形式の脱出シューターだ。対応プラットフォームはPC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5/Xbox Series X|Sで、ソロプレイまたは最大3人でのチームプレイに対応する。本作の舞台は「アーク」と呼ばれる謎の機械によって荒廃した未来の地球。プレイヤーは「レイダー」と呼ばれるならず者のガンマンとなり、アークや敵対するほかのレイダーなどと地表で戦う。戦闘や探索を通じて手にした貴重な物資を、地下居住区スペランザへと持ち帰ることを目指す。

2025年10月に発売された本作は、同年のヒットタイトルとして君臨。販売元であるネクソンが2026年2月に発表した業績報告によれば、全プラットフォームを含めた同時接続プレイヤー数はピーク時に96万人に到達し、販売本数では累計1400万本を達成。人気の息の長さも特徴であり、発売から2か月経った1月時点でもプレイヤー数の90%を維持していることも話題となった(関連記事)。
そんな本作について、Embark StudiosのエグゼクティブプロデューサーであるAleksander Grøndal氏に向けて英国the Guardian紙がインタビューを実施。ユーザーのプレイスタイルに関する意外な発見について語っている。Grøndal氏によれば、およそ5人に1人のプレイヤーが一度も他プレイヤーをノックアウトしたことがなく、また半数のプレイヤーはノックアウトした人数が10人未満であるという。ちなみに協力的なプレイを主軸にするプレイヤーと対人戦に専念するプレイヤーはそれぞれ約30%、両方を楽しむプレイヤーが約40%の比率になっているとのこと。

『ARC Raiders』を含む多くの脱出シューター作品では、レイド内で他プレイヤーと限られた物資を奪い合い、敵に倒されるなどして脱出に失敗すれば持ち込んだ装備や手に入れたアイテムをすべて失うことになるというリスクやプレッシャーがゲームプレイの核をなしているといえる。自然と敵対関係が生じうるコンセプトながら、本作では意外にも平和的なプレイが選ばれがちというわけだ。また、一方が和平を持ちかけても相手が応じるとは限らず、手を組んだと思ったのちに裏切られるといった展開も考えうる。いわゆる野良マッチで他プレイヤーを信用するリスクもある中で、多くのプレイヤーが平和的なプレイを選択しているというのは興味深い。
Grøndal氏は、プレイヤーに協力の余地があることも開発チームは認識しており、またそうした状態を望んでいたとしつつ、これほどまでに多くのプレイヤーが協力の側面に惹かれるとは思っていなかったそうだ。
なお本作ではプレイヤーがPvPとPvEのどちらを好むかというプレイスタイルも考慮してマッチングがおこなわれていることも明かされていた(関連記事)。プレイヤーのスキルや環境が深まったとしても、平和的なプレイヤーはとことん平和的なプレイができる仕組みとも言える。そうしたシステムの存在も、前述したようなこれまでレイダーをノックアウトしたことのないプレイヤーが一定数存在する一因となっていそうだ。

ただし、単にプレイヤーが人間としての繋がりを求めているのか、そのほうが皆にとって有益であると計算ずくで判断しているのかは判然としていない様子。Grøndal氏はこのことはゲーム開発者ではなく、科学者にとっての疑問になっていると語っている。同氏は最近ある犯罪学者から連絡を受けたそうで、その学者はプレイヤーたちが互いにどのように交流しあっているかに興味をそそられていると話していたという。
なお過去にはEmbark StudiosのCEOであるPatrick Söderlund氏が、神経学の教授から医療分野における共同研究などを通して、本作のプレイヤーの行動心理を研究すべきだと提言されたことを語っていた(IGN)。開発者も想定外であったプレイヤー同士の活発な交流は、一種の社会心理学実験として捉えられ、社会科学者や心理学者、そして犯罪学者なども注目を寄せているようだ。

とはいえ、プレイヤーの平和的なプレイ傾向は、ゲームデザインの面で問題を生じさせる可能性もある模様。というのも、本作では敵対や裏切りといったプレイスタイルも考慮して敵の難易度を調整しているため、マップのプレイヤー全員が手を組めば、巨大なアークもわずか数分で倒せてしまうという。もしこうした協力関係が容易に形成され続けるなら、難易度を上げる必要があるとも示唆している。想定よりも平和的な遊ばれ方をしていることは、開発陣にとって嬉しい誤算だったのだろう。本作では一部ユーザー間でPvP要素のないPvEモードが熱望されている状況もあり、どのように調整されていくかは引き続き注目される。
ところで、『ARC Raiders』のように、ゲームにおける人々の行動心理を研究に活かそうとする例だけでなく、逆に心理学を用いてゲームデザインをおこなう試みも存在。Steamを運営し、『Counter-Strike』シリーズなどを手がけるValveでは、実験心理学を専門とするMike Ambinder氏がゲームシステムの設計に携わっていたことも知られている(関連記事)。特に、多くのユーザーが集まり互いに行動するオンラインゲームでは、心理学との切り離せない繋がりもあるようだ。
『ARC Raiders』はPC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5/Xbox Series X|S向けに販売中だ。
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