プーチン大統領、“ロシア独自ゲーム機”の製造検討などを州政府に命じる。自国産ゲーム機の創出に乗り出す

 

ロシア連邦のウラジーミル・プーチン大統領は現地時間3月25日、カリーニングラード州政府に対する経済・社会の発展を促進するための指示リストを承認。このなかで「据え置き型ゲーム機および携帯型ゲーム機の製造の検討」などが命じられていることが明らかになった。


今回プーチン大統領が承認したのは、1月の会議にて決定されたカリーニングラード州政府への指示リストだ。カリーニングラード州はリトアニアおよびポーランドに挟まれたロシアの飛び地。今回の指示リストは同州の経済・社会の発展を促すことが目的とされている。

そしてこのなかでは、据え置き型ゲーム機および携帯型ゲーム機の製造の組織的な実施を検討することが同州政府に命じられている。またゲームなどのソフトウェアをユーザーに届けるためのOSやクラウドベースのシステム構築についても、検討が要請されている。つまりロシア独自のゲーム機の大量生産体制や、ゲーム機において用いられるオンラインサービスなどを構築するプロジェクトの検討が求められているかたちだろう。指示の期限は6月15日までとのこと。

こうした指示がおこなわれた背景には、ロシア国外のゲーム企業がロシア国内へのゲーム機やサービスの供給を停止している状況がありそうだ。2022年2月のロシアのウクライナ侵攻開始後、ロシア国外の多数のゲーム会社が自社製品・ゲームソフトなどの輸出停止・販売停止を表明。ソニー・インタラクティブエンタテインメント、マイクロソフト、任天堂からのハードウェアの輸出やオンラインサービスなども停止されている状況にある。今回示された据え置き型ゲーム機および携帯型ゲーム機の製造に注力する方針を見るに、ロシア連邦政府にはゲーム機やオンラインサービスを自国内で賄う計画があるのかもしれない。


なおロシアのメディアKommersantの報道によると、ロシアでは携帯電話機を手がけるFplusやハイテク機器を手がけるGS Groupといった企業がゲーム機の生産能力を有しているという。また現地の人気SNSを運営するVK(フコンタクテ)のような大手企業がプロジェクト全体を委託され、主導する可能性があるとのこと。

ただし同誌によれば現時点でロシアには、PlayStationやXboxといった現行機種基準の据え置き型ゲーム機を大量生産できる技術はないという。いちからそうしたシステムを構築するためには約10年間かけて50億~100億ルーブル(約80億~160億円)は必要になる見通しだそうだ。

一方でKommersantがFplusの販売プロジェクト責任者Антон Фомин氏のコメントとして伝えるところによると、SteamDeckのような携帯型ゲーム機の開発は迅速に可能だという。また同氏によると携帯型ゲーム機では、他社に製造を委託するOEM(Original Equipment Manufacturer)も活用できるそうだ。少なくとも同氏の見立てでは、携帯型ゲーム機であれば大量生産の実現も比較的容易なのだろう。

なおロシア政府では2022年12月に、ロシア国内のゲーム産業の強化がプロジェクトとして掲げられたことが報じられていた(関連記事)。またプーチン大統領の指示により、2023年5月には全国規模のeスポーツ大会も開催。ロシア政府が自国内のゲーム産業の成長促進に注力してきた様子がうかがえる。そうした中で今回は、ゲーム機の製造にも本格的に目を向ける方針が示されたかたちだ。ロシア政府が思い描いていると見られるゲームの“自給自足”は今後実現されるのだろうか。続報も注視される。


なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。