『スカイリム』元開発者「ブッ壊れた『スカイリム』開発版を950時間くらい遊んだ」と振り返る。でもBethesdaは“休ませ”も上手


Bethesda Game Studios(以下、Bethesda)に所属していたベテラン元開発者が、自身が携わった『The Elder Scrolls V: Skyrim』(以下、スカイリム)や『Starfield』などについての逸話を明かしている。海外メディアMinnMaxのインタビューにて語った。

『スカイリム』


今回Bethesdaでの経験を語ったのは、Bruce Nesmith氏だ。同氏は1996年リリースの『The Elder Scrolls II: Daggerfall』といった作品から、Bethesdaにて開発に携わっていたベテランだ。『Fallout 3』『Elder Scrolls IV: Oblivion』などの開発にも参加し、『スカイリム』ではリードデザイナーを、『Starfield』ではシステムデザイナーを務めていた。2021年にはBethesdaを離れ、現在は小説家として活動している。

同氏は10月24日、海外メディアMinnMaxのインタビュー動画に出演。Bethesdaでのさまざまな経験について語った。その中で「おそらく1000時間は『スカイリム』をプレイしたが、そのうち950時間は“ブッ壊れた(broken)”状態でのプレイだった」と明かしている。

『スカイリム』


続いてBruce氏は、「ブッ壊れた」状態の定義について説明。「ゲームは開発中ずっと壊れた状態である」との見解を示した。また、それはBethesdaが悪いわけではなく、どのような開発環境であっても、開発中のゲームは完成間際まで壊れた状態にあるのが自然と伝えている。またBruce氏は、開発中にはゲームの中で同じことを「何度も何度も何度も何度も」繰り返す必要があるとその辛さも吐露している。デバッグなど含むQAがしっかり完了するまで、開発者自身も繰り返しプレイをおこなう必要があるわけだ。

また『スカイリム』といえば、リリース後の段階でも物理エンジンの荒ぶりを始めとして、自由度の高さと引き換えに日常茶飯事的にバグに遭遇するタイトルでもあった。その点も踏まえるとBruce氏の950時間の苦労は察するに余りある。一方でBruce氏は、Bethesdaはプロジェクトが終了した際には休息をしっかりと設けて、開発者たちの回復をうながすのが上手かったとして称賛もしている。プロジェクト終了後はしっかりと完成を祝い、バケーションを与え、回復した上で次のプロジェクトに取り書かれるような進行がなされていたようだ。

『The Elder Scrolls II: Daggerfall』


Bruce氏はさまざまな裏話を、MinnMaxに向けて語っている。たとえば同氏は、『The Elder Scrolls II: Daggerfall』のリリース当時、Bethesdaはとても小規模なスタジオだったと振り返る。そのため、同作リリースの成否がスタジオの存亡にも影響しえたそうだ。そうした中、当時のBethesdaではクランチ(長期にわたり長時間労働が続く状態)が発生しており、管理者たちが開発者を怒鳴りつけるような状況もあったと振り返っている。なお、Bethesda/ZeniMax Mediaを傘下におさめるマイクロソフト側のコメントとして、現在はBethesdaの“クランチ文化”はなくなったとされている(VGC)。

ほかの話題としては、Bruce氏は「Howard氏は、そうは思っていないので嫌がるだろう」としつつ、Bethesda製RPGの開発上のあらゆる決定は、最終的にTodd Howard氏が判断していたとの認識を語っている。また、『The Elder Scrolls VI』の早期発表はファンを鎮めるためだったとの見解など多岐にわたる内容を語っている(関連記事)。